あらゆるコンピュータ機器や電化製品に使用されている「半導体」。製造している半導体産業は、今やなくてはならない重要な産業のひとつです。あらゆる機器で使われているため、大手や中小企業を含めて製造工場が多数あり、仕事の数も多いといえます。
一方半導体というと、もちろん半導体工場で製造されるのですが、その仕事内容はなんだか難しく思えるかもしれません。実は未経験でも採用され、十分活躍できる分野なのです。この記事ではそんな半導体工場での仕事内容や、生産スケジュールなどについてご紹介します。
半導体工場の仕事内容
半導体は、ICやダイオードなどの部品で構成されており、いわゆる精密機器です。半導体の多くは米国、中国本土、台湾などの世界中で製造されていますが、日本国内でも製造工場や企業、メーカーは存在し、常に新たな作業員を募集しています。
クリーンルームでの作業
半導体は、工場にあるクリーンルーム内で製造を行い、作業スタッフも部屋に入って仕事をします。仕事をするときは「クリーンスーツ」と呼ばれる、全身を覆う防護服のようなものを着用します。半導体は些細なホコリでも動作に影響が出てしまうため、人間の皮膚や髪、唾、普段着に付着したゴミなどが飛び散らないようにするのです。
作業時の服装は、クリーンスーツを着用し、ゴム長靴と手袋を装着、さらに髪まで覆う帽子とマスク、防塵メガネも着用します。クリーンルームに入る前にこれらすべてを着用し、入口ではエアシャワーを浴び、クリーンスーツについたホコリを吹き飛ばしてから入室します。
ウェーハ処理工程
半導体製造の仕事のひとつに「マシンオペレート」があります。半導体は製造装置によって作られるので、その動きをオペレート(操作)します。製造装置そのものは作りが複雑ですが、操作方法は現場で教えられるので、教えられたとおりにやれば誰でも操作できます。
半導体製造の工程としては、
① シリコン窒化膜を蓄積
② ウェーハを回転させてのフォトレジスト散布
③ 露光装置で回路を転写
④ 電極形成
これらを経て完成です。ウェーハ処理はこれらの工程それぞれのオペレートを担当します。
組立て工程
ウェーハ処理工程ではウェーハに回路を作っていきICとして完成させます。その後が組立て工程です。ここではIC回路をウェーハから切断し、保護や検査を行い、1つの製品として完成させます。
この工程も半導体製造装置によって行われるので、オペレートの仕事として募集があります。こちらも操作方法は教えてもらえるので、専門知識は必要ありません。
装置製造組立て
あまり仕事は多くありませんが、半導体製造装置の組立ての仕事もあります。半導体製造では、キュア炉やフリップチップボンダーなどいくつかの装置を使います。それらの装置を組立てるのです。
この仕事ではクリーンスーツは必要なく、普段着や指定の制服で仕事ができます。マシンオペレートではなく機械組立てとなるので、ドライバーやレンチなどの工具を使って仕事します。組立てにおいては設計書があるので、どのような順番で部品を組立てるかは指示があり、その通りに組立てていきます。
半導体工場の勤務スケジュール
半導体工場での勤務スケジュールは、ほかの工場勤務とさほど変わりはありません。クリーンスーツ着用という特殊な環境での仕事ですが、スケジュールに特別なことはないです。
1日の流れ
ある半導体製造工場の1日の流れをご紹介します。
7:45 朝礼
8:00 業務開始
10:30~10:40 休憩
10:40 業務再開
12:00~13:00 昼休憩と食事
13:00 午後の業務開始
15:00~15:10 休憩
15:10 業務開始
17:00 片付け後退社
このような流れとなっており、昼休みがあるのはもちろん、午後と午前に短い休憩もあります。基本は立ち仕事ですが、部品を運ぶこともあります。また終始同じマシンをオペレートするのではなく、午前と午後で分かれる、ローテーションするなど、工場によっても違います。
シフトの組み方
工場はほとんどのところで24時間稼働です。そのために、日勤と夜勤の2交代、または夕勤をはさんだ3交代制となります。
2交代制だと1日12時間勤務となるので少し大変かもしれません。日勤と夜勤、さらに夕方勤務のある3交代制の工場もありますが、シフトはそれぞれローテーションです。日勤だけの仕事のような工場はほぼありません。ただし工場によっては日勤メイン、夜勤メインのような場所はあり、たとえば夜勤メインなら年間の9割程度が夜勤になります。
