建設現場や工場、倉庫などで、クレーンを使って重い荷物を安全に、そして正確に運ぶために欠かせないのが「玉掛け(たまかけ)」作業です。この作業は、ただ荷物を吊るすだけでなく、専門的な知識と技術、そして何よりも高い安全意識が求められる重要な仕事です。

この記事では、玉掛け作業の具体的な手順から、作業に必要な資格や道具、安全確保のポイントまでを分かりやすく解説します。

玉掛けとは?クレーン作業に不可欠な専門作業

「玉掛け」とは、クレーンを用いて荷物を安全に吊り上げるために、ボタン操作だけでなくワイヤーロープなどの専用の用具を使って荷物を適切に準備し、吊り上げ、誘導し、最終的に取り外すまでの一連の作業のことを指します。

荷物を安全に吊り上げるための重要な役割

玉掛け作業には大きく分けて3つの安全確保の役割があります。

一つ目は「吊り荷の落下防止」です。荷物の重量、形状、重心を見極め、適切な玉掛け用具と掛け方を選ぶことで、万が一の落下事故を防ぎます。

二つ目は「吊り荷の損傷防止」です。高価な機械やデリケートな建築資材を扱う際、荷物に傷がつかないよう、当てものを使用したり、適切な掛け方を選んだりする技術が求められます。

そして三つ目は「作業員や周辺設備への危害防止」です。
吊り荷がバランスを崩して傾いたり、移動中に振れたり、あるいは他の構造物に接触したりすることは、作業員にとって非常に危険です。玉掛け作業者は、荷物の安定性を確保し、安全な移動経路を確立することで、このような予期せぬ事故を未然に防ぎ、現場全体の安全を守るという極めて重要な任務を遂行しています。

クレーン運転手との違いと連携プレーの重要性

玉掛け作業者とクレーン運転手は、どちらもクレーン作業に携わる専門職ですが、その役割は明確に分かれています。

クレーン運転手は「クレーンを操作する専門家」であり、レバーやボタンを駆使してクレーン本体を動かし、荷物を巻き上げたり、旋回させたり、移動させたりする技術に長けています。

一方、玉掛け作業者は「荷物を安全に吊り上げる専門家」として、吊り荷の状態を判断し、適切な用具で固定し、安全な移動を誘導する役割を担います。

この二つの職種が連携せずに、それぞれが勝手な判断で作業を進めてしまえば、事故が発生するリスクは著しく高まります。だからこそ、クレーン作業においては玉掛け作業者とクレーン運転手の「息の合ったチームプレー」が何よりも不可欠です。

玉掛け作業が必要とされる主な現場(建設・工場・倉庫など)

玉掛け作業は、私たちの身の回りの様々な場所で活躍しています。主な現場としては、まず「建設現場」が挙げられます。ここでは、鉄骨やコンクリートパネルといった建築資材を、高層階へと安全に楊重(ようじゅう)したり、大型の重機やクレーンの部材を組み立て・解体したりする際に、玉掛け作業者の手腕が発揮されます。

次に「製造工場」です。自動車のエンジンや大型機械の部品、あるいは製品そのものなど、重くて大きな物をライン間で移動させたり、設置したりする際に玉掛け作業が必須となります。特に精密機械の搬送では、荷物を傷つけずに丁寧に取り扱う技術が求められます。また「倉庫・物流センター」でも、玉掛け作業は日常的に行われています。海上コンテナからの荷物の積み下ろし、パレットに積まれた大量の製品の移動など、効率的かつ安全な物流を支える上で重要な役割を担っています。

さらに「港湾」では、巨大なクレーンを用いて船舶へ貨物を積み込んだり、逆に陸揚げしたりする際に、熟練した玉掛け作業者が活躍しています。このように、建設資材、機械部品、製品、コンテナ貨物など、多種多様な重量物が吊り上げられるあらゆる現場で、玉掛け作業は安全と効率を両立させるための基盤となっているのです。

