製造業の現場で働いていると、「ロット」や「ロットサイズ」という言葉をよく耳にしませんか。
「次のロット準備して」「その製品、ロット番号いくつ?」
こんな風に言われても、正直、意味があいまいで自信がない…という方もいるかもしれません。この記事では、工場で働くなら知っておきたい「ロット」の基本を分かりやすく解説します!
まずは基本から!「ロット」って何?
「ロット(Lot)」という言葉は、難しく聞こえるかもしれませんが、意味はとてもシンプルです。
ロットとは「同じ条件で作られた製品のまとまり」
ロットとは、簡単に言うと「同じ条件で作られた製品のグループ(ひとまとまり)」のことです。例えば「同じ材料を使って」「同じ機械で」「同じ日に続けて作られた製品群」が、一つの「ロット」として扱われます。
製品を一つひとつバラバラに管理するのではなく、この「まとまり」単位で管理するのが工場の基本です。
ロットサイズとは「そのまとまりの個数」
「ロットサイズ」は、「ロット数量」とも呼ばれます。これは、その「ひとまとまり(1ロット)」に、製品が具体的にいくつあるかを示す「数量(個数)」のことです。
例えば、「この製品のロットサイズは1,000個」と決められていたら、工場は基本的に1,000個単位で製品を作っていく、という意味になります。
なぜ「ロット」で管理するの?仕事に関わる3つの理由
では、なぜわざわざ「ロット」という単位で管理するのでしょうか。それには、工場が安全で効率的に動くための大切な理由があります。
1. 品質の管理がしやすくなる
これが一番大切な理由です。もし、お客様から「買った製品に不具合があった」と連絡があったとします。
この時、すべての製品に「ロット番号」という、どのまとまり(ロット)に属しているかを示す番号がついていれば、すぐに追跡できます。
「この不具合は、〇月〇日にあの機械で作ったロット番号A-100の製品だ」と特定できれば、同じロットの製品だけを調べたり、回収したりできます。
もしロット管理をしていないと、いつ作ったどの製品に問題があるか分からず、最悪の場合、すべての製品を止めなくてはならなくなります。ロット管理は、品質を守るために絶対に欠かせない仕組みなのです。
2. 生産効率やコストに関わる
工場では、一つの機械で色々な製品を作ることがよくあります。
製品Aから製品Bに切り替える時、「段取り替え」という作業が発生します。これは、機械の設定を変えたり、材料を入れ替えたりする準備作業のことです。
この段取り作業中は、機械が止まってしまうため、製品を生み出せません。そのため、なるべく段取りの回数を減らす方が効率的です。
「ロット」を決めて、ある程度の数をまとめて作ることで、この段取りの回数を減らし、効率よく生産しているのです。
3. 在庫の管理がしやすくなる
製品や材料を「1個ずつ」数えて管理するのは大変です。
「ロット」というまとまりで、「A製品が5ロット分ある」と管理する方が、倉庫にどれだけ在庫があるか把握しやすくなります。
また、「古いロットから先に出荷する」というルール(先入れ先出し)を守ることで、製品が古くなってしまうのを防ぐことにも役立ちます。
「ロットサイズ」が工場の効率を決める仕組み
この「ロットサイズ(1回で作る個数)」をいくつにするかは、工場の効率にとって非常に重要です。
大きすぎても、小さすぎても問題が起こります。
ロットサイズが「大きい」場合のメリット・デメリット
メリット
1回にたくさん作るので、機械の「段取り替え」の回数が減ります。その結果、機械が動いている時間が長くなり、生産効率は上がります。
デメリット
一度に作りすぎるため、売れるまでの間、たくさんの在庫を倉庫に置く必要があります。
倉庫代がかかりますし、もし製品が古くなったり、売れ残ったりしたら大きな損になります。
ロットサイズが「小さい」場合のメリット・デメリット
メリット
必要な分だけを少しずつ作るので、在庫が少なくて済みます。倉庫代もかからず、売れ残るリスクも減らせます。
デメリット
すぐに作り終わってしまうため、次の製品を作るための「段取り替え」の回数が頻繁に発生します。
機械が止まっている時間が長くなり、生産効率は下がってしまいます。
このように、ロットサイズは生産効率と在庫コストのバランスを見て決める、とても重要な数字なのです。
ロットの使い方
ロットは製品の製造や販売、管理の各工程において使われ、その各々で異なった使われ方をされています。つづいては、ロットの使い方を細分化し、それぞれについてご紹介していきます。
製造ロット
製品の製造においては、ただやみくもに製造作業を続けるのではなく、需要や受注量などから製造する製品の量を調整しなければなりません。この際に指定する製品の製造量を「製造ロット」と呼びます。この基準は在庫過多などによる損失を防ぐだけでなく、無駄な原材料費や人件費の削減においても重要となります。
また、工場によっては製造ロットの数量に基づいて生産工程を変更するなど、詳細な生産指示がされるため、工場全体の稼働においても製造ロット数を調整することには大きな意義があります。
購入ロット
製造した製品は取引先へ販売することとなりますが、この際に指定する販売数のことを「購入ロットと呼びます。製造ロットが製造者によって自由に決められるのに対し、この購入ロットは取引先との交渉によって決められることも。
