「計装(けいそう)」という言葉を聞いたことがありますか?計装に関する仕事をしている人以外、あまり聞いたことがないかもしれませんね。
計装の「計」は計測器を、「装」は装備をするという意味です。つまり工場などに計測器を装備するのが計装ということです。
では、何を目的に計装し、具体的に計装によってどんなことが行われているのでしょうか? 今回は、計装についてご紹介します。
計装って何? まずは「計装とは何か?」についてお伝えします。
計装とは?
上でも触れたように、計装とは計測器を装備することです。自動車にもスピードメーターや燃料計が装備されていますよね。ドライバーはそれらをチェックしながら安全運転に努めるわけです。それは工場でも同じです。工場の中には24時間休まずに機械が動いているところがたくさんあります。そうした機械がトラブルなく安全に動いているかどうかをチェックするために、温度計や圧力計などいろいろな計測器が装備されています。なかでも、製品をラインで大量生産する大規模な工場では、機械を短時間停止させるだけでも全体の生産性に大きな影響が及んでしまいます。そのため、計装工事を行って工場に計測器を装備し、安全に稼働しているかどうかを測定することが計装の役割なのです。
計装の具体例
計装の具体例は次のようなものです。
・工場や施設内にある電気設備や機械を電線やケーブルで結び、中央監視装置から遠隔操作で運転や停止を行う。
・生産物の入ったタンクの圧力や温度を測定して、自動的に加熱をしたり制御弁を開閉する。
・液体材料の流量を常時測定し、自動で目的の流量になるように弁やポンプを自動制御する。
・室内の温度を一定に保つために、空調の冷凍機や膨張弁、ヒーター、ファンコイルなどを自動で制御する。
計装の資格「計装士」について知りたい!
次に、計装士という資格についてお伝えします。計装士は計装工事の際の管理監督を行います。
計装士とはどんな資格?
計装士とは「一般社団法人 日本計装工業会」が認定する民間資格です。具体的には、自動制御機器など計測器の取り付けを行う工事や、それに関連する配線・配管工事の設計や監督を行います。計装士の資格は建築施工会社や電気設備会社といった計装工事を行う会社で実務経験を積んだ人が取得することができます。計装士の資格を取得して計装工事の現場を監督する立場になれば、現場で工事にあたる従業員だったときよりも高い給与を得られるようになります。
受験資格
計装士の資格には1級と2級があり、計装士試験に合格すると資格を取得することができます。
2級の受験資格
計装工事の設計・施工の実務経験年数2年以上
1級の受験資格
計装工事の設計・施工の実務経験年数5年以上(指導監督的実務経験年数1年以上を含む)
計装士試験は一定の実務経験を積むと受験資格を得られます。資格を取得したい人は、まず現場の従業員として経験を積み、業務全体の流れを把握するところからはじめましょう。
試験内容と合格基準
2級・1級ともに学科試験(A+B)と実地試験の両方があります。試験内容は下記の通りですが、2級と1級で難易度が違います。
【2級学科A】
計装一般
計器
計装設計
検査と調整
【2級学科B】
工事施工法
安全衛生
法規
※1級には【学科A】に「工事の積算」が追加される。
【1・2級実地試験】
工事計画
材料並びに製品の判定
計装設計
計装工事設計
制御ロジック
検査調整
安全衛生
計装工事材料積算
計装工事工数積算
合格基準は各級ともに55~65%以上の正解率となっています。試験を受けたい人は「日本計装工業会」に問い合わせてみるのが良いでしょう。
計装のお仕事とは?魅力と向いている人
最後に、計装の仕事内容と、計装の仕事に向いている人についてお伝えします。計装の仕事は幅広くあります。
計装の仕事内容
企業によって呼び方は多少違いますが、一般的に計装工事など計装全般に関わる業務を行う人のことを「計装エンジニア」と呼びます。計装エンジニアの仕事内容としては、次のようなものがあります。
・計装制御システムの計画立案
・変電設備や電気室などの配置計画
・計器盤類配置、配線、計装設置などの計画
・外注設計者への作業指示、取りまとめ
・計装機器の試運転やメンテナンス
計装の仕事に向いている人
機械設備や電気機器に興味があることは大前提です。さらに、配線や配管に関心がある人、現場で一つのモノをつくり上げていくことが好きな人、細かい作業が苦にならない人、規模の大きな仕事をしたい人、手に職をつけたい人に向いている仕事です。また、そこが計装の仕事の魅力と言えるでしょう。ひと口に計装といっても産業、化学、医薬など、多くの業種がいろいろな計測器を必要としていますので、計装エンジニアとして働けば、それだけたくさんの人と関わりを持つことになります。そのため、最低限のコミュニケーション力を持っていたほうが良いでしょう。海外展開をしている企業の場合、海外の大型工場で計装工事を手掛けることもあります。海外で働くことに興味がある人は仕事を楽しむことができるでしょうし、そこに魅力を感じる人もいると思います。
工場の安全・省エネと生産性向上に欠かせない計装のお仕事
計装は、工場の安全性や生産性の向上という点だけでなく、省電力・省エネルギーにも大きく関係しているため、いろいろな工場で計装工事が進められています。さらに、工場だけでなく、電気設備会社や建設会社などでも計装エンジニアが求められているので、需要の大きい仕事と言えます。今後さらに、計装士という資格の社会的地位も上がっていくことでしょう。計装士を目指す人は、日本計装工業会が販売しているテキストを読んだり、同会が開いている講習会に参加して勉強するのが良いでしょう。
制作:工場タイムズ編集部