玉掛け作業の具体的な流れと手順

1. 吊り荷の確認と用具の選定

玉掛け作業の最初のステップであり、最も重要な準備段階が「吊り荷の確認と用具の選定」です。まず、吊り上げる荷物の「重量」「形状」「重心の位置」を正確に把握する必要があります。特に重量は、使用する玉掛け用具の選定に直結するため、必ず確認してください。次に、確認した情報に基づいて、安全荷重を満たす適切なワイヤーロープ、ベルトスリング、シャックルなどの玉掛け用具を選定します。

用具を選定したら、必ず「作業前点検」を行います。ワイヤーロープに素線切れやキンク(ねじれ)、極端な摩耗がないか、ベルトスリングに傷やほつれがないか、フックやシャックルに変形や外れ止め装置の不具合がないかなどを、入念にチェックしてください。些細な損傷でも重大な事故につながる可能性があるため、異常を発見した場合は使用を中止し、新しい用具に交換することが鉄則です。

2. 吊り荷への玉掛け(ワイヤーロープなどを掛ける)

用具の選定と点検が終わったら、実際に吊り荷へワイヤーロープやスリングなどの玉掛け用具を取り付けます。この際、荷物の形状や重心、材質に合わせて、適切な「掛け方」を選ぶことが重要です。例えば、吊りピース(吊り金具)がある場合は「目掛け」、パイプ状の荷物には「絞り掛け」、表面が滑りやすい荷物には「あだ巻き掛け」など、状況に応じた最適な方法を選びます。

特に注意が必要なのは、荷物の角にワイヤーロープやスリングが直接触れる場合です。荷物の角が鋭利だと、用具が損傷し、破断の原因となる可能性があります。これを防ぐために、必ず「当てもの(角当て)」を使用して、用具を保護してください。当てものはゴム製や木製などがあり、荷物の材質や形状に合わせて適切なものを選びます。安全な玉掛けは、荷物と用具の両方を守ることから始まります。

3. クレーン運転手への合図

吊り荷への玉掛けが完了したら、クレーン運転手に対して作業の開始を合図します。玉掛け作業とクレーン作業は密接に連携するため、正確で明確な合図は安全作業の基本です。合図は、労働安全衛生規則で定められた「統一合図」を使用し、手や笛で伝えます。

例えば、片手を高く上げて手のひらを見せれば「巻き上げ」、下げれば「巻き下げ」、両手を広げれば「停止」など、誰が見ても誤解が生じないような明確な動作で行う必要があります。クレーン運転手から見えやすい位置に立ち、遠くからでもはっきりと認識できるような、大きくて力強い動作を心がけてください。曖昧な合図は誤操作を招き、事故に直結するため、常に意識的な合図を徹底することが求められます。

4. 巻き上げと安全確認(地切り)

クレーン運転手への合図とともに巻き上げが開始されたら、玉掛け作業において最も重要な安全確認プロセスの一つである「地切り(じぎり)」を行います。地切りとは、荷物が地面からわずかに(目安として10cm程度)離れた時点で一度巻き上げを停止させ、荷物の状態を最終確認する作業のことです。

この地切りで確認するポイントは、主に3つです。一つ目は「荷物のバランス」です。荷物が傾いていないか、安定して吊り上がっているかを確認します。二つ目は「玉掛け用具の張り具合」です。ワイヤーロープやスリングが均等に張られているか、一部に過度な力が集中していないかをチェックします。三つ目は「クレーンの安定性」です。クレーン自体が安定しているか、無理な負荷がかかっていないかを確認します。この地切りを省略することは極めて危険であり、異常が見られた場合はすぐに荷物を降ろし、玉掛けをやり直す判断が求められます。

5. 荷物の誘導(介錯ロープの使用)

地切りでの安全確認が完了し、荷物のバランスが良好であることを確認したら、目的の場所まで荷物を誘導します。この際、吊り上がった荷物は風やクレーンの動きによって回転したり振れたりすることがあります。荷物が周囲の構造物や他の作業員に衝突するのを防ぐため、「介錯ロープ(かいしゃくロープ)」と呼ばれる補助ロープを使用して荷物を誘導します。

介錯ロープを使用する際は、作業員が吊り荷に直接手を触れることはせず、安全な距離を保ちながらロープを引いて荷物の向きや揺れをコントロールします。これにより、荷物や周囲との衝突を未然に防ぎ、作業の安全性を確保します。介錯ロープは、安全な荷物運搬において非常に重要な役割を担う補助具です。