この購入ロットもまた、製造者側が効率的に利益を上げる上で重要な決めごととなっています。たとえば在庫を余らせないために販売価格を安くする分、購入ロットを多く設定するといった方法でその数量が調整されることもあります。
また、この購入ロットに関しては、製造者側だけでなく取引先となる購入者側も気にかけなければならない要素の一つ。購入ロットと販売価格を調整しながら、製造者側と詳細な取引価格などに関して交渉することもあります。
最小ロット
「最小ロット」とは、ロットの考え方の中でも特に基本的なものの一つ。こちらもその考え方を製造者側だけでなく、購入者側も心得ておく必要があるでしょう
基本的に、最小ロットの数値もまた、製造者側によって自由に決めることができるようになっています。もし一つの取引先に対して30個以上販売しなければ利益が得られない製品であれば、その製品の最小ロットは30と設定することができます。
一方で、この最小ロットに関しては、購入者側に交渉の余地がある場合も。製造者側が最小ロットを30に設定した製品に関して、30個以下の数量で購入したいという場合、販売価格を上げることなどによって最小ロットを引き下げてもらえるかもしれません。
このように最小ロットは、製造者側と購入者側の双方に決定権がある場合もあり、具体的な数値に関しては交渉する価値があるといえるでしょう。
ロット管理
ロットは製品の製造や販売だけでなく、管理においても重要な存在となります。特に流通量が多かったり、製造から販売までのサイクルが短かったりする場合、ロット番号を製品ごとに割り当てることで行うロット管理は必要不可欠な作業となります。
工場ワークスでもロットに関連する「生産管理」の求人を取り扱っているので、チェックしてみてください。
参考URL:関東、生産管理・生産事務・工程管理の工場・製造業の求人仕事情報 | 工場ワークス
効率アップ!現場で役立つ5つのコツ
ロットの知識が身につくと、日々の仕事の見え方が変わってきます。明日から現場で意識できる5つのコツを紹介します。
1. 「段取り時間」を意識する
自分の作業の前後に、「段取り」があるか意識してみましょう。
もし段取り作業があるなら、「もっと速く準備できないか?」「工具を置く場所を変えたらどうか?」と考えることが、工場全体の効率アップにつながります。
2. 「ロット番号」を正確に扱う
検品や梱包の仕事で「ロット番号」を記録したり、ラベルを貼ったりする作業は、品質管理の要です。もし番号を間違えたら、不良品が出た時に追跡できなくなり、大変なことになります。自分の仕事が「品質を守る」という重要な役割を担っていると意識し、正確に扱うことが大切です。
3. 無駄な在庫がないか考える
自分の周りを見て、「この部品、ずっとここに置いてあるな」と思うことはありませんか?それは、もしかしたら購入ロットが大きすぎて、無駄な在庫になっているのかもしれません。
こうした「気づき」が、コスト削減のヒントになります。
4. 市場の売れ行きを意識する
「最近、この製品の生産が多いな。売れてるんだな」「逆に、あの製品は全然作らないな」といった感覚は、需要(どれだけ売れているか)を肌で感じている証拠です。
この感覚は、将来、生産計画などを考える上でとても役立ちます。
5. 常に「もっと良くならないか?」と考える
ロットの知識は、こうした「なぜ?」や「もっと良くできるかも?」という改善意識を持つための土台になります。
日々の作業をただこなすだけでなく、その意味を理解して改善提案ができるようになれば、あなたの市場価値は大きく上がります。
ロット管理で業務効率化を
今回は、今や製造業においては欠かすことができない「ロット」の詳細とその使い方、メリットに関してご紹介しました。
ロットは製品の製造や販売、管理を効率的に行える仕組みです。とりわけ高性能化が進むPOSシステムなどを導入すれば、より多くの利益を上げられるだけでなく、不良品の特定もスムーズに行えるようになるでしょう。そのため、リコールが発生した場合の会社イメージの失墜を防ぐ危機管理対策としても、ロット管理は大きな効力を発揮するといえます。
記事に関するQ&A
Q1. 「ロット」と「ロッド」って違うものですか?
A1. はい、まったく違うものです。
「ロット(Lot)」は、今回説明した「製品のまとまり」を意味します。
「ロッド(Rod)」は、「竿」や「棒」を意味する英語です。
製造業ではほぼ「ロット(Lot)」が使われると覚えておけば大丈夫です。
Q2. 「ロット割れ」とは何ですか?
A2. 例えば「購入ロットが100個入り」の部品を、80個だけ使った場合、残りの20個は「ロット割れ」した在庫(端数)となります。
こうした端数の在庫は、管理がしにくく、倉庫に残りやすいため、なるべく出さないように生産計画を立てることが理想とされています。
Q3. 面接で「ロットについて説明して」と聞かれたら、どう答えるのがベストですか?
A3. 「はい。ロットとは、同じ材料や機械など、同じ条件で製造された製品のひとまとまりのことです。ロット単位で管理することで、不良品が出た時の追跡がしやすくなり、品質管理に役立ちます。」
このように、「まとまり」であることと、「品質管理」に役立つという2点を答えられると、しっかり理解していると伝わります。
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