24時間営業をしているコンビニや、早朝まで営業している飲食店などで働いた経験がある方もいらっしゃるでしょう。そのような働き方の場合「深夜に働き昼間は眠る」といったこともあるはずです。
実は工場にも「三交代勤務」と呼ばれる少し特殊な働き方があります。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、一体どんな働き方なんでしょうか。
三交代勤務が導入されている産業の特徴から、三交代で働くメリット・デメリットまでをご紹介します。
三交代とは?
三交代勤務は、工場での勤務でよく見られる勤務形態の一種です。大型機械設備を使って一日中稼働し続けている業界で導入されていることが多い形態ともいえます。
例えば「製鉄業界」。100mもの高さに及ぶ高炉(こうろ)と呼ばれる設備の中で、鉄鉱石やコークスといった原料を1,000度以上の高熱で熱し、鋼(はがね)製品の元となる「銑鉄(せんてつ)」を生産しています。
高炉の中で銑鉄が生産され、常にドロドロに溶けた状態の銑鉄。もし炉の運転を止めてしまえば、銑鉄は冷えて固まってしまいます。このような理由から、高炉のような設備を持つ工場では24時間に渡って常に機械を稼働させており、一般的には1日を8時間ごとに分けた三交代による交代勤務が実施されています。
このように巨大な装置を運転し続けて収益を上げる産業のことを「装置産業」と呼びます。装置産業は、機械が稼働する時間をできる限り長くし、機械を止めておく時間をより短くすることで、より多くの製品を生産することを目指します。そうすることで、継続した収益を生む構造になっているのです。
製鉄業界のほかには「大規模石油コンビナート」や、大型の製紙機械を使って連続的に生産を行っている「製紙業界」などでも三交代が採用されています。
また、もともとは交代制をとっていなかった会社が世の需要に応じて生産能力を増加するために交代制を導入するケースもあります。理由としては、新たな工場を作って人件費・設備投資に費用をかけるよりも、既存の工場に交代制を導入し、人員を増やした方がコストを低く抑えられるからです。増員し、元ある工場の設備をフル稼働させた方が利益率が高くなるのです。
ただこういった場合、三交代ではなく二交代制の導入になることもあります。二交代制では機械設備を24時間稼働させることにはなりませんが、交代制導入前と比較すれば稼働率は単純に2倍になります。近年は機械設備の自動運転と組み合わせて二交代制を導入している企業も増えてきています。
三交代勤務の勤務時間
三交代勤務では決められたシフトにもとづいて勤務体系が決められます。シフトの詳細は勤務場所によってさまざまですが、ここではその一例をご紹介します。
シフトの例
三交代制では一日を8時間ずつ、3つのコマで分けます。時間の分け方に決まりはありませんが、「6時~14時」「14時~22時」「22時~6時」といったものがオーソドックスな分け方の1つとして挙げられます。
また三交代制ではこれら3つのコマをローテーションで回していくことが多く、「早番だけの人」や「遅番だけの人」といった分け方はされないことが多いです。
1日のスケジュールの例
1日の詳細なスケジュールは職種や勤務場所の取り決めによって異なりますが、8時間の中には1時間の休憩が含まれます。休憩の取り方は1時間をまとめて取るケースや、45分と15分の2回の休憩に分ける場合などがあります。
また、休憩時間分に給料が発生するかどうかは勤務先によって異なるため、最初の面接時に確認しておくのがよいでしょう。
三交代のメリットは?