6. 荷下ろしと玉外し

荷物が目的の場所まで誘導され、無事に着地したら、玉掛け作業の最終ステップである「荷下ろしと玉外し」を行います。荷物を降ろす際は、ゆっくりと慎重に誘導し、指定された場所に安定して置かれたことを確認します。荷物が完全に安定したことを確認したら、クレーンのフックを緩めてもらうよう合図を出します。

クレーンのフックが緩んだら、ワイヤーロープやスリングなどの玉掛け用具を荷物から慎重に取り外します。この一連の作業を「玉外し」と呼びます。荷下ろしから玉外しに至るまで、最後まで周囲の安全確認を怠らないことが重要です。用具を取り外した後も、吊り荷が完全に安定しているか、周囲に危険がないかを確認し、すべての作業が安全に完了したことを確認するまで気を抜かないようにしてください。

玉掛け作業に必須の道具(玉掛け用具)一覧

玉掛け作業は、クレーンを用いて荷物を安全に運搬するために不可欠な専門作業です。

ワイヤーロープ

ワイヤーロープは、玉掛け作業において最も代表的で広く使用される用具の一つです。これは、複数の細い鋼線をより合わせて作られており、非常に高い強度と耐久性を誇ります。そのため、建設現場での鉄骨や建築資材の楊重、工場での大型機械の移動など、重量物の玉掛けに不可欠です。

ワイヤーロープを使用する際には、キンク(ロープの折れ曲がり)や素線切れ、腐食などの損傷がないかを、作業前に必ず点検する必要があります。わずかな損傷でも、吊り上げ中に破断する原因となり、重大な事故につながる可能性があります。また、ワイヤーロープの端末処理には、編み込んで輪を作るアイスプライス加工や、金具で圧縮して固定するロック加工などがあり、使用状況に応じて適切なものが選ばれています。

ベルトスリング・チェーンスリング

ワイヤーロープと並んでよく使われる吊り具(スリング)には、ベルトスリングとチェーンスリングがあります。それぞれ異なる特性を持ち、荷物の種類や作業環境によって使い分けられます。

ベルトスリングは、ポリエステルなどの化学繊維でできており、軽量で柔軟性に優れています。荷物と接触する面が広いため、塗装された製品や精密機械、表面がデリケートな荷物を傷つけずに吊り上げたい場合に非常に適しています。また、使用しないときはコンパクトに収納できる利点もあります。

一方、チェーンスリングは金属製の鎖でできており、高い耐久性と耐熱性を持ちます。高温になる荷物や、鋭利な角を持つ荷物、あるいは摩擦や衝撃が予想される過酷な環境での使用に適しています。ただし、自重が重く、荷物に傷をつける可能性もあるため、使用する際は当てものなどの保護具を併用することが重要です。

フック・シャックル

フックとシャックルは、スリングをクレーンに接続したり、スリング同士を連結したりするために不可欠な金具です。

フックは、クレーンの先端に取り付けられており、ワイヤーロープやベルトスリングのアイ(輪)を掛ける部分として機能します。特に重要なのは、吊り上げた荷物が不意に外れるのを防ぐための「外れ止め装置」が正常に作動するかどうかを作業前に必ず確認することです。外れ止め装置が破損していたり、機能していなかったりすると、荷物が落下する危険性が高まります。

シャックルは、U字またはΩ字型の金具で、ワイヤーロープやスリング、あるいはその他の玉掛け用具を連結する際に使用されます。シャックルのネジやピンが確実に締まっているか、緩みがないかを確認することも、安全な玉掛け作業には欠かせません。使用するシャックルの安全荷重が、吊り上げる荷物の重量に適しているかどうかの確認も重要です。

その他の補助具(天びん、介錯ロープなど)

玉掛け作業の安全と効率を高めるためには、主要な用具以外にも様々な補助具が使用されます。

天びん(吊りビーム)

長さのあるH形鋼やパイプ、または重心が偏った荷物を吊り上げる際に用いられる棒状の吊り具です。これを介して複数の吊り点で荷物を吊ることで、荷物の安定性を高め、片寄りを防ぎます。

