私たちの身の回りには、コンロや給湯器のようにガスを燃料とする機器が数多くあります。しかし、その燃料となるガスの種類やガスを取り扱うための資格についてはよく知らないという方も多いことでしょう。
今回は、私たちの身の回りにある機器の燃料にもなることが多いガスの中でも、「高圧ガス」についてその種類や特徴、およびそれを取り扱うことができる「高圧ガス製造保安責任者」の資格をご紹介します。
高圧ガスとは??
私たちの身の回りで使われているガスの中にはいくつかの種類があり、そのうちのひとつを「高圧ガス」と呼びます。高圧ガスとは、ガスの中でも大気圧(1気圧)よりも高い圧力を伴うもののことを言います。高圧ガスの多くは圧力を高めるために、高い圧力を外部から加え圧縮された状態になっています。
ただし、日本国内で高圧ガスと言えば、高圧ガス保安法で決められた定義に当てはまるものを指すのが一般的。その定義とは、「常温で1MPa(約10気圧)以上になるアセチレンガスを除いた圧縮ガス」、もしくは「常温で0.2MPa(約2気圧)の液化ガス」となっています。例えば、小型のカセットボンベで使われるガスはこの定義を満たさないため、厳密にいうと高圧ガスではありません。
高圧ガスに該当する具体的なガスの種類としては、都市ガスとしても知られるメタンを主成分とした液化天然ガスや、「プロパンガス」の名称でも知られるプロパンやメタンを主成分とした液化石油ガスがあります。また、私たちの生活に深いかかわりがあるLPガスもまたプロパンガスであることから、この高圧ガスに含まれます。
一般的な感覚としてガスは火災や爆発事故を引き起こす可能性を秘めた危険物としても知られていることから、その取り扱いにおいて資格が必要なことは知っている人も多いでしょう。
しかし、高圧ガスはその種類も多いことから、種類によって扱える資格が異なるという特徴もあります。そのため、高圧ガスの取り扱いができるようになる資格の取得を目指す際には、将来的に就職したい業界をはっきりとさせた上で取得する資格を決めるようにしましょう。
高圧ガスを扱える資格
高圧ガスを取り扱える資格は対象となる機械の種類によって細分化がされていますが、それらをまとめて「高圧ガス製造保安責任者」と呼びます。この資格を取得すると高圧ガスを取り扱う業務に携われるようになり、その業務を行う事業所への就職でも有利となります。
この「高圧ガス製造保安責任者」の資格を取得するためには、国家試験である高圧ガス製造保安責任者試験に合格し、高圧ガス製造保安責任者免状の交付を受けなければなりません。この試験は経済産業大臣と各都道府県が実施しており、毎年11月に全国で行われます。
また、受験資格は一切設けられていないことから、年齢、学歴、実務経験を問わずだれもが受験することができます。講習による十分な対策は必要であるものの、ほかの国家試験に比べると若干ハードルが低い試験となっています。
高圧ガス製造保安責任者の種類
「高圧ガス製造保安責任者」の資格は、取り扱う機器の種類をはじめとした条件にもとづいて細分化がされています。続いて、この資格を「化学および機械に関する資格」と「冷凍機械に関する資格」の2種類に分け、それぞれに当たるものをご紹介します。
化学および機械に関する資格
・甲種化学責任者
石油化学コンビナート高圧ガス製造事業所において、製造とその保安を統括する業務に携わる人に必要な資格を「甲種化学責任者」と呼びます。この資格は高圧ガスの種類と業務を行う製造施設の規模に制限がないため、化学責任者の資格の中でも最上位に位置します。よって、この有資格者は保安技術管理者や保安主任者、保安係員といった役職にも選任できます。
・甲種機械責任者
甲種化学責任者と同様に石油化学コンビナート高圧ガス製造事業所で製造とその保安を統括する業務に携わる人に必要な資格としては「甲種機械責任者」もあります。この資格は機械に特化するという点で甲種化学責任者とは区別されていますが、取り扱える高圧ガスの種類や製造施設の規模をはじめとした条件に違いはありません。
よって、甲種化学責任者の資格を持っているが、転職に伴って甲種機械責任者の資格が必要になるといった特殊な場合を除き、両方を取得する必要はないでしょう。
・乙種化学責任者
乙種化学責任者は甲種化学責任者の一段階下位の資格となっており、取り扱える高圧ガスの種類に制限はないものの、製造施設の規模によっては保安技術管理者に選任できないといった制限はあります。また、保安係員に関してはそれまでに取り扱ったことのある種類のガスのみにおいて選任できます。
・乙種機械責任者
乙種機械責任者に関しても基本的なことは乙種化学責任者と同じですが、保安係員に選任する際の制限がないという点は乙種化学責任者との大きな違いとなっています。
・丙種化学(液化石油ガス)責任者
乙種化学責任者のさらに一段階下位の資格である「丙種化学責任者」は、2種類に分類することができます。このうち「丙種化学(液化石油ガス)責任者 」はLPガスの製造事業所、充てん事業所、LPガススタンドなどで業務に携われます。
また、保安技術管理者に選任する場合の制限はあるものの、保安主任者および保安係員に選任する場合の制限はありません。
・丙種化学(特別試験科目)責任者
「丙種化学責任者」のうち、石油化学コンビナート製造事業所、充てん事業所、天然ガススタンドなどで業務に携われる資格を「丙種化学(特別試験科目)責任者」と呼びます。また、この資格の保有者は保安係員のみに選任ができます。
冷凍機械
・第一種冷凍機械責任者
食品などの冷凍にかかわる高圧ガスの製造施設で、その保安に携わる場合も高圧ガス製造保安責任者の資格が必要です。このうち「第一種冷凍機械責任者」は冷凍能力の際限なしにこの業務に携わることができ、冷凍機械責任者の資格の中でも最も与えられた権限が多い資格となっています。
・第二種冷凍機械責任者
「第二種冷凍機械責任者」の資格保有者もまた、食品などの冷凍にかかわる高圧ガスの製造施設で、その保安に携わることが認められていますが、1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設に限るという制限が設けられています。よって、規模の大きな施設の場合、この資格を持っているだけでは保安業務に携われないことがあります。
・第三種冷凍機械責任者
もっとも下位に位置する「第三種冷凍機械責任者」もまた、食品などの冷凍にかかわる高圧ガスの製造施設で、その保安に携わることが認められていますが、1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設に限定するという制限が設けられています。そのため、この資格だけでは小規模の施設だけでしか保安業務にまで携われません。
目標を立てて資格取得を目指そう
高圧ガスの製造・保安に携わる上で必要な「高圧ガス製造保安責任者」の資格は、取り扱う機械の種類によって分けられています。よって、同じ高圧ガス製造保安責任者の資格でもその種類によって就職できる業界は異なります。
このことから、取得した資格を活かして就職先を決める場合は、最初に就職を希望する業界を決めた上で、その業界に合った種類の高圧ガス製造保安責任者の資格取得を目指すようにしましょう。
制作:工場タイムズ編集部