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外国籍人材の登用が導く未来 ─外国籍人材登用をめぐる2023年の最新動向と求められる企業の対応とは─

外国籍人材の登用が導く未来 ─外国籍人材登用をめぐる2023年の最新動向と求められる企業の対応とは─

2023/09/11公開

日本における少子高齢化の波は、様々な業種で影響を受けており、製造業界も例外ではありません。労働力確保に光が見えない事業主は、今後どう立ち向かっていけば良いのでしょうか。

そんな人材不足に悩む企業の打開策として期待されているのが外国籍人材の登用です。

本記事では、製造業界における外国人労働者の現状を交えながら、外国籍人材の登用を検討する際に知っておきたいメリットや制度について解説していきます。

外国籍人材の登用によるメリット

外国人労働者の雇用は、人材不足解消の一役を買うほか、多様性の恩恵を受けられることも大きなメリットです。

ルーツの異なる人材が新しい風を吹き込むことで、事業が革新的に展開していく可能性を秘めています。

労働力不足の解消

前述の通り、労働力不足が深刻な業種にとって、外国人労働者は大きな戦力です。日本に渡って働きに来る人材は、技能の習熟など、目的を持った意欲にあふれる若者が多く、職場の高齢化に頭を抱えている企業へ救いの一手となりえます。

また、場合によっては、外国人労働者を受け入れるため、企業側で仕事のマニュアルや労働環境を整える必要が出てきます。その結果、日本人に対してもスムーズな流れで仕事に馴染めるようになるといった好循環が生まれ、早期離職を防ぎながらの雇用促進が見込めるでしょう。

多文化共生の推進

近年、世界では急速なグローバル化が進み、日本も海外との関わりが強くなっています。

出入国在留管理庁の統計によると、日本の在留外国人数は増加傾向にあり、令和4年末には過去最多の300万人を超えました。

※表:出入国在留管理庁「在留外国人数の推移(総数)」を元に作成

日本国内でも外国人との接点が増えていく中、外国人住民と対等な関係で共に生きていくための社会づくりが課題となっています。

また、総務省は平成18年に「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、多くの地方公共団体がこのプランに則って多文化共生の推進に取り組んでいます。

多文化共生社会の推進は、外国⼈住⺠の増加・多国籍化、在留資格「特定技能」の創設といった社会経済情勢の変化を踏まえ、外国⼈住⺠を地域社会の⼀員として受け入れ、積極的な地域社会への参画を促す取り組みです。

企業が外国人の雇用を積極的に行い、適切な労働環境を作ることは、多文化共生推進に向けた取り組みの一環につながります。仕事に関わる生活支援を促すことによって、社会的差異を作らないボーダーレスな地域づくりに期待ができるようになるのです。

製造業界における外国人労働者の現状

厚生労働省は、「外国人雇用状況」の届出制度により外国人労働者の状況を把握し、労働環境の整備を進めています。

ここからは、慢性的な人手不足が続いている製造業を中心に、外国人労働者の現状を見ていきます。

外国人労働者数から見える雇用状況

外国人雇用状況の届出状況まとめ(厚生労働省)」によると、令和4年10月末時点における国内の外国人労働数は1,822,725人となり、外国人雇用状況の届出が義務化された平成19年以降、過去最多の数字となりました。

また、産業別統計では、製造業の割合が全体の26.6%と最も高くなっています。製造業に従事する外国人労働者は、現在までの15年ほどで2倍以上の数になっており、製造業界において、外国籍人材の登用が進んでいることが分かります。

※表:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」を元に作成

考えられる増減要因とは

コロナ禍の影響により一時的に減少したものの、規制が緩和された現在は、再び増加傾向にあります。増加傾向の要因としては、次のような政府が推進する制度や就労への取り組みが大きいと考えられます。

・高度外国人材や留学生の受入れ
・技能実習制度などの充実
・永住者や日本人の配偶者などの在留資格を持つ外国人の就労

次の章で技能実習制度と特定技能制度について詳しく解説いたします。

技能実習・特定技能の現状とこれから

外国人労働者の雇用を検討する際に知っておきたいのが、技能実習制度と特定技能制度です。どちらも外国籍人材の雇用に関わる制度で、対象職種に当てはまれば、制度による外国人労働者を受け入れることができます。

制度の名称からは違いが分かりにくいかもしれませんが、この2つの中身は雇用目的などの点からして大きく異なります。

技能実習制度と特定技能制度とは?

