TOP > 技術 > アーク溶接とは? 基本の手順と上手く仕上げるコツ、溶接時の注意点

アーク溶接 コツ

アーク溶接とは? 基本の手順と上手く仕上げるコツ、溶接時の注意点

2015/07/11公開 / 2023/09/04更新

私たちの生活に身近なスチール缶、傘立て、車など、主に金属同士をくっつけるモノづくりには「溶接」という技術が使われます。

モノづくりの現場である工場には必ずといっていいほど「溶接のお仕事」があります。また最近はDIYが流行っていることもあり、自宅で溶接をしているという方もいるでしょう。

しかし溶接を上手にやるためには「ちょっとしたコツ」が必要です。

そこで今回は、溶接のコツについてご紹介します。

溶接の基礎知識

溶接とは、「2つの金属製の母材を高い電圧の電気などを活用して加熱し、接合する部分を溶融した後に2つがくっついた状態で冷やして固まらせ、接合させる方法」のことをいいます。

この溶接には大きく分けて「溶接」「圧接」「ろう接」の3種類があり、このうち最もよく知られているのが「溶接」です。

溶接の中でも「アーク溶接」は、特に頻繁に行われている溶接方法のひとつです。またアーク溶接には、使用するガスや機器の性能が異なる「被覆アーク溶接」や「TIG溶接」「炭酸ガスアーク溶接」などの種類があり、溶接する母材の性質などに応じて最適なものを選べるようになっています。

続いて、溶接には母材を溶かさない「圧接」という方法があります。この方法ではプレス機などを使用して2つの母材に圧力をかけて接合し、溶接部の面積が広い場合などで行われます。溶接というと金属を溶かすというイメージを持ちがちですが、金属を溶かさずに接合する圧接もまた溶接のひとつに数えられるため、忘れずに覚えておきましょう。

「ろう接」は加熱するという点では溶接と似ていますが、母材ではなく母材よりも融点の低い溶加材を加熱して溶かした溶融金属を2つの母材の接合点に付着させ、接合させるという点で大きな違いがあります。

アーク溶接のメリット

アーク溶接には、シールドガスとして「炭酸ガス」や「アルゴン」などのガスを使用する方法もありますが、ガスを使わない方法もあるため、作業中のガス中毒やガスへの引火事故などの危険性を少なくできるというメリットがあります。

また、アーク溶接ではピンポイントで加熱し、母材をくっつけることができます。そのため、圧接とは違って小さな部品の溶接にも向いているという点も、アーク溶接のメリットといえるでしょう。

一方、アーク溶接で使用する溶接機は比較的安価なものが多く、規模の小さな事業所などでも複数台所持しているということが少なくありません。このことから、アーク溶接は複数台を同時稼働させ、作業の効率化を図れるという点でもメリットがあります。

工場ワークスで溶接の求人をみる

アーク溶接の方法とコツ

アーク溶接に必要な準備

実際に溶接をやるためには、溶接に使う機械や道具をきちんとメンテナンスしておくことで、スムーズに作業が開始できます。上手な溶接をするために、まずは道具の整備をしましょう!

アーク溶接に使う道具としては

・アーク溶接機
・溶接棒
・遮光マスク
・革の手袋
・エプロン等の防護服
・溶接のカスをたたき落とすためのハンマー

などがあります。

この中でも溶接機のメンテナンスは、特に重要です。溶接機は、溶接時の金属を溶かす作業に必要な高温や高圧を発生させる機械です。また、多くの種類がありそれぞれ特性があります。しかし、どの種類の溶接機でも共通して手入れするべきポイントは、電源、ケーブル、ワイヤー送給装置、溶接トーチです。作業前に、それらの道具を点検しましょう。

異常な音や臭いが発生していないか、大きいキズがついていないかなどを、確認しておくことが大切です。整備をしっかりと行うことで作業中に機械が止まることも減り、溶接の不良を防ぐことができます。

アーク溶接の方法

アーク溶接のコツを説明する前に、アーク溶接について簡単にご説明します。

「アーク」とは、簡単に言うと電気のことです。つまり、アーク溶接では電気の力を使って金属同士を溶接します

まず、「溶接棒」と呼ばれる棒を持ち電流を発生させます。次に、この棒をくっつけたい金属部分に当てます。溶接棒で金属を数回叩くと突然ボッーという音がして電流が飛び始めます。その電流の熱によって金属を溶かし、溶接をするわけです。

適切なアーク溶接ができていれば、かなりの強度で金属同士をくっつけることができます。溶接は、接着剤を使った接着とは比べものにならないほどの強度が出ます。

しかし、溶接時は強い光が発生するため、溶接したい部分が見えにくくなり、作業が難しくなる場合もあります。また、強い光が発生する作業時は、遮光マスクを使用することで目を守り、安全な作業をすることができます。

アーク溶接のコツ

では、うまく溶接するにはどういう点に、注意すればよいでしょうか。

アーク溶接には、電流の調整が重要です。電流が小さいがために、金属がしっかりと溶けないケースがよくあります。逆に電流が大きいと、金属が溶けて穴があいてしまいます。また、溶接棒には太さがいろいろあります。太さによっては電流が不安定になり、溶け込みが浅くなってしまう場合もあります。

そのようなことを防ぐためのコツは、溶接棒と金属の距離感を絶妙に保つことです。溶接棒をくっつけすぎず、金属に張り付つかないようにしましょう。電流を保つために金属から離しすぎず、絶妙なバランスをとります。溶接棒と金属との間にあるいい感じの距離感が分かったら、それをしっかりと覚えましょう。そして、その距離感をしっかりと意識し、溶接棒を動かします。その際、斜めに滑らせるように当てるのがコツです。

溶接がうまくいったかどうかは「溶接痕(ようせつこん)」をチェックしましょう。鉄の管などに、貝殻みたいな模様が連続してついているのを見たことはありませんか? これが溶接痕です。溶接痕が、貝殻のような模様で出ていれば合格です!

