ものづくりの現場で行われる接合方法には、さまざまなものがあります。中でも一般的に知られているのは、「アーク溶接」や「スポット溶接」といった溶接接合です。しかし、これらの溶接を行うには専門的な技術が必要なため、製品によってはより簡単に作業ができる「リベット接合」が採用されることも少なくありません。

リベット接合は、溶接に比べて比較的習得しやすく、初心者でも安心して取り組める技術です。今回は、ものづくり業界に興味がある方に向けて、リベット接合の仕組みや溶接との違い、メリット・デメリット、そしてどんな現場で活かせるのかをご紹介します。

リベット接合とは?

リベット接合の仕組み

リベット接合は、2つの板状の母材(部品)を重ね、両方に同じ位置に開けた穴へ、頭の大きな釘のような形をした金属製のリベットを差し込み、その先端をつぶすことで部材を固定する接合方法です。

この「つぶす」工程は、リベット接合の中でも特に重要です。リベットの先端を穴から抜けないようにしっかりと変形させることで、2つの部材が強固に結びつきます。

この作業には、油圧プレス機などの強い圧力を利用してリベットを熱さずに取り付ける「冷間」と、リベットを加熱してからハンマーで叩きつける「熱間」の2つの方法があり、製造する商品の性質によって使い分けられています。

リベット自体には、接合部をしっかりと固定するための十分な強度と、つぶすことができる加工のしやすさが必要です。そのため、リベット接合の現場では、主に「」「ステンレス鋼」「アルミニウム」「」といった素材が使われます。

リベット接合の活用事例

「リベット」と聞くと、少し古風な技術に感じるかもしれませんが、実は私たちの身近な製品にも使われています。例えば、カバンの持ち手や衣類の装飾として使われる鋲(びょう)も、リベットと同じ加工方法です。

過去には、高い強度が求められる航空機や橋の建設で主要な接合方法でした。現在では、高性能なボルトや溶接技術の向上によって使われる機会は減りましたが、今でも熱に弱い材料(樹脂など)の接合や、異なる素材同士の接合、そして修理や分解が前提となる製品など、特定の用途では欠かせない技術として活躍しています。

溶接との違いは?リベット接合の長所・短所

溶接とリベット接合は、それぞれ異なる特性を持っています。それぞれの違いを理解することで、なぜリベット接合が今でも多くの現場で必要とされているのかがわかります。

リベット接合の長所

  • 作業が簡単で習得しやすい:アーク溶接のような専門的な技術は不要で、基本的にリベットをかしめる(つぶす)作業が中心です。そのため、未経験者でも比較的短期間で技術を習得でき、ものづくり業界への一歩を踏み出しやすいでしょう。

  • 母材へのダメージが少ない:溶接のように母材を溶かして接合する方法では、熱が加わることでひび割れなどを起こす恐れがあります。一方、リベット接合は部分的に加熱する、もしくはまったく熱を加えないため、母材を傷める心配がほとんどありません。

  • 緩みにくく、安全性が高い:ネジやボルトを使った接合は、振動によって徐々に緩む可能性がありますが、リベット接合は一度固定すれば基本的に緩むことがなく、高い安全性を保てます。

  • 分解・修理が比較的容易:溶接した製品は、分解や修理が困難です。リベット接合であれば、ドリルなどを使ってリベットを破壊すれば比較的簡単に分解できるため、メンテナンス性にも優れています。

リベット接合の短所

  • 見た目に凹凸ができる:接合部分にリベットの頭が突起として残るため、見た目が重視される製品には向いていない場合があります。

  • 製品が重くなる場合がある:金属製のリベットを多数使用するため、製品全体の重量が増してしまうことがあります。

  • 部材の形状を選ぶ:基本的に板状の部材を接合するのに適しており、パイプ状の部材など、複雑な形状の接合には不向きです。

リベット接合の方法

最後にリベット接合の方法をさらに詳しく見ていきましょう。

1. 母材を重ね合わせて穴を開ける

リベット接合をする前には接合する2つの母材を重ね合わせた上で、リベットを差し込む箇所に穴をあけます。この際、締結するリベットの規格に合った大きさの穴をあけることが、強度を高める上でも重要となります。

リベットの規格は通常パッケージに記載されていますが、規格が分からない場合にはリベットの「胴」の部分が通り、頭の部分がひっかかるようにサイズを調整しながら徐々に穴を広げていくという方法を取るとよいでしょう。

2. リベットを穴に差し込む

母材に穴をあけたら、続いてその穴にリベットを差し込みます。この際に2つの母材の間や母材とリベットの間にズレができてしまうとしっかり結合できなくなってしまうので、母材とリベットが隙間なくくっついていることを確認しましょう。

3. 専用工具でリベットを叩きつぶして固定する

母材の穴にリベットを差し込んだら、リベットの余った部分を専用工具で叩きつぶして固定します。この際に使用する工具のことを「ハンドリベッター」と呼び、使用する前にはリベットのサイズに合ったノーズピースを装着します。

また、このハンドリベッターを使用する際には付属の専用工具やレンチを使って固定する必要があり、リベット接合ではこのハンドリベッターの使い方をよく理解しておくことも不可欠です。

まとめ

リベット接合は、かつて航空機や橋で広く用いられていた歴史ある技術です。そして現在も、その「手軽さ」「安全性」「メンテナンス性」といった特性を活かし、さまざまな現場で必要とされています。

リベット接合は、現代の溶接技術が発展した今でも、なぜ特定の場面で必要とされるのかを教えてくれます。このように、製造現場の技術にはそれぞれ深い理由と役割があります。その知識を持つことは、きっとものづくりの世界で活躍するための強みとなるでしょう。

工場・製造業の求人なら「工場ワークス」

未経験から始められる工場求人や、寮付き・高収入などの条件で探せるお仕事が多数掲載中。
製造業専門の求人サイト「工場ワークス」なら、あなたに合った職場がきっと見つかります!