技能実習制度特定技能制度
目的「人づくり」で開発途上地域の経済発展を促すため特定の分野で人手を補うため
職種83職種
参照元:厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」
12分野(特定技能2号は2分野※)
参照元:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」
技能レベル基準なし一定以上の知識や経験、技能を有している人
在留期間最長5年通算5年(特定技能2号は上限なし)
転籍原則、不可同じ分野などの条件付きで可

※令和5年6月9日 対象分野の追加が閣議決定(参照元:出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について」

技能実習制度は実習生の技能習得を目的に雇用関係を結ぶのに対し、特定技能制度では企業側の労働力不足解消を目的に雇い入れるという違いがあります。そうした目的に合わせて制度の内容が決められているため、双方は様々な面で雇用の基準が変わってくるのです。

上記以外にも、特定技能2号では家族滞在が認められるなどの違いがあり、制限の少ない区分が存在します。ですが、そうした特定技能2号の区分は職種が少ない上、熟練したレベルの技能が必要であるなど、限られた一部の外国籍人材しか認められていません。

参照元:厚生労働省「外国人技能実習制度について」出入国在留管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

技能実習制度が廃止になる?(2023年8月現在)

2022年11月、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が設置され、翌12月より技能実習制度などに関する議論が始まりました。

2023年4月に中間報告のたたき台が出され、翌5月には中間報告書が関係官僚会議に提出されており、最終報告書は秋ごろに提出される予定となっています。

なぜ技能実習制度などの見直しが始まったのか?

議論の発端となったのは、次のような技能実習体制の問題にあります。

・過酷な労働環境
・見合っていない賃金
・短い実習期間
・原則、転籍ができない
・監理団体の不適切な監査

こうした問題点から制度改正に向けた有識者会議が発足しました。

技能実習制度の問題点をクリアにし、中長期的に日本の労働力・生活者として技能実習生を受け入れる体制を目指した最終報告書が出されることに、関係者から期待が寄せられています。

2023年4月10日開催の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第5回)」では、現行制度の廃止と実態に即した新制度の概要について、以下の中間報告を公表しています。

論点現状新制度
目的(技能実習)人材育成を通じた国際貢献人材育成機能を維持しつつ、人材確保を目的に追加
職種(キャリアパス)特定技能分野と不一致特定技能分野にそろえる
受入れ見込数の設定プロセスが不透明プロセスの透明性を図る
転籍(技能実習)原則不可緩和する方針
管理監督や支援体制管理・監督の不十分な団体・機構・機関が存在要件の厳格化により、支援機能を強化
日本語能力教育水準の定めなし就労開始前と来日後に、日本語能力の担保・向上させる仕組み設ける

参照元:法務省「中間報告書(概要)」

外国籍人材を雇用する上でのルール

外国籍人材の登用には、3つの取り決めがあります。

就労可能な外国人の雇用

外国人が日本で働くには、出入国管理及び難民認定法で就労が認められている在留資格を持っていなければなりません。事業主は在留カードやパスポートなどを確認してから、外国籍人材を雇用する必要があります。

外国人労働者の雇用管理の改善および再就職援助

海外からの労働者は、日本の慣習や知識が不十分な可能性があるため、不利な状況での就業にならないよう、雇う側が雇用管理を適切に行うことが求められます。外国人労働者が能力を充分に発揮できる環境づくりや、離職時には再就職の援助に努めることが必要です。

具体的にとらなければならない措置の内容は、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に記載されています。

外国人雇用状況の届出

日本の企業が外国人を雇う際には、外国人雇用状況の届出制度に従う必要があります。外国人労働者の雇入れと離職時に、厚生労働大臣(ハローワーク)へ必要な内容を記載して届け出なければなりません。

これは外国人労働者の安定した雇用や充実した職業生活を目的にした制度で、ハローワークは届出があった事業主に、外国人労働者の雇用管理改善や再就職支援の指導・助言を行っています。

まとめ

現在の日本社会において、外国人労働者の雇用は、直面している様々な社会的な課題を乗り越える一つの手段となり得ます。

目標を持って精力的に仕事へ向き合う外国人労働者のバイタリティは、企業を引っ張り上げる新しい風になる可能性を秘めています。彼らの多様なバックグラウンド、異なる視点はときに社内の課題に対する革新的なアプローチを提供し、新しい市場への進出や競争力の向上につながるでしょう。

適切な労働環境を整えて、外国人労働者と企業の双方が気持ち良く働ける社会を目指していきませんか。

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