最近ではあらゆる電子機器に半導体が搭載され、半導体本体の製造やその品質の向上は各方面で目覚しいものがあります。また、半導体を製造する会社が集まった地域を「シリコンバレー」と呼ぶことから分かるとおり、半導体はシリコンから作られています。シリコンの加工技術の向上とは、すなわち半導体の製造技術の向上といえるでしょう。
このような半導体の製造技術の向上によってとりわけ高品質化が著しいのが、半導体を構成する部品素材となる「シリコンウエハー(シリコンウエハー)」です。このシリコンウエハー自体の特徴や働きなどはあまり知られていませんが、数多く存在する電子機器にとって不可欠な部品のひとつとなっています。
今回は、このシリコンウエハーの基礎知識や実際に使用されている製品、製造方法などの特徴についてご紹介します。その詳細をよく知らないという方は、ぜひ読んでみてくださいね。
シリコンウエハーとは?
シリコンウエハーとは、その名称からも分かるとおりシリコンから作られた部品です。その形状は極めて薄い円盤状をしていて、表面が厳密に平坦となっている点はシリコンウエハーの高い性能にも大きく関係しています。
半導体の製造においては、印刷技術や撮影技術を活用しシリコンウエハー内部に回路を書き込んでいくことが初期段階の主な作業です。電子機器の性能には、このシリコンウエハーの内部にできるだけ多くの回路を書き込むことが重要。そのため、シリコンウエハー自体の性能の向上は、あらゆる電子機器の性能の向上に繋がると言うことができます。
このシリコンウエハーの開発・製造技術は、シリコンウエハーの存在が一般的になって以降、急激な発展を見せました。しかし、近年ではその勢いにも若干の陰りが見え始めており、多くの企業では新たな集積技術の開発や設備投資などが急がれています。
シリコンウエハーが使われている製品としては、パソコンやスマートフォンのCPUやメモリー、ICチップ、太陽光電池、車など、実にさまざまなものが挙げられます。そのため、これらの製品を製造しているメーカーでは、シリコンウエハーのさらなる製造技術の革新を目的とした投資を行っている場合もあります。
一方、シリコンウエハーには、非常にもろくてわずかな衝撃でも直に加わるとすぐに破損してしまう、というデメリットも。そのため、シリコンウエハーから製造されたICチップやメモリーなど製品の強度の向上を目的とした、シリコンウエハー自体の改良も今後はさらに重視されていくことが予想されています。
シリコンウエハーの製造方法
シリコンウエハーの主原料となるシリコンは、珪石という鉱物から生成されます。とりわけシリコンウエハーに使用されるシリコンは、不純物の含有量が極めてゼロに近い高純度な多結晶シリコンでなければなりません。この多結晶シリコンは、採掘された珪石を精錬・精製して高純度石英ルツボの中で溶解した後、結晶育成技術を応用して結晶化させることで生産されます。この作業によって作成されたものを「単結晶インゴット」とも呼び、これがシリコンウエハーの原型となります。
シリコンウエハーを製造するためには、この単結晶インゴットを1ミリ以下の極めて薄い状態にスライスすることで円盤状に加工します。その円盤状になった単結晶インゴットに対しポリッシングやエッチングといった処理を施すことで、その表面を鏡面化するとシリコンウエハーは完成します。
そもそも、シリコンウエハーの形状はなぜ円盤状なのでしょうか?それは、製造工程の途中できる単結晶インゴットがそもそも円柱形のため、それをスライスすると必然的に円盤状になるということがその理由です。
シリコンウエハーの大口径化
ICチップなどの製品に使用される半導体は、シリコンウエハー上にそのもととなる回路を書き込み、それを分離させることで製造されます。そのため、1枚のシリコンウエハーから数十個もの半導体を製造することができるんです。
このことから、1枚のシリコンウエハーから製造できる半導体の個数が多くなるほど、その製造コストは削減できるといえます。そのことから、半導体メーカー側にとって大きな利益があるだけでなく、半導体自体の価格を下げることができるため、より幅広い分野で半導体が使用されるようになるという業界全体としての利益も生みます。
このことにより、この業界ではシリコンウエハーの直径を大きくする「大口径化」が常に図られてきたという歴史があります。シリコンウエハーが登場した1960年ごろは0.75インチ程度だった直径も、1980年ごろには6インチ、1990年ごろには8インチにまで大きくなり、2018年現在では12インチを超えるものも。このように、シリコンウエアーの製造技術の進歩の歴史は、その大口径化の歴史でもあり、将来的には15インチ以上にまで直径が大きくなることも予想されています。
シリコンウエハーの世界シェア
2008年のリーマンショックは半導体業界にも大きな影響をおよぼしましたが、最近ではその勢いも若干持ち直してきていて、現在では世界中で多くの半導体メーカーがしのぎを削っています。つづいては、メーカーごとのシリコンウエハーの世界シェアトップ3をご紹介します。
1位 信越半導体(日本)
信越化学工業の子会社である「信越半導体」は、シリコンウエハーの世界シェア率30%強を誇ります。その社名からも分かるとおり半導体の製造に特化したメーカーであり、投資額の多さでも群を抜いています。また、今後もその投資額はますます増強していくことを念頭においていることから、今後も世界トップレベルのシェア率を維持し続けることは間違いないでしょう。
2位 SUMCO(日本)
三菱マテリアルと住友金属工業(現新日鐵住金)の合弁会社である「SUMCO」もまた、シリコンウエハーの世界シェア率は30%弱となっており、信越半導体との差は拮抗しています。SUMCOは設備投資額の高さが特徴的なメーカーであり、今後も増産投資を行うことは確実視されているため、場合によっては信越半導体と順位が入れ替わるということもあるかも知れません。
3位 グローバルウエハーズ(台湾)
シリコンウエハーの世界シェア率で3位に位置するのが、台湾の「グローバルウエハーズ」です。しかし、同社の世界シェア率は約20%となっており、ご紹介した信越半導体やSUMCOとは大きな差が開いているというのが現状です。
以上のように、シリコンウエハーの世界シェア率は上位を日本企業が独占しており、2社の合計シェア率は60%以上にもおよびます。そのため、シリコンウエハーの製造は日本のお家芸といえるほど、我が国のものづくりに対する姿勢に合っており、今後も上位の2社をはじめとした国内メーカーによる世界シェア率上位の独占が予想されます。
シリコンウエハーの進化で、暮らしがもっと豊かに
今回は、半導体の製造において欠かすことができないシリコンウエハーの特徴や製造方法、大口径化する理由、メーカーごとの世界シェア率などについてご紹介しました。
なかでもシリコンウエハーの大口径化が進むと大幅な製造コストの削減が可能となることから、結果的にそこから製造される半導体の価格も下がることが予想されます。これにより、半導体はさらに平均的な市場価格が低い商品に内蔵することが可能となるため、さまざまな家電や電子機器の高性能化が期待できます。よって、シリコンウエハーの進化が進めば、私たちの暮らしはさらに豊かになるといえるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部