介錯ロープ(かいしゃくロープ)

荷物の誘導に使用する補助ロープです。吊り荷が風で振れたり、クレーンの旋回で回転したりするのを防ぐために、作業員が安全な距離を保ちながら荷物を目的地まで導く役割を果たします。これにより、荷物や周囲との衝突事故を防ぎ、作業員の安全も確保されます。

また、ワイヤーロープやベルトスリングが荷物の鋭利な角で損傷するのを防ぐために、「当てもの(角当て)」も重要な補助具です。木製やゴム製、あるいは専用の保護材を使用することで、スリングの寿命を延ばし、切断による荷物の落下を防ぎます。

【重要!】玉掛け作業の基本となる掛け方の種類

玉掛け作業は、荷物の形状や重心、そして吊り上げる環境に応じて、さまざまな「掛け方」を適切に使い分ける必要があります。このセクションでは、代表的な5つの掛け方を取り上げ、それぞれの特徴と最適な用途について詳しく解説します。荷物を安全かつ安定して吊り上げるためには、正しい掛け方を選択することが極めて重要であり、これが荷物の安定性、ひいては作業全体の安全性に直結します。

目掛け

目掛けは、玉掛け作業で最も基本的な掛け方の一つです。この方法では、スリングのアイ(輪)部分を直接クレーンのフックに掛けます。主に、吊りピースや吊り金具があらかじめ取り付けられている荷物を吊り上げる際に用いられる、非常にシンプルで効率的な方法です。

通常、荷物の安定性を確保するために、2本吊りや4本吊りといった形で複数のスリングを組み合わせて使用します。これにより、荷物がバランス良く吊り上げられ、傾きや揺れを防ぎ、安全な運搬が可能となります。

半掛け

半掛けは、スリングを荷物の下部に通し、その両端のアイをクレーンのフックに掛ける方法です。比較的単純な形状の荷物を吊る際に利用されることがありますが、この掛け方には明確な欠点があります。それは、荷物が滑りやすく、吊り上げた際に非常に不安定になりやすいという点です。

そのため、半掛けは重心が安定しており、かつ滑りにくい材質の荷物に限定して使用すべきです。不安定な荷物に半掛けを適用すると、荷崩れや落下のリスクが高まるため、作業を行う際は常に細心の注意を払い、可能な限り他のより安定性の高い掛け方を検討することが重要です。

絞り(目通し・チョーク)

絞り掛け(または目通し、チョーク掛け)は、スリングを荷物に巻きつけ、一方のアイをもう一方のアイに通してから吊り上げる方法です。この仕組みにより、吊り上げる力が加わるとスリングが荷物をしっかりと締め付け、固定されるため、吊り点がないパイプの束や丸棒、あるいは滑りやすい荷物を安全に固定して吊るのに非常に有効です。

ただし、絞り掛けを使用する際には重要な注意点があります。スリングが荷物を締め付ける際、角度がつくことで、スリング本来の吊り上げ能力(安全荷重)が低下します。一般的に、絞り掛けの場合、安全荷重は目掛けに比べて約80%程度に減少するとされています。この能力低下を考慮せずに作業を行うと、過積載となり非常に危険ですので、必ず事前に計算し、適切な安全率を確保する必要があります。

あだ巻き掛け

あだ巻き掛けは、先述の絞り掛けをさらに応用した方法です。荷物にスリングを1周以上巻き付けてから、片方のアイをもう一方のアイに通して絞り上げます。この追加の巻き付けにより、荷物とスリングとの接触面積が大幅に増加し、摩擦力が大きくなるという特徴があります。

この特性から、あだ巻き掛けは特に表面が滑らかな丸棒や磨き加工された部材など、滑りやすい荷物を吊り上げる際にその真価を発揮します。絞り掛けよりもさらに強力な固定力を得られるため、荷物の落下や横滑りのリスクを効果的に低減することができます。安全性と安定性が求められる場面で、非常に有効な掛け方と言えるでしょう。

肩掛け

肩掛け(またはバスケット吊り)は、スリングをU字状にして荷物の下部に通し、その両端のアイをそれぞれ別のクレーンフック、または1つのフックに掛ける方法です。この掛け方では、荷物がまるでカゴ(バスケット)に収まっているかのように包み込まれるため、吊り荷が非常に安定しやすいという大きな特徴があります。

