乗用車の構造やトラックに連結させる車台に関する説明で、「シャーシ」や「シャシー」という言葉を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。一般的に自動車の構造の一部を指す言葉として使われることが多いですが、実はそれ以外の物を指す言葉としても使われています。混同を避けるためにも、この言葉を頻繁に使う仕事などに就く方は、それら複数の意味も知っておく必要があります。
今回はそんな「シャーシ」という言葉の基礎知識や、この言葉が指す物についてご紹介します。
シャーシの基礎知識
まずはシャーシに関する基礎知識をご紹介します。この言葉に対する理解を深めるためにも、これらのことは最低限覚えておくようにしましょう。
シャーシ:フランス語で「フレーム」を表す
シャーシとは、もともとフランス語の「chassis」を語源としており、その言葉は「フレーム」「枠組み」「骨格」といった意味を持っています。このことから、シャーシはまず外来語だということが言えますが、カタカナで他にも「シャシ」「シャシー」「シャーシー」と表記することもあるため、これらがすべて同じ語源を持つという認識をしておくのがおすすめです。ただし「シャーシ」という表記が最も一般的であるため、この表記で統一したほうが誤解を招かずに済む可能性が高いことも覚えておいてください。
シャーシという言葉が用いられることが多いのは、乗用車の構造の一部を指す場合です。この場合、乗用車の車体(ボディ)以外のすべての部分をシャーシと呼びます。また、この部分を指す際にはシャーシではなく「シャシ」と表記されることが多いですが、意味は同じです。
一方、車に関連する言葉としてシャーシという単語が使われる場面は、車両に連結させ、コンテナを乗せて荷物を運ぶ「骨組み部分」を指す言葉の際も挙げられます。この場合のシャーシはトラックに連結されることが多く、「トラックで運ばれているコンテナが載っている部分」というと分かりやすいかもしれません。
またシャーシには以上のように車に関する意味以外にもさまざまな意味で使われる場面があり、言葉として混同しないよう注意する必要があります。
コンテナとの違い:運ぶ荷物を入れる容器で、シャーシに載せる物
トラックに連結した状態で使われるシャーシと「コンテナ」を混同される方は少なくありません。しかしコンテナは「トラックで運ぶ荷物を入れる容器そのもの」を指すのに対し、シャーシはそれを「載せる物」を指すため、はっきりとした違いがあります。
トレーラーとの違い:トレーラーは車両に連結させて、荷物を運ぶ車
同じように、トラックに連結させて使われるシャーシと「トレーラー」を混同される方も少なくありません。この場合のトレーラーとは「車両に連結させて荷物を輸送する車の部分」を指すことから、「コンテナを載せるシャーシをさらに載せ、運搬するタイヤがついた部分」をトレーラーと呼ぶと覚えておくと分かりやすいでしょう。
シャーシの主な種類
単にシャーシといってもさまざまな種類があり、ものによって形や性能は大きく異なります。シャーシにはパソコンや電子機器、飛行機などに関する意味もありますが、ここでは乗用車とトラックに関するものの種類を挙げ、ご紹介します。
乗用車:モノコック、ラダーフレーム
乗用車で使われているシャーシの中でも特に広く知られているもののひとつが「モノコック」と呼ばれるものです。一般的にシャーシは自動車のボディを除いた部分のことを指しますが、近年では軽量化などを目的として開発された、ボディとシャーシが一体化したものが作られています。モノコックとはこのような「ボディとシャーシが一体化したもの」を指し、衝突事故が発生した際に衝撃を吸収してくれるといったメリットもあります。
一方、乗用車に使われているシャーシには「ラダーフレーム」と呼ばれるタイプのものもあります。このタイプのシャーシはモノコックが開発される遥か昔から使われており、シンプルな構造が大きな特徴となっています。モノコックに比べると重量があることから、現在ではオフロード4WDや商用車で使われることが多くなっており、独自の進化を遂げています。
トラック:2軸シャーシ、3軸シャーシ、MG付きシャーシ
乗用車で使われているシャーシとトラックで使われているシャーシは全く異なり、トラックのシャーシにはコンテナを載せ、輸送するという重大な役割を担っています。続いては、そんなトラックのシャーシの種類についてです。
トラックのシャーシには大きく分けて「2軸シャーシ」と「3軸シャーシ」の2種類があります。この「軸」とは、左右のタイヤを連結させている棒のことを指し、2軸シャーシの場合はタイヤが全部で4個、3軸シャーシの場合はタイヤが全部で6個あります。よって、2軸シャーシよりも3軸シャーシのほうが最大積載量は多くなり、大型のトラックには3軸シャーシが搭載されることが多くなっています。
一方、トラックに搭載されているシャーシには「MG付きシャーシ」と呼ばれるタイプのものもあります。このMGとは、英語で電動発電機を意味する「Motor Generator」の略語であり、MG付きシャーシにはその名のとおり電動発電機が搭載されています。この電動発電機の働きにより、シャーシの上に積んだコンテナ内の温度は一定に保つことができるため、例えば冷凍食品を運ぶ大型トラックにはこのMG付きシャーシが使われています。
シャーシが使用されている物
以上のことから、シャーシとは主に大型車両に使われている物であるということがお分かりいただけたと思います。その一方で、シャーシは実は上記以外の場面でも広く使用されています。最後に、その他でシャーシが使われているものを見ていきましょう。
車両:乗用車、トラック、ミニ四駆 など
既にご紹介したとおり、シャーシは乗用車やトラックで使われています。また、シャーシとは乗用車の場合とトラックの場合で指す部分が異なる点も忘れないようにしましょう。
一方、このような車両に使用されるシャーシは大きなものというイメージを持ってしまいがちですが、必ずしも大きなものだけをシャーシと呼ぶわけではありません。例えばミニ四駆の場合もボディを除いた部分はシャーシと呼び、サイズが小さいからといってシャーシという名称が使えなくなるということはありません。
車両以外の物:飛行機、コンピュータなど
車両以外でシャーシと呼ばれる部品が使われているものとしては飛行機が有名です。ただし、飛行機のシャーシとは着地の際に衝撃を吸収する降着装置の中でも胴体や翼を除いた部分のことを指し、車のようにボディ以外の部分をシャーシと呼ぶことはありません。
また、シャーシはコンピュータの部品としても使用されています。この場合のシャーシとは、マザーボードや磁気ディスクといった精密機器を収納している枠組みの部分を指します。ただし、この枠組みはフレームワークなどの名称で呼ばれることもあるため、シャーシという呼び方は必ずしも一般的ではありません。
この他にシャーシとは、テレビやラジオをはじめとした電子機器で基板やその他の電子部品を装着するフレーム内の場所を指すこともあります。
シャーシは分野によって意味が変わるため注意が必要!
シャーシという言葉は、車やトラックで使われている部品の名称としての知名度が高いといえるでしょう。しかし、車とトラックのそれぞれでこの言葉が指すものは全く異なるため、その違いも覚えておく必要があります。
また、車やトラックの場合に比べると知名度は若干低いといえますが、シャーシという言葉は飛行機やコンピュータ、電子機器の部品を指すこともあり、これらも含めて混同しないようそれぞれの意味をしっかりと覚えておくようにしましょう。
制作:工場タイムズ編集部