クレーンを使って重い荷物を吊り上げている様子を見たことがあるでしょうか?この作業において、荷物をクレーンのフックにかけたり外したりする一連の作業を「玉掛け(たまかけ)」といいます。

玉掛けは、少しでもミスがあると重大な事故につながる可能性があるため、適切な知識と技術が不可欠です。この記事では、玉掛けの仕事内容から、必須となる資格、講習の詳細までを分かりやすく解説します。

玉掛けの仕事内容

玉掛け作業は、クレーン作業の中でも特に重要な役割を担います。

  • フックへの掛け方: 荷物の種類や重さに応じて、クレーンのフックにワイヤーロープをかける方法(目掛け、あだ巻き掛けなど)を使い分けます。
  • 荷物への掛け方: 吊り上げる荷物の形状や材質に合わせて、ワイヤーロープをかける方法(目通し、あや掛けなど)を選びます。
  • 用具の選定: 荷物の重さ、大きさ、形に応じて、クランプやハッカー、吊りビームなどの専用の用具を適切に選択します。

これらの作業は、単に荷物を持ち上げるだけでなく、荷物を安全に、そして安定して運ぶために欠かせません。

玉掛けに必要な資格

玉掛け作業は、法律で定められた資格がないと行うことができません。

  • つり上げ荷重1トン以上: 玉掛け技能講習の修了が必要です。この講習を修了すると、つり上げ荷重が1トン以上のクレーン、デリック、移動式クレーンなどの玉掛け作業に従事できます。
  • つり上げ荷重1トン未満: 玉掛け業務に係る特別教育の修了が必要です。ただし、実際の現場では、安全意識の向上から1トン未満でも技能講習の修了を推奨されるケースが多くあります。

クレーンの運転資格と玉掛けの資格は別物です。安全な作業のためには、両方の資格を取得することが強く推奨されます。

玉掛け技能講習の詳細

玉掛け技能講習は、学科と実技で構成されています。

受講資格と費用

  • 受講資格: 18歳以上であれば、誰でも受講できます。
  • 費用: 講習を行う団体や地域によって異なりますが、およそ15,000円〜25,000円程度が目安です。これにはテキスト代や保険料が含まれています。
  • 免除制度: クレーン・デリック運転士免許など、関連する資格を持っている場合は、一部の講習が免除され、費用や時間が短縮されることがあります。

講習時間と合格率

講習の総時間は、経験や保有資格によって変わります。

コース受講資格講習時間
19時間コース資格なし(未経験者)学科12時間、実技7時間
15時間コースクレーン運転士免許など学科9時間、実技6時間
16時間コース玉掛け補助作業経験者など学科11時間、実技5時間

玉掛け技能講習の合格条件は、学科試験で各科目の配点40%以上、かつ全科目の合計点が60%以上であることと、実技試験で70%以上であることです。

合格率は非常に高く、95%以上とされています。講習を真面目に受けていれば、合格は難しくありません。

まとめ

玉掛けは、クレーン作業の安全性に直結する重要な業務です。資格を取得することで、建設現場や工場など、様々な場所で活躍の場が広がります。

未経験者でも取得しやすいため、これから製造業や建設業で働きたいと考えている方には、最初のステップとしておすすめの資格です。玉掛け技能講習を修了し、クレーン運転の資格も併せて取得すれば、さらに仕事の幅が広がり、キャリアアップにもつながるでしょう。

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記事に関するQ&A

Q1. 玉掛け作業に必要な資格は?

A1. 吊り上げる荷物の重さ(つり上げ荷重)によって必要な資格が異なります。

  • 1トン以上の場合: 「玉掛け技能講習」の修了が必要です。
  • 1トン未満の場合: 「玉掛け業務に係る特別教育」の修了が必要です。

どちらも国の定めた資格で、就業制限業務に該当します。

Q2. 「玉掛け」という言葉の由来は?

A2.  はっきりとした由来は定まっていませんが、いくつかの説があります。 荷物を吊るす際に使うワイヤーロープの先端にある輪(目)の部分を「玉」と呼んでいたことから、その「玉」をフックに「掛ける」作業、という説や、宝石などの「玉」を扱うように、荷物を慎重に扱うことから来ている、という説などが有名です。

Q3. 玉掛けの資格は本当に必要ですか? いらないのでは?

A3. いいえ、玉掛け作業を行うためには「玉掛け特別教育(一トン未満)」または「玉掛け技能講習(一トン以上)」の受講が必要です。 クレーンなどで荷物を吊る作業は、一歩間違えると大きな事故につながる危険な作業です。そのため、労働安全衛生法という法律で「資格を持った人でないと作業してはいけない」と厳しく決められています。資格なしで作業を行うことはできません。

Q4. 玉掛けは英語で何と言いますか?

A4. 英語では一般的に「Slinging(スリンギング)」と呼ばれます。 ワイヤーロープなどの吊り具自体を「Sling(スリング)」と呼ぶため、それを使った作業という意味で使われます。

Q5. 玉掛け作業で使われる「合図」とは何ですか?

A5. クレーンの運転士と玉掛け作業者が、安全に作業を進めるために行うコミュニケーション手段です。 クレーンは運転席から荷物や周囲の状況が見えにくいことが多いため、玉掛け作業者が「上げて」「下げて」「ゆっくり」「止まれ」といった指示を手や笛、無線などを使って運転士に伝えます。この合図は、作業の安全を守る上で非常に重要です。

Q6. フォークリフト作業でも玉掛けは必要ですか?

A6. 通常、フォークリフトのツメ(フォーク)に荷物を載せて運ぶだけなら、玉掛け資格は必要ありません(フォークリフト運転の資格は必要です)。

Q7. 玉掛け作業の基本的なルール(安全ルール)は何ですか?

A7. 最も重要なルールは「安全の確保」です。具体的には以下のようなルールがあります。

  • 吊り上げる荷物の重さを正確に確認する。
  • 荷物の重さや形に合った、適切な吊り具(ワイヤーロープなど)を選ぶ。
  • 荷物が安定するように、重心を考えて吊り具をかける。
  • 吊り上げる前に、ワイヤーロープがねじれたり、引っかかったりしていないか確認する。
  • 吊り荷の下には絶対に入らない、入らせない。
  • クレーンの運転士とは、決められた合図で正確にやり取りする。

Q8. 玉掛けの「特別教育」と「技能講習」の違いは何ですか?

Q8. 扱える荷物の「重さ」が違います。

  • 特別教育: 吊り上げる荷物の重さが「1トン未満」の作業ができます。
  • 技能講習: 吊り上げる荷物の重さが「1トン以上」の作業ができます。

技能講習の資格を持っていれば、1トン未満の作業も行うことができるため、仕事の幅を広げる意味では「技能講習」を受けておくことがおすすめです。