製造業の求人情報を見ると、品質保証や品質管理といった職種の募集がしばしば見られます。
この2つの職種はよく似ている仕事ですが、全く同じ仕事をしているわけではありません。
今回は品質管理と品質保証の人にオススメの資格をご紹介しましょう。
そもそも品質保証や品質管理の「品質」とは?
品質とは、「製品やサービスなどをほかのものと比較してみたときに分かる特徴のこと」です。とくに、製品やサービスを購入したお客さんが満足するレベルであるかという意味合いが強いです。お客さんが納得できる製品やサービスであれば「品質が高い」と言えます。例えば、価格が安いのに製品が丈夫で長く使えるものだと「品質が高い」または「品質が良い」と言われます。
品質の決まり方は、製品の種類によって違います。機械であれば、「故障しないか、安全に使えるか、操作しやすいか、使いやすいデザインか」などで決まります。食品であれば「おいしいかどうか、安全かどうか、食欲をそそる見た目か」などが品質を決める基準になります。そしてサービス業の場合、「設備は清潔か、心地良い対応をしてくれるか、素早い対応か」などで決まります。
品質保証と品質管理の資格はあるの?
企業の中で品質を守る役割が「品質保証」と「品質管理」です。「品質保証」には特定の資格や検定などはありません。一方、「品質管理」には品質管理検定という資格があります。この品質管理検定を取得しておくと、品質保証の仕事をしている人にとってもプラスになります。まずは品質管理検定についてご紹介したのち、どちらもこの資格があると良い理由をご説明します。
品質管理検定(QC検定)とは
品質管理検定・QC検定とは、きちんと品質の管理を行えることを示す資格です。品質の管理に関係する知識を学ぶだけではなく、仕事の中で発生した問題を積極的に解決できる力を身につけることを目的としています。
試験は3月と9月の年2回実施されています。製造業やメーカーに勤務している人が多く受験します。資格には1~4級までのレベルがあり、初心者の人から品質管理を既に行っているベテランまでいろんなレベルの人が受験します。これから品質管理の仕事をする人は、4級を受験してみましょう。
品質管理検定の大切さ
日本の製品の品質は世界的に高く評価されていますが、不良品に対する苦情や製品のリコールなどがゼロなわけではありません。製品に大きな不具合が見つかった場合、企業はお客さんから製品の回収(リコール)が必要となります。品質管理はそういった不具合が事故やケガに繋がること防ぐために活動します。また、食品などで原材料に嘘が書かれていたり、異物が混じっていたりする問題は、メディアに大きく取り上げられていますよね。そういった事故を無くすためにも品質管理の役割は大切なのです。
品質保証の仕事でも品質管理検定は意味ある?
品質保証と品質管理
ここで品質保証と品質管理のそれぞれの役割についてみていきましょう。
品質保証とは、生産されたあとに製品やサービスがお客様の満足する基準に達しているかどうかを確認する仕事です。一方品質管理とは、品質が悪いものをできるだけつくらないように製造方法や生産ラインを根本的に改善していく仕事です。つまり、品質保証は品質管理の仕事の一つとして見ることができます。
品質保証が品質管理検定を受ける必要は?
品質保証の仕事を行っている人にとっても、品質管理検定を受けることはプラスになります。大きな企業であれば、品質保証部門と品質管理部門が別々にある場合があります。しかし中小企業になると、両方の業務を一緒に行うところが多いです。品質保証の業務を主に行っていても、品質管理の業務を任されることがあります。そのため、品質管理検定の資格を持っていればその知識が役に立ちます。また転職する場合には、品質管理検定の資格があれば品質管理の全体的な知識を持っていることになるので、それぞれの部署に分かれている企業でも採用されやすくなることがあります。
品質保証の仕事をしている人で、品質管理検定を受験するのであれば2級を受けるのがオススメです。2級試験は、品質管理の他にも品質保証など品質に関わる部署で仕事をしている人向けの試験です。企業の品質に関する問題を解決するために、リーダーシップを発揮できるかを確かめる試験です。
品質保証・品質管理に役立つ資格一覧
品質保証・品質管理の仕事に役立つ資格をご紹介します。
QC検定4級
品質管理検定(QC検定)4級は、独特の用語や7つ道具など、品質管理で必要な言葉を覚えれば、ほとんどの人が合格できます。日本規格協会のホームページでは、4級のテキストを無料で公開しているので、利用してみましょう。
・費用:3,960円
・難易度:★☆☆☆☆
・取得にかかる時間・日数:20時間ほど
QC検定3級
