溶接とは金属などをつなげる技術で、現代社会のモノづくりには欠かせないものです。
溶接にはアーク溶接などいくつかの種類があり、そのための資格もいくつかあります。
そこで今回は初心者でも取れる資格から、経験を積んだのちに取得を目指す資格までご紹介をします。
溶接の資格にはどんな種類があるの?
溶接に資格が必要な理由は、技術を手にするだけでなく、作業を安全に行うためでもあります。ガスを使ったり火花を散らしたりする安全に配慮した作業が伴う場合があり、事前にしっかりした知識を学んでおく必要があります。
溶接する物の種類や、溶接方法によって資格はいくつかあります。国家資格もあれば、民間資格もあり、それぞれ担当している仕事に合わせて必要な資格を取得するとよいでしょう。主な溶接の資格をご紹介します。
ガス溶接技能者
ガスバーナーを利用して金属をつなぎ合わせる「ガス溶接」を行うために必要とされる国家資格。これがなければ、ガス溶接をすることができず、溶接の初歩的な資格の一つとされています。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接を行う際に、指導者としてどのように作業をすすめるかなどの方法を決定し、従業員に指揮をするための資格です。ガス溶接技能者からの発展的な資格であり、実務経験を3年以上積むと受験できるようになります。
アーク溶接作業者
放電現象(アーク放電)を利用して金属をつなぎ合わせる「アーク溶接」を行うために必要な国家資格。アーク溶接とガス溶接の違いは、電気を使うかガスを使うかであり、これは溶接時の温度に影響します。ガス溶接は3,000度ほどの炎をつくるのに対し、アーク溶接は4,000度ほどの炎をつくります。溶接する素材によって、使い分けます。
アルミニウム溶接技能者
アルミニウム合金の溶接を行う専門的な知識と技能を認定する民間資格。アルミニウム溶接は、ガス溶接やアーク溶接よりも難易度が高く、自動車関連の工場などでアルミニウム溶接の需要が増加しているため、身に着けておくと有利な資格でもあります。
PC工法溶接技能者
PC工法溶接の技能を溶接協会が認定する民間資格。「PC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法」とは、建物の基本となる部材をあらかじめ工場で製造した後、現場へ持ち込み組立てる工法。この資格があれば、コンクリート組み立て建築の溶接作業の現場で活かせます。
ボイラー溶接士
ボイラーとは、ガスや石油などの燃料を燃やして水を水蒸気や温水に換える装置。この資格があれば、ボイラーの製造・改造・修理などに関する溶接をできるようになります。1年以上の溶接経験(ガス溶接など一部を除く)があれば受験できる「普通ボイラー溶接士」と、普通ボイラー溶接士免許を受けた後、1年以上ボイラーなどの溶接作業経験があれば受験できる「特別ボイラー溶接士」の2種類あります。
溶接管理技術者
溶接に関する技術と知識だけでなく、施工の計画や作業の管理を行う職務能力を持った技術者を認定する民間資格です。官公庁からの工事受注に必要な資格で、溶接技能者の上位資格とされています。「特別級」「1級」「2級」の3段階のレベルがあります。
溶接作業指導者
溶接の現場で指導者の役割を果たす、経験の豊かな溶接作業者を認定する民間資格です。工場の溶接部門の班長や、溶接工事の現場監督など「溶接作業者」「溶接管理技術者」に指示や指導を与える重要な役割をにないます。
このほかにも、「チタン溶接技能者」「ステンレス鋼溶接技能者」「プラスチック溶接技能者」など、いろんな認定資格があります。一般社団法人 日本溶接協会のホームページでどんな溶接の認定資格があるのかを確認することができます。
「溶接」をするのに「資格なし」でもできるのか?
溶接に関する資格は複数ありますが、そもそも溶接をするために資格は必要なのでしょうか。ここでは、溶接をする時に資格が必要なケースと不要なケースをご紹介します。
資格なしでもOKなケース
溶接を資格なしでもできるのは、主にDIYで溶接をする時です。はんだ付けやろう付けなどの溶接のほか、アーク溶接は資格がなくても溶接することができます。もちろん、溶接機械の購入も可能で、趣味として溶接をする人も多いのです。
アーク溶接の場合は、会社によっては資格なしでも見習いとして採用されることもあります。
資格がないとNGなケース
仕事としてアーク溶接を続ける場合には、溶接の資格が必要になります。なぜなら、会社が仕事でアーク溶接をさせる場合には、労働衛生安全法でアーク溶接の特別教育を受講させなければいけないと定められているからです。つまり、資格なしでもアーク溶接の練習はできるけど、受注した製品を作るのはNGとなります。
そもそも、溶接の仕事を継続するには、専門的な知識が必要になるので、資格を取得した方が仕事をするうえで有利になることもあるのです。
また、ボイラーの溶接やアセチレン溶接装置などの溶接をする場合も、資格がないと作業をできません。「ボイラー溶接士」「ガス溶接作業主任者免許」などの資格・免許が必要です。
どの溶接の資格を取ればいいの?難易度はどれくらい?