安定性が高い一方で、注意すべき点もあります。荷物が横方向に傾斜した場合、スリングから滑り落ちる危険性があるため、吊り角度(スリングが大きく開く角度)が大きくなりすぎないように注意が必要です。特に、重心が不安定な荷物や、横滑りしやすい材質の荷物を吊る際には、角度管理を徹底し、必要に応じて介錯ロープなどを用いて荷物の動きを制御することが求められます。

玉掛け作業に絶対に必要な資格について

玉掛け作業は、クレーンを用いて荷物を安全に吊り上げるために不可欠な作業ですが、労働安全衛生法により、玉掛け作業を行うには特定の国家資格の取得が義務付けられています。この資格は、吊り上げる荷物の重さではなく、使用するクレーンの「吊り上げ荷重」によって必要な種類が異なり、それぞれ「玉掛け技能講習」と「玉掛け特別教育」と呼ばれます。

どっちを取るべき?使用するクレーンの吊り上げ荷重で決まる

重要な判断基準は、「実際に吊る荷物の重さ」ではなく、「使用するクレーン・移動式クレーンの能力(吊り上げ荷重)」です。

例えば、吊り上げ荷重が5トンのクレーンを使って、800kgの比較的軽い荷物を吊る場合でも、必要となるのは吊り上げ荷重1トン以上のクレーンに対応する「玉掛け技能講習」です。荷物の重さが1トン未満だからといって「玉掛け特別教育」で良い、というわけではありませんので注意が必要です。

将来的に玉掛け作業者として幅広い現場で活躍したい、あるいはキャリアアップを目指したいと考えているのであれば、全てのクレーンに対応できる「玉掛け技能講習」の取得を強くおすすめします。

▼玉掛け資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています

最重要!玉掛け作業の安全を確保する3つのポイント

ポイント1:作業前の用具点検を徹底する

玉掛け作業における安全確保の第一歩は、使用する玉掛け用具の「作業前点検」を徹底することです。ワイヤーロープの素線切れ、キンク(よじれや折れ曲がり)、摩耗、腐食、ベルトスリングの傷、ほつれ、変形、フックの変形、摩耗、外れ止め装置の不具合、シャックルのピンの緩みなど、些細な不具合であっても見逃してはなりません。これらの異常は、吊り荷の落下や、用具の破断といった重大な事故に直結する可能性があります。

「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断は、現場の安全を脅かす最も危険な考え方です。点検で異常を発見した場合は、決してその用具を使用せず、必ず交換または補修を行う必要があります。点検は作業者の責任であり、常に真剣に取り組むべき重要な作業です。

ポイント2:吊り荷の重心とバランスを必ず確認する

安全な玉掛け作業には、吊り荷の特性を正確に把握し、その重心とバランスを考慮した玉掛け方法を選ぶことが不可欠です。荷物の重量、形状、重心の位置を事前に確認し、吊り上げた際に荷物が傾いたり、不安定になったりしないよう、最も安定する吊り点を選ぶ必要があります。特に、左右非対称な形状の荷物や、内部に液体などの内容物が移動する可能性のある荷物については、より慎重な判断が求められます。

この重心とバランスの確認の最終チェック工程が「地切り(ちぎり)」です。地切りとは、荷物を地面からわずかに(約10cm程度)吊り上げた状態で一時停止させ、荷物の傾き、玉掛け用具の張り具合(均等に力がかかっているか)、クレーン全体の安定性などを最終確認する作業です。地切りで少しでも異常や不安定な兆候が見られた場合は、すぐにクレーンを停止させ、荷物を地面に戻して玉掛けのやり直しを行う勇気と判断力が求められます。この工程を怠ることは、荷物の落下の原因となるだけでなく、最悪の場合、クレーンが転倒するなどの大事故に繋がる可能性があります。

ポイント3:合図は明確に、周囲の安全確認を怠らない

玉掛け作業は、クレーン運転手との密な連携があって初めて安全に行うことができます。この連携の要となるのが「合図」です。合図は、誰が見ても誤解が生じないように、大きく、はっきりと、そして明確に行うことが非常に重要です。たとえ声が届く距離であっても、必ず手や笛による統一された合図を使用し、クレーン運転手が確実に認識できるように努めましょう。

