「物流業務」と聞くと、トラックでの運送や倉庫作業などをイメージする方が多いかもしれません。実は、物の運搬や仕分けだけでなく、在庫数の確認や物の流れ全体を管理する機能、またそれに関わる作業などもすべて物流業務に含まれるのです。
海外との貿易を行う企業であれば、税関や英語書類のやりとりなどのスキルも生きますし、仕事で関わる職種も豊富で、今後もなくならない仕事のひとつと考えられている物流業務。今回はそんな物流業務の仕事内容について、主な特徴を掘り下げていきます。
物流業務の基本的なフロー
物流業務は、商品の運搬を受注した時点からはじまり、最終目的地へその商品を届けて問題がないことが確認できれば完了となります。倉庫での「ピッキング作業」や出荷前の「仕分け作業」「運搬」などは、物流業務の流れの中で発生する作業のひとつだといえます。
物流業務の主な流れは下記のとおりです。
1. 受注の情報管理
まずは商品をどのように目的地へ流通させるのか、出荷予定日や価格などを荷主と契約することから物流業務はスタートします。商品の使用目的を確認することもあり、こうした受注情報をもとに出荷指示書や納品書なども合わせて作成するのが一般的です。
2. 在庫確認・製造
受注したデータをもとに商品の在庫を確認し、在庫が足りない場合は製造を指示します。物流業務では製造後の在庫から出荷個数を引いた数量を正しく管理しなければなりません。在庫数を確認する「棚卸し作業」も物流業務のひとつで、物流コスト削減のためにはこの在庫管理システムを整えておくことも大切です。
3. 流通加工
製造、または在庫として保管されている商品を出荷先の使用状況に応じて加工します。商品自体を加工しない「包装」や「梱包」なども、出荷先での使いやすい状態にするための流通加工作業のひとつに含まれます。
一般消費者でも見るケースがあるのは、飲料水や食品を箱に入れたり、カーテンを必要な大きさにカットしたりといった作業などです。
4. 荷役
商品を実際に出荷するために準備をする作業が荷役です。必要な数だけ倉庫からピックアップする「ピッキング」や「仕分け作業」、その後運搬するまでの「保管」などが荷役に含まれます。
場合によってはこの流れのなかで不良品が発見されて出荷停止となるケースもあります。物流業務のなかではこの荷役作業の割合が大きく、いかに効率的なシステムにできるかが物流コスト削減に大きく関わります。
5. 輸送・配送
出荷準備のできた商品を運搬する作業が輸送や配送です。運搬効率化のために一度物流センターなどに運ばれてから他社の物と一緒に共同配送するケースも珍しくありません。こうした拠点に運ぶまでを「輸送」、そこから最終目的地までに運ぶ二次運搬を「配送」と呼ぶのが一般的です。
物流業務のなかでは輸送や配送のコストも荷役と同様コストに大きく関わるため、運搬を外部委託するケースがあります。運搬を外部委託することは一般的に「サードパーティーロジスティクス(3PL)」と呼ばれます。
6. 返品作業・再配送
最終的な配送先に商品を届けたあとも、すぐに終わりではありません。配送商品の数量が間違っていたり不良品が発見されたりと、返品や再配送などの対応業務が必要になるからです。
配送ミスや不良品の発生を完全になくすことは難しいですが、配送前に検品作業を徹底してミスを減らすことや、返品の流通コストを削減するシステム導入など、返品発生の改善も物流業務で考えなければいけない点のひとつです。
物流業務の魅力
物流業務には、大きく分けて3つの魅力的なポイントがあります。
業務内容が幅広い
物流業務といっても、上記でご紹介したように仕事内容はさまざまです。梱包作業や倉庫からの運搬などはもちろん、在庫管理のシステム担当業務なども必要になります。そのためシステム開発の業務担当者を募集しているケースもあります。
また日本国内での流通だけでなく、海外からの輸入や日本で製造している商品の輸出などもあり、外国語のスキルが役立つケースもあるでしょう。業務内容が幅広く、複数の職種のなかから役割を選択できることも物流業務の魅力です。非常に幅広い分野での業務があるため、今まで関連がないと考えていた過去の経験が役に立つ可能性もあります。
将来的にもなくなりにくい仕事である
物流業務は、企業が製造する商品に対し、その販売場所や使用場所が異なるのであれば必ず発生する業務です。スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの小売店では当然商品の仕入れとして物流は必要ですし、レストランや居酒屋など食事を提供するお店でも食材を入荷するなどで物流は不可欠です。どんな種類のお店でもその裏側には物流という仕事が存在します。
また1990年代後半から普及したインターネット通販は、このサイトを見ている方の中にも利用経験のある方はいるでしょう。インターネット通販で物流業務は拡大しており、今後も需要はなくならないと考えられます。物流業務が必要ということは、そこで勤務する人も不可欠であるため、将来的にもなくならない仕事であるといえます。
物流業界未経験でも働きやすい
他の職種と比較すると、物流業務は未経験者でも募集しているケースが多いです。理由としては、インターネット通販の普及も後押しし、物流業界で人手が多く必要になっている状況があるからです。とにかく人手を確保するため未経験者も含めて幅広く募集することにより、他業種からの転職もしやすい業界です。
物流業務に求められる経験やスキル
物流業務は未経験者歓迎として募集されることも多いですが、業務内容によってはもっている経験やスキルが役立つケースもあります。
自動車免許や運転技術
輸送や配送などを自動車で行う業務では運転免許が必須です。特に2017年より新設された車両重量3.5トンまでの「準中型免許」以上の運転免許があると大型車での輸送業務も可能となるため、勤務できる幅が広がります。
フォークリフトの運転講習や教育を受けている
倉庫や配送センターでの仕分け作業にはフォークリフトが使われているケースが多いです。企業の敷地内であっても最大荷重が1トンを超えるフォークリフトの運転には運転技能講習が、1トン未満であっても運転特別教育を修了していなければいけません。
フォークリフトは自動車よりも早く運転可能ではありますが、過去に工場業務などでフォークリフトの講習や教育を受けている方であれば、即戦力として活躍が期待できます。
貿易の知識
海外からの輸出入を行っている業者であれば、貿易知識や交渉能力などが役立ちます。特に税関に関わる手続きができる「通関士」は、通販にともなう輸出入の増加によって2019年時点でかなりの人手不足だと言われており、物流企業では求められている人材です。
他にも「物流管理士」や「貿易実務検定」なども、貿易に関連する資格のため評価や給料が高くなることがあります。
英語スキル
貿易知識と同様に、海外との取引を行っている業者の場合、英語スキルが大きく役立ちます。貿易業務では請求書などの書類作成が必要なため、英会話は難しく読み書きしかできないという場合でも重宝されることは珍しくありません。
関連業種の知識
物流を必要としている業種は幅広く、過去に勤務経験のある業種が役立つこともあります。例えばアパレル業界のサイズや人気ブランドの入荷選定知識、食品業界での温度管理や安全対策などです。物流はその入荷管理なども含まれるので、さまざまな業種経験を活かせるチャンスがあります。
さまざまなスキルが活かせる物流業務
物流は受注後の情報管理からピッキング作業や輸送までが含まれます。ほとんどの企業で物流業務は必要で、インターネット通販の普及で人手が求められているために未経験歓迎であるケースが多く、他業種からの転職がしやすいです。
仕事内容によって異なりますが、運転免許やフォークリフトの経験、また貿易や英語の読み書きなどのスキルがあれば、仕事でその経験を活かすことができるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部