「溶接の資格がたくさんありすぎて、どれをとればいいのかわからない」という方のために、どんな方がどの資格を取ればいいのかご紹介します。資格によって難易度が違うので、今の自分に合う資格を見極めて受験するのがポイントです。
溶接の仕事を始めたい方はまず「ガス溶接技能者」か「アーク溶接作業者」の資格を取得しましょう。ガス溶接技能者は2日間で14時間の講習を受講すれば取得でき、アーク溶接作業者も2日間で11時間の学科と1日で10時間の実技を受ければ取得可能です。
1年くらい溶接の仕事をして、経験もついてきた方は、「アルミニウム溶接技能者」や「PC工法溶接技能者」といった専門性が高い溶接技能者を目指すのがオススメ。これは技術があるかを確かめる検定試験に合格すると、それぞれの溶接技能者を名乗ることができます。専門的な溶接技能者資格のほとんどは、基本級と専門級に分かれています。まずは基本級にチャレンジし、基本級取得後に専門級取得を目指しましょう。
溶接に関する専門的な知識を取得したら、次のステップとして「ガス溶接作業主任者」「溶接管理技術者」「溶接作業指導者」を取って現場責任者を目指す道もあれば、「ボイラー溶接士」の資格を取ってより専門的な溶接ができる「溶接のスペシャリスト」になる道もあります。
主な溶接の資格を以下にまとめましたので、参考にしてください。
初級 ★☆☆(溶接経験なし)
ガス溶接技能者/アーク溶接作業者
溶接の仕事をこれからはじめたい方はまず、これらの資格からチャレンジしましょう。この資格があれば溶接作業をすることができます。
中級 ★★☆(溶接経験1年程度)
アルミニウム溶接技能者/PC工法溶接技能者/溶接管理技術者
ある程度経験があって、溶接の知識や技術を持っている方はこれらの資格がオススメです。
上級 ★★★(溶接経験3年以上)
ガス溶接作業主任者/ボイラー溶接士/溶接作業指導者
長年溶接の仕事をやっていて、さらなるスキルアップなどより専門的に学びたい方はこれらがオススメです。
溶接の資格の取り方は?
日本溶接協会が認定する各種の「溶接技能者資格」は、各都道府県の溶接協会などの指定機関に申し込むことで受験できます。試験は「溶接の一般知識」をはじめ「溶接機の構造と操作」「鉄鋼材料と溶接材料」「溶接施工」などの学科と実技があります。
実技では、実際に溶接の経験をしっかり積んでおくのがポイント。学科については、勉強方法がいくつかるため、参考書を読んだり、あるいは事前に講習を受けたり、自分自身の勉強しやすい方法で準備をすることができます。
受験日程や受験料は資格によって異なります。月に何度も試験が行われているものもあれば、年に2回しか試験が行われないものもあります。資格を取ってみたいと思い立ったら、まずは日本溶接協会など、資格試験を主催している団体のホームページで受験日程や受験料、受験条件などを調べましょう。
溶接の資格取得に必要な費用・要件(経験有無・試験内容など)
溶接の資格取得に必要な費用や要件などをご紹介します。
資格 | 年齢 | 実務経験 | 講習内容 | 費用 |
アーク溶接作業者 | 満18歳以上 | 未経験可 | ・学科11時間(2日間) ・実技10時間(1日) | 10,000円~23,000円 |
ガス溶接技能者 | 満18歳以上 | 未経験可 | ・学科+実技14時間(2日間) | 14,000円~20,000円 |
ガス溶接作業主任者 | - | - (目安として3年以上) | ・3時間20問の試験 | 6,800円 |
アルミニウム溶接技能者(基本) | 満15歳以上 | 実務経験 1ヶ月以上 | ・学科試験+実技試験 | 7,700円(学科1,210円/実技6,490円~)~ ※実技の費用は、区分によって異なる ※認定料4,510円が必要 |
アルミニウム溶接技能者(専門) | 満15歳以上 | 実務経験3ヶ月以上かつ、基本級有資格者 | ・学科試験+実技試験 | 同上 |
普通ボイラー溶接士 | - | ガス溶接・自動溶接を除く溶接作業を1年以上 | ・学科試験(40問2.5時間) ・実技試験(1時間) | 25,700円(学科6,800円/実技18,900円) |
特別ボイラー溶接士 | - | 普通ボイラー取得後、溶接実務 1年以上 | ・学科試験(40問2.5時間) ・実技試験(1時間) | 28,600円(学科6,800円/実技21,800円) |
溶接作業指導者 | 満25歳以上 | JISまたは公的団体の溶接資格および実務経験 | ・学科講習3日間 ・講習修了後、学科試験 | 54,050円 |
溶接管理技術者 | 理大卒業及び要実務経験 | - (目安として3年以上) | ・筆記試験Ⅰ/Ⅱ ・口述試験 | 48,400円~53,900円 ※登録料として19,800円必要 |
上記の費用は、あくまでも目安です。受講するタイミングによっては、受講料の値上げや値下げなどによって費用が異なる可能性があります。
また、アーク溶接作業者の試験は、インターネット申し込みで割引があったり、特別ボイラー溶接士の試験では学科の免除制度があったりします。個人で申し込みをする場合は、きちんと確認しておきましょう。
なお、PC工法溶接技能者の試験は、平成29年度で取りやめとなっています。
基礎から専門へ、広がる資格
溶接の資格はたくさんあるので、自分のレベルにあった資格に挑戦することが大切です。初めて資格の取得を考える方は、ガス溶接やアーク溶接のような基本的な溶接の知識を調べてみてください。キャリアアップとして資格の取得を考えている方は、基礎的な資格をはじめ、専門的な資格の取得も視野に入れておきましょう。
制作:工場タイムズ編集部