アーク溶接をする際の注意点

アーク溶接では以下の点に注意し、作業を効率的に進めるだけでなく、事故を未然に防ぐことにも努めましょう。

溶接方法に合った溶接機を使う

アーク溶接には最もオーソドックスなものから、TIG溶接、半自動溶接に至るまでさまざまな方法があります。これらにはそれぞれに適した使用シーンがあることから、溶接方法に合った溶接機を使うことは作業の効率化と安全性を高める上で欠かすことができません。

必ず遮光マスクを付ける

アーク溶接時には火花が飛び散るだけでなく、瞬間的に強い光が発せられるため、それらから目を保護しなければなりません。遮光マスクはそのために必要な用具であり、作業を始める前に必ず装着していることを確認しましょう。

溶加材などの消耗品は多めに用意しておく

アーク溶接では溶加材を使用することもありますが、この溶加材は消耗品であるため作業途中でなくなってしまうこともあるかも知れません。しかし、アーク作業中は気軽に持ち場を離れることができないため、消耗品はあらかじめ多めに用意しておくようにしましょう。

工場ワークスで溶接の求人をみる

アーク溶接の安全性・効率性を高めるには入念な準備が不可欠

溶接の一種であるアーク溶接は、作業方法によっては高度な技術が必要ですが、基本的にはしっかりと基本を身につけて経験を積めば、だれでもできる作業ということができます。しかし、仕事としてアーク溶接を行う場合は安全性だけでなく効率性もよく考えなければなりません。

このような安全性と効率性の両方を高める上では、道具の用意やメンテナンス、注意点の確認などの事前準備が大きな鍵となることから、作業方法だけでなく、アーク溶接全体に関する広い知識を持つことが、その作業を行う人には求められるといえるでしょう。

制作:工場タイムズ編集部

NEW

  • ピッキングバイトはきつい?仕事内容や向いている人の特徴を解説!
  • 簡単な仕事15選|楽で稼げる仕事の探し方を詳しく解説!
  • 工場の寮はどんな感じ?部屋の種類や特徴、メリットまで詳しく解説
  • 期間工の寮の特徴とは?メリットから工場選びの注意点まで紹介
  • 期間工で働くのはデメリットしかない?仕事内容や向いている人も紹介

TERND HASHTAG

RANKING

あわせて読みたい
  • アーク溶接 資格
    アーク溶接に必要な資格とは? 費用や日数、講義内容を知りたい!
    • #溶接・アーク溶接
  • 虎ノ門OLが溶接体験に行ってきた
    • #取材・インタビュー
  • 配管溶接工とはどんな仕事? 必要な資格には何がある?
    • #溶接・アーク溶接
  • TIG(ティグ)溶接とは? 作業音が静かできれいに仕上がる接合技術の特徴と手順
    • #溶接・アーク溶接
  • 水中溶接
    水中溶接の仕事内容って? 求められる技術と危険性、必要な資格とは?
    • #溶接・アーク溶接
  • 溶接工とは? 仕事内容、給料、必要な資格、未経験から目指す方法
    • #溶接・アーク溶接
  • 半自動溶接
    半自動溶接とは? 溶接方法の種類と半自動溶接機のメリット・選び方
    • #溶接・アーク溶接
  • 溶接道具
    溶接に使う道具の名前のまとめ! これなんて言うの?
    • #溶接・アーク溶接
  • 製造業 志望動機
    ものづくり・製造業の志望動機(履歴書)が思い付かない方必見!書き方と職種・経験別に例文を紹介
    • #就職・転職・キャリア
  • 派遣社員はダメって本当? 派遣社員で働くメリット・デメリット&おすすめしたい人を紹介!
    • #就職・転職・キャリア
PICKUP
  • 特定化学物質作業主任者
    特定化学物質作業主任者とは? 資格や仕事内容をもっと知りたい!
  • ロウ付け
    ろう付けとは? はんだ付けとの違い、必要な道具、手順、役立つ資格
  • フォークリフト 種類
    フォークリフトの種類とは? それぞれの特徴と運転に必要な資格を解説
    • #フォークリフト
  • 求人 電話
    求人に応募する際の電話のかけ方とは? 必要な準備と大切なマナー
    • #就職・転職・キャリア
  • 話題の画像生成AIを使ってみるVol.1
    • #AI・人工知能
    • #じゅーじー
    • #オタ活・推し活
  • 推し香水
    【推し香水】SNSで話題!推しをイメージしたオリジナル香水が作れるってホント?
    • #オタ活・推し活
  • アイラップ 使い方
    そんな使い方もできるなんて! 神商品「アイラップ」の活用方法特集
    • #豆知識・お役立ち情報
  • 上司と飲み会
    上司との飲み会!事前に知っておきたいこと5選
    • #教養・知識
  • 流行りのメイク
    次はこの顔が来る!? SNSで話題の「○○メイク」7選!
    • #美容・メイク
  • 製造業 志望動機
    ものづくり・製造業の志望動機(履歴書)が思い付かない方必見!書き方と職種・経験別に例文を紹介
    • #就職・転職・キャリア

NEW

  • ピッキングバイトはきつい?仕事内容や向いている人の特徴を解説!
  • 簡単な仕事15選|楽で稼げる仕事の探し方を詳しく解説!
  • 工場の寮はどんな感じ?部屋の種類や特徴、メリットまで詳しく解説
  • 期間工の寮の特徴とは?メリットから工場選びの注意点まで紹介
  • 期間工で働くのはデメリットしかない?仕事内容や向いている人も紹介

TERND HASHTAG

RANKING