「夜勤手当」と「深夜手当」、この2つは混同されがちですが、実は全くの別物です。
「深夜手当」は、法律で定められた割増賃金で、深夜(原則として午後10時から午前5時まで)に働いた全ての労働者に支払われます。一方、「夜勤手当」は、会社が独自に設定している手当で、その内容や金額は会社によって異なります。
この記事では、この2つの違いを明確にしながら、給与計算の方法や業界別の相場について解説します。給与が正しく支払われているかを確認したり、より良い条件の仕事を探したりするのに役立ててください!
夜勤手当と深夜手当の違い
夜勤帯に働いた場合に支給されるお金には、「夜勤手当」と「深夜手当」の2種類があります。この2つは混同されがちですが、それぞれ性質も計算方法も異なります。
| 夜勤手当 | 深夜手当(深夜割増賃金) | |
| 法律 | 規定なし | 労働基準法による規定あり |
| 金額 | 任意(数千円~) | 基礎賃金の25%以上 |
| 時間 | 企業によって異なる | 22:00~翌5:00 |
給与明細では、深夜手当は「深夜割増賃金」や「深夜25%割増」のように表記されることが多いです。一方、夜勤手当は「夜勤手当〇〇円/回」「夜勤手当15%」といったように、企業独自の名称や金額が記載されます。
深夜手当は法律で定められた最低基準であり、夜勤手当は企業がさらに上乗せして支給する報酬と考えるとわかりやすいでしょう。
夜勤手当の計算方法を徹底解説
夜勤手当の金額を正しく理解するには、「深夜手当」と「夜勤手当」を分けて計算することが重要です。
計算は、次の4つのステップで行いましょう。
- 基礎賃金(1時間あたりの賃金)を確定する
- 深夜労働時間を確認する
- 深夜手当を計算する
- 夜勤手当(企業独自分)を加算する
それでは、それぞれの計算方法を詳しく説明します!
1. 基礎賃金(1時間あたりの賃金)を確定する
割増賃金の計算の元となる基礎賃金は、手当の種類によって異なります。家族手当、通勤手当、住宅手当など、臨時に支払われた賃金等は算入しません。
月給制の場合、基礎賃金は以下の計算式で求められます。
基礎賃金(時給)=(基本給+業務に関連する手当)÷ 月平均所定労働時間
例:基本給25万円、職務手当3万円、月平均所定労働時間160時間の場合
(25万円 + 3万円)÷ 160時間 = 1,750円
2. 深夜労働時間を確認する
深夜手当の対象となるのは、22:00〜翌5:00に働いた時間です。給与明細を確認する際は、タイムカードやシフト表を見て、この時間帯の実労働時間を正確に把握しましょう。
3. 深夜手当を計算する
基礎賃金と深夜労働時間がわかれば、深夜手当は以下の計算式で算出できます。
深夜手当 = 基礎賃金(時給) × 1.25 × 深夜労働時間
※割増率は最低25%です。企業によってはこれ以上になる場合もあります。
例:基礎時給1,750円の従業員が22:00〜翌5:00まで7時間働いた場合
1,750円 × 1.25 × 7時間 = 15,312.5円
4. 夜勤手当(企業独自分)を加算する
最後に、深夜手当とは別に定められている夜勤手当を加算します。夜勤手当は企業によって「定額支給」と「割合支給」の2パターンがあります。
- 定額支給:1回の夜勤につき一律〇〇円が支払われる方式
- 割合支給:基本給の〇〇%が支払われる方式
例:深夜手当15,312円の従業員が夜勤手当として1回5,000円を定額で受け取る場合
15,312円(深夜手当)+ 5,000円(夜勤手当)= 20,312円が、1回の夜勤で追加支給される金額となります。
業界別の夜勤手当の相場
夜勤手当は、業界や職種、地域によって大きく異なります。
- 製造業・物流:1回あたり1,500〜6,000円が相場です。業務の特性上、固定額で支給されるケースが多く見られます。
- 介護職:施設の種類によって差があり、有料老人ホームでは5,000〜6,000円、特別養護老人ホームや介護老人保健施設では1回あたり6,000〜8,000円が相場です。
- IT運用監視:1回あたり6,000〜8,000円が相場です。システム障害時の即応性が求められるため、高めに設定される傾向があります。
- 看護師:3交代制では1回あたり5,000〜6,000円、2交代制では1回あたり11,000〜13,000円が平均的な相場です。医療行為など、人命に関わる業務の専門性が高いため、比較的高い水準です。
地域差も大きく、都市部の方が地方よりも夜勤手当が高くなる傾向があります。これは、都市部のほうが人手不足が深刻で、人材を確保するために手当を高く設定する必要があるためです。
※一般的な参考相場のため、具体的な金額は勤務先によって異なります。
夜勤手当が支給されないケースと対処法
夜勤手当は企業の裁量で支給される手当のため、中には支給されないケースもあります。
- 就業規則に夜勤手当の規定がない場合:企業に夜勤手当の支給義務はありません。
- 固定残業代に夜勤手当が含まれている場合:契約書や就業規則に「夜勤手当相当分」が固定残業代として組み込まれている場合があります。
ただし、夜勤手当が支給されない場合でも、深夜帯(22:00〜翌5:00)に働いた分の「深夜手当(深夜割増賃金)」は、雇用形態に関係なく必ず支給されなければなりません。もし深夜手当が支給されていない場合は、労働基準法違反となる可能性があります。
労働基準法違反が疑われる場合の対処法
- 就業規則や給与明細を確認する:まず、自社の就業規則に夜勤手当や深夜手当の規定があるか確認しましょう。給与明細の「深夜割増賃金」の欄に金額が記載されているかもチェックします。
- 勤怠記録を整理する:タイムカードやシフト表など、深夜帯に働いたことがわかる記録を整理します。これは、後で交渉や相談をする際の重要な証拠となります。
- 社内の担当部署に相談する:人事部や労務担当者に、書面またはメールで問い合わせます。口頭ではなく文書でやり取りすることで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
- 労働基準監督署に相談する:社内での解決が難しい場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。無料で相談でき、違反が確認されれば企業に是正勧告を出してくれます。
まとめ:夜勤手当を正しく理解して賢く働く
夜勤手当は、深夜手当という法定の最低基準に、企業独自の夜勤手当が上乗せされて支給される仕組みです。自身の給与が適正かどうかは、給与明細と就業規則を照らし合わせ、計算方法を理解することで判断できます。
この記事で得た知識を活かし、自分の働き方が正当に評価されているかを確認してみてください。もし疑問や不満があれば、まずは証拠を整理し、担当部署や公的機関に相談してみましょう。
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