シフトの組み方はその工場ごとに違いますので、実際に働いてみないとわかりません。工場側で毎月のシフトを決める、バイトがシフト希望を出してそれを元に決めるなど、工場ごとにシフト決定のフローが違います。また1ヶ月ごとや毎週ごとなど、シフトの決め方も工場によって違います。休日についても同様で、1週間働いて2日休み、3日働いて1日休み、などそれぞれです。
1日12時間勤務のところは1日の仕事時間が長いですが、その分年間休日が多いです。1日8時間勤務のところは1日の仕事時間が短いですが、年間休日は一般的な会社員とほぼ同じになっています。
半導体工場での仕事の魅力と大変なところ
半導体工場での仕事の魅力
なんといっても半導体工場勤務の魅力は、時給が高いところでしょう。どこの工場でも日勤夜勤に関わらず時給1,000円以上は当たり前です。1日の勤務時間の長い工場だと、大きく稼げる可能性があります。さらに正社員であれば、福利厚生やボーナスも期待できます。
ただし基本的には同じ作業の繰り返しなので、単純作業が好きな人に向いている仕事かもしれません。特に資格や専門技術も必要なく、誰にでもできる仕事です。
またクリーンルームでの勤務であれば、空調が利いているので夏冬関係なく年中快適に仕事ができます。クリーンスーツに慣れない人はちょっと大変かもしれません。通気性がないので、夏場はやや蒸し暑いです。またクリーンスーツ着用時は化粧禁止といった条件があります。
大変なところ
生産ノルマがあるので、毎日の生産個数を達成しないといけません。教えられた通りに作業を行えば達成できる無理な数字ではありませんが、ミスをするなどで手間取ると、ノルマに届かないときがあります。
また日勤と夜勤があり勤務時間が安定せず、生活リズムは不安定です。日勤夜勤を繰り返せば生活リズムは半日大きく変わるので、慣れない人にとっては大変です。また仕事の大半は立ち仕事なので、足腰に疲労が溜まるかもしれません。ただし検査工程の仕事は座って行えるところが多いです。
半導体工場でキャリアアップを目指せる資格
半導体工場での製造業務においてキャリアアップを目指すにはどうすればよいでしょうか。もし設備保全管理業務を希望する場合は、半導体製品製造技能士の資格を取得しておけば損はありません。
半導体製品製造技能士
半導体製造にはクリーンルームのようなホコリのほとんどない環境が必要です。そんな環境を整えるのに役立つのが、半導体製品製造技能士です。まずは製造工程のあるべき正常な状態を知り、工程での問題を解決できる知識を身につけるのです。
この資格の等級は1級、2級、特級の3つ。試験には筆記と実技があり、最初から1級の試験を受験可能です。受験資格に制限はありません。1級と2級では、集積回路チップ製造作業と集積回路組立て作業の2つがあり、どちらかを選んで受験します。
試験は年間2回あり、筆記と学科とで日程が異なります。試験を受けるには実務経験が2年必要なので、まずは半導体工場で働いてからの受験となるでしょう。
試験の合格率は35~45%程度となっており、極端に難しい試験ではありません。2級に比べると1級は若干試験が難しいです。
ただし資格取得後に仕事を探すにしても、残念ながら半導体製品製造技能士そのものを募集しているような会社はありません。半導体製品製造技能士は補助的に使う資格のため、弁護士や保育士のように、その仕事を行うために必須の資格ではありません。
とはいえ半導体業界で働きたいならば、待遇の向上なども考えられるため、この資格を取得しておいて損はありません。挑戦してみてはいかがでしょうか?
半導体工場での勤務は未経験でも行える
今や生活になくてはならない半導体は、日本国内の工場でも生産されています。半導体工場での仕事の募集は多数あり、ほとんどは未経験でも行える仕事です。また時給が高く、休みも多いので、たくさん稼ぎたい人に向いている仕事だと言えるでしょう。
特別な技術や知識は特に必要とせず、教えられた通りに手順を踏めば勤まりますが、より実務に深く関わりたい人は資格を取得してさらなる高みを目指すことができます。ハイテク産業の中枢ともいえる半導体製造。最新技術に興味のある人にとってはやりがいのある職場だといえそうです。
制作:工場タイムズ編集部