QC検定3級は、4級より難しくなるものの、それほど難しい試験ではありません。試験はマークシート方式で、「品質管理の実践」「品質管理の手法」から出題されます。品質保証・品質管理を仕事にする場合は、3級を取得しておくとよいでしょう。
・費用:5,170円
・難易度:★☆☆☆☆
・取得にかかる時間・日数:30時間ほど
QC検定2級
QC検定2級は、「手法」「実践」から出題されます。試験は90分のマークシート方式で行われますが、「手法」では計算式を使った問題があるので、基本の計算式を覚えるのが、合格の秘訣です。
・費用:6,380円
・難易度:★★☆☆☆
・取得にかかる時間・日数:100時間ほど
QC検定1級
QC検定1級は、90分間のマークシート方式の試験と30分間の論述が行われます。準1級と認定された後に合格すると、一次試験が免除になり、論述のみの試験となります。基本的な専門知識だけではなく、論理的に説明できる力も必要なので、実務経験が長い人の方が有利といわれています。
・費用:11,000円(一次試験免除の場合は8,800円)
・難易度:★★★☆☆
・取得にかかる時間・日数:約300時間
QCサークル指導士資格認定制度
QCサークル指導士資格認定制度は、QCサークル活動の普及や発展を目的として設けられた制度です。6日間の講習を受けた後に、認定試験を受ける必要があります。少し難しい試験のため、合格率はあまり高くはありません。
・費用:132,500円
・難易度:★★★★☆
・取得にかかる時間・日数:6日間(実務経験2~3年以上)
マネジメントシステム監査員検定
マネジメントシステム監査員検定は、マネジメントシステムの監査員の力量を把握したり、向上させたりすることを目的に設けられた検定です。
・費用:11,550円(中級)、14,300円(上級)
・難易度:★★★☆☆
・取得にかかる時間・日数:経験者で約80時間
※各費用は2023年7月時点のものです。最新の情報は各団体の公式ページを参照してください。
品質保証の仕事に向いているのはどんな人?
品質保証の仕事に向いている人の特徴をご紹介します。
コミュニケーション能力が高い人
品質保証の仕事に向いているのは、コミュニケーション能力が高い人です。品質保証の仕事は、様々な部署とやり取りすることが多く、1人だけで原因調査や対策をするのは難しいものです。
また、社内の人間だけではなく、顧客の対応が必要になることもあり、初対面の人とも普通に接することができる人が好まれます。どんな相手でもよい関係を築ける人であれば、物事がうまく進み、周囲の人からの協力も得られるでしょう。
物事を論理的に考えられる人
物事を論理的に考えられる人も、品質保証に向いています。品質保証の仕事は、会社に関するさまざまな品質問題を取り扱うからです。もし、自分の好みや独自の判断で対処してしまうと、事態を悪化させる恐れがあります。
品質保証は、問題発生の原因や対策を論理的に保証できると証明することも仕事の1つです。そのため、主観や感情で判断するのではなく、問題解決のために数字や事実を見て冷静に判断する能力が求められるのです。
観察力がある人
品質保証は、作った製品に不具合・欠陥がないかを調べて、トラブルを未然に防ぐ仕事も担っています。そのため、製造過程はもちろん、出荷されて販売されるまで、すべての工程を観察してミスや異常に気づける力が必要なのです。
問題が発生した場合でも、解決・対策のために、書類や現場などを細かくチェックする必要があります。注意深く観察する能力があれば、みんなが納得できる対策を講じることもでき、再発防止にもつながるのです。
責任感が強く、打たれ強い人
責任感が強い人も、品質保証に向いている人の特徴です。品質保証の仕事は、社内の各部署や取引先、顧客からのクレームなどに対応し、問題を解決し、とりまとめるのが仕事です。会社に関わる業務への影響力が強いため、責任感を持って取り組める人じゃないと務まりません。
また、どんな業種であっても、クレーム対応はきつい仕事です。厳しく、きつい言葉を言われるたびに落ち込んでいては、ストレスが溜まって仕事を続けられなくなってしまいます。そのため、打たれ強い性格でストレスをうまく発散できる人が品質保証に向いているといえます。
身につけておきたい品質の知識
役割や仕事内容に違いはありますが、品質保証や品質管理はより良い製品を提供するために欠かせない職種といえます。どちらの業務を行うにしても品質管理検定の資格を持っていれば、製品不具合の見落としを防ぐことに役立つでしょう。品質管理検定は年に二回受験するチャンスがあります。興味を持った人は4級を取得してみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部