製造業をはじめとした幅広い事業において、生産された製品のうち、どれくらいが良品として利益を生み出しているのかということを把握していなければなりません。
その際に重要になるのが「歩留まり(ぶどまり)」です。
ここでは、この歩留まりに関して、その具体的な考え方や歩留まり率の計算方法などについて解説していきます。
歩留まりとは?
歩留まりは、主に製造業において欠陥品を除いた良品が、すべての製造品のうちどれくらいの割合を占めているのか、という点を明確にするための計算です。そのため、その数値は利益率や効率性などの向上をはかる際に不可欠であることから、多くの事業者にはその明確化が求められます。なお「歩止まり」と表記されることもあります。
製造業、食品加工業などのものづくりに関わる事業者が行うものというイメージが強い歩留まりですが、人材ビジネスなどにおいても幅広く活用されています。人材ビジネスにおける歩留まり率は、内定を出した人数のうち、実際に入社をした人数が占める割合を示します。人材派遣や転職をメインとした人材ビジネスを行う事業者にとっては、その割合が会社としての実績に直結し、その数値の向上は常に図られていなければなりません。
以上のように、歩留まりはものづくりを行う製造業や食品加工業において、その効率性や利益率を明確にする上で行わなければならない作業といえるでしょう。一方で、人材ビジネスにおいては同じ歩留まりでも若干異なる見方がされており、それによって明確になる事柄も少し変わります。そのため、単に歩留まりといっても、その解釈の仕方は事業内容によって違うことから、各々の事業に応じた正しい理解が必要となります。
歩留まりの計算方法
歩留まり率を明確にし、生産性や利益率の向上に利用する場合は、より正確な数値を算出しなければなりません。続いて、歩留まり率の計算方法について解説します。
上述したように、歩留まり率は生産した商品のうちどれくらいが良品として利益につながっているのかを明確にするために必要な数値です。そのため、例えば100個の製品のうち20個に欠陥があり、実際に利益につながったのが80個しかなかった場合、歩留まり率は80%です。また、人材ビジネスなどでは、10人に内定を出し、実際に入社した人が8人だった場合、歩留まり率は80%です。
このような例を見ると歩留まり率の計算方法は簡単なようにも思えますが、実際の製造業では生産した商品の数を把握することは簡単であっても、欠陥品の具体的な数を把握することは簡単ではありません。特に欠陥品であることに気づかないまま出荷してしまったにもかかわらず、小売店において売れ残ってしまい、長期間にわたってそれが欠陥品であることが判明しないケースなども考慮すると、その具体的な数は出荷前の段階で把握している必要があります。
また、国内外に複数の生産拠点をもつ製造業者などの場合も、欠陥品の具体的な数量を把握することは困難を極めることから、事業者としての規模が大きければ大きいほど、歩留まり率の計算は容易ではないといえるでしょう。
歩留まりの重要性
それでは、歩留まりの数値からどのような問題点が判明するのか考えてみましょう。
上述したとおり製造業においては欠陥品や不良品の量が多いほど、歩留まり率は低くなってしまいます。したがって、歩留まり率が低い場合は、欠陥品や不良品であるがために利益につながっていない商品が多く、原材料費や製造コストのロスが大きいということが分かります。
そのため、製造業において留まり率を上げ、生産性の向上をはかるためには、欠陥品や不良品の正確な量を把握し、なぜそれほどの量の欠陥品・不良品が製造されてしまうのか、その原因を根本的なレベルから明確にしなければなりません。
また、利益率という観点においては、原材料を無駄なく使用するという点も重要です。例えば、鉄くずが多く出る製造業では、それらの鉄くずを廃棄することは、原材料を破棄するのと同じであるため、廃棄する鉄くずの量が多いと欠陥品・不良品が少なく、歩留まり率がよくても利益率が上がらないという事態を招くかもしれません。
以上のことから、製造業において留まり率をいかにして上げるかという点が利益率の向上にとっても重要となります。その一方で、利益率を上げるためには歩留まり率だけでは分からない要素についても考慮する必要があり、歩留まり率と同様にその重要性は高いといえます。
歩留まり改善で生産性の向上を
最後に歩留まりを改善するために重要なポイントをおさらいしましょう。
欠陥品・不良品が製造されてしまう原因の究明
上述のとおり、歩留まり率は生産したすべての商品のうち利益につながるものが占める割合を示します。そのため、欠陥品・不良品の量が多ければ多いほど歩留まり率は低下してしまいます。
この点を改善するためには、なによりも欠陥品・不良品が製造されてしまう原因を明確にし、その改善をはかることが重要です。例えば、製造に使用する機器の老朽化が原因であれば、機器を新装すると歩留まり率を大幅に向上することができるかもしれません。もしくは製造を行う作業員の技術的な問題であるならば、作業内容の再確認や配置転換などによっても歩留まり率の大幅な向上がはかれるかもしれません。
総合的な利益率を見越したアイデアの創出
歩留まり率の改善はより多くの利益を得るために重要な要素となります。しかし、その一方で歩留まり率はあくまでも総合的な利益率を構成する要素のひとつであるため、歩留まり率ばかりに着目しすぎてしまうと総合的な利益率の向上という本来の目的を見失ってしまうこともあるかもしれません。
そのため、歩留まり率の改善について考える際に行き詰った場合は、総合的な利益率という根源的かつ広義的な目的に立ち返り、その向上のためのアイデアの創出に努めてみるのがよいでしょう。
以上のように歩留まり率は、生産性、ひいては総合的な利益率の向上において非常に重要な要素です。そして改善することにより、事業全体として大きな成果を得ることも可能なのです。
制作:工場タイムズ編集部