では、従業員にとって三交代制の勤務から得られるメリットとは何でしょうか。
給料や待遇面の良さ
交代勤務をする従業員には交代勤務手当・深夜手当などの各種手当が支給されます。その点でも、交代勤務のない勤務体系より待遇面で優遇されます。交代勤務の職場に変わってから給与が良くなったという人もいるでしょう。また、交代制勤務を導入している装置産業の業界では産業の構造上、倒産や減益のリスクが少なく、安定して働けるという点もメリットとしてあげられます。
残業時間が少ない
1日の時間を分割し、その時間を担当の従業員で運営できるようシフトを組むことで、通常の職場に比べて残業時間が少ない、もしくはほぼゼロの工場が多いです。勤務時間が決まっているからこそ、予定の計画や睡眠時間の確保がしやすくなります。また夜勤の場合は日中時間が空くので、普段土日の昼間なら人で混み合っているような場所でも、平日であれば自由に動き回ることができるでしょう。
三交代制のデメリット
三交代制には多くのメリットがありますが、一方でデメリットがないわけではありません。三交代制の仕事に就くことを検討している方は、以下のデメリットも覚えておくようにしましょう。
生活リズムが乱れやすい
三交代制では1週間ごとに夜勤と日勤を繰り返すなど、不規則なパターンでの勤務をしなければならないことがあります。これにより生活リズムが乱れやすくなるという点は三交代制のデメリットといえます。
プライベートな時間の使い方が難しい
例えば休日前は夜勤、休日明けからは日勤というパターンで働く場合、休日の間に夜型の生活から昼型の生活に改めなければなりません。そのため、休日のプライベートな時間の自由度が少なくなり、人によっては家にこもりがちになってしまうという点も三交代制のデメリットといえるでしょう。
疲労やストレスが蓄積しやすくなる場合もある
三交代制で不規則な勤務を続けていると疲労がたまりやすくなります。人によっては休暇中のリフレッシュがうまくできなくなり、ストレスがたまってしまうこともあるでしょう。このあたりも注意が必要です。
三交代で乱れがちな生活リズムを整える方法
適度な運動とメリハリのある生活
三交代勤務の場合、一週間のうち夜勤と日勤が混在していることがあります。そのため、普段から運動をするなどして疲れにくい体作りをすることが大切です。夜勤や日勤にかかわらず、真夜中に活動したり働いたりするため昼間眠ることもあるでしょう。もちろん初めはなかなか寝付けないこともありますし、疲れがとれにくいということもあります。
規則正しい生活をメリハリをつけて送ることや睡眠時間をしっかり確保することで、仕事の疲れをその日のうちに解消していくことが重要です。
家族とのコミュニケーション
また夜勤の場合、家族との生活時間がどうしてもズレてきます。朝食や夕食の時間をそろえてもらう、メールのように時間帯に関係なくコミュニケーションがとれるツールを活用するなど、家族にも協力してもらいましょう。うまくコミュニケーションをとるようにすれば、より気持ちよく働くことができます。
体調不良の場合はすぐに通院を
生活リズムが不規則になり体調不良を感じることがあれば、すぐに病院で診てもらうことも大切です。三交代を導入している企業は従業員に対する安全配慮義務から、三交代に従事する社員に対して健康面での配慮を最大限にしています。しかし、体調に異常をおぼえた場合は従業員側からも会社に相談しましょう。このように企業と従業員がそれぞれに健康を配慮することで、より良い職場環境が形成されていくのです。
食生活の見直し、ストレス解消を
一方、体調を整え常に健康な状態で仕事にのぞむようにするためには、食事の栄養バランスを考えることも大切です。例えば「少し疲労がたまっている」と感じた時には、「梅干し」など酸っぱいものを食べることで、成分のクエン酸が疲労を早く解消してくれます。
また健康状態を整えるためには精神面でも健やかであることを心掛ける必要があり、ストレスを定期的に解消する方法を見つけると良いでしょう。運動を兼ねた短時間の散歩なども気分を晴らすにはオススメですが、本当に疲れている時は「何もせずただ眠ること」も大切です。
徐々に慣れる三交代
三交代勤務を初めて経験する場合、食事に気を付けたりこまめに運動したりすることで少しずつ体を慣らしていくことが重要です。
三交代制は通常勤務よりも高い収入を得られるなどといったメリットがあります。収入を上げたいと考えている方はもちろん、昼間の平日に休みが欲しい!なんていう人にも三交代勤務が向いているかもしれません。
規則正しい仕事のリズムを継続し、自らの体調への気遣いや健康面への留意ができれば、無理なく効率の良い仕事と生活の両方を送ることができるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部