また、玉掛け作業者は、自分の作業範囲だけでなく、常に「周囲の状況」に最大限の注意を払う必要があります。吊り荷の下やクレーンの旋回範囲に他の作業員や障害物がないか、荷物の移動経路に危険な場所はないか、他の重機との距離は十分に確保されているかなど、多角的に安全確認を行うことが事故防止の鍵となります。

よくある事故事例と対策

玉掛け作業において発生しやすい事故事例を知り、その対策を講じることは、実際の現場での安全意識を高める上で非常に有効です。ここでは、いくつかの典型的な事例とその対策を紹介します。

事故事例1:ワイヤーロープが荷物の角で切断し、吊り荷が落下した。

原因:角の鋭い荷物を吊る際に、ワイヤーロープが直接荷物に触れて擦り切れ、破断してしまった。ワイヤーロープの素線切れやキンク(ねじれ)に気づかず使用し続けた。

対策:荷物の角には、必ず「当てもの(角当て)」を使用し、ワイヤーロープが直接荷物に触れないように保護します。また、作業前点検でワイヤーロープの損傷を必ず確認し、異常があれば使用を中止して交換します。

事故事例2:吊り荷が揺れて作業員に激突した。

原因:吊り上げた荷物が風にあおられたり、急なクレーンの動きで揺れたりして、その揺れを作業員が避けきれずに衝突してしまった。

対策:荷物の移動中は、必ず「介錯ロープ(かいしゃくロープ)」を使用して荷物の揺れや回転をコントロールします。作業員は荷物に近づきすぎず、安全な距離を保ちながら誘導することを徹底します。また、クレーン運転手には急な操作を避け、ゆっくりと慎重に動かすよう合図で指示します。

事故事例3:絞り掛けで吊り荷が滑り落ちた。

原因:表面が滑らかな丸棒やパイプなどを絞り掛けで吊った際に、摩擦が足りず、スリングが滑って荷物が落下してしまった。

対策:荷物の材質や形状に適した「掛け方」を選定することが重要です。特に滑りやすい荷物には、絞り掛けよりも摩擦力を高める「あだ巻き掛け」を用いるなど、より強力な固定方法を選択します。また、スリングの材質(例:化学繊維ベルトスリングなど)と荷物の相性も考慮し、状況に応じて最も安全な方法を選びましょう。

まとめ:玉掛けは現場の安全を支えるプロフェッショナルな仕事

玉掛け作業は、単にクレーンに荷物を掛けるだけの単純作業ではありません。そこには、吊り荷の重量や形状、重心を正確に見極める深い知識と、最適な玉掛け用具を選定し、確実に設置する精密な技術が求められます。そして何よりも、自分自身と周囲の作業員の命を守るという、高い安全意識が不可欠な専門性の高い仕事です。

クレーン作業における事故の多くは、不適切な玉掛けが原因で発生します。玉掛け作業者は、荷物の落下や倒壊といった重大な事故を未然に防ぐ「現場の安全の要」であり、その責任は非常に大きいと言えるでしょう。玉掛け作業者の的確な判断と正確な作業が、現場全体の安全を支えています。

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Q. 玉掛けの資格を取るのは難しいですか?

いいえ、それほど難しくありません。「玉掛け技能講習」は学科と実技を含めて3日程度で修了でき、合格率も90%以上と言われています。真面目に講習を受ければ、ほとんどの方が取得可能です。

Q. 力仕事に自信がなくても大丈夫ですか?

基本的な重量物の移動はクレーンが行うため、腕力よりも「手順を守る正確さ」や「安全確認」が重視されます。ただし、ワイヤーロープなどの道具自体がある程度重い場合があるため、基礎的な体力は必要です。

Q. 資格がなくても玉掛けの仕事に応募できますか?

はい、応募可能です。「工場ワークス」には「未経験者歓迎」や「資格取得支援制度あり」の求人も多くあります。まずは補助業務からスタートし、会社のサポートを受けて資格を取る道もあります。