工場での製造において重要な工程となるのが「試験評価」です。製品づくりの品質管理として、最高品質の製品を作るのはもちろんですが、そのためにさまざまな作業に対してボーダーラインを設け、十分に条件をクリアしているかを判断するのが試験評価と呼ばれるものです。この記事では工場での製造になくてはならない試験評価の仕組みについて詳しくご紹介します。
試験評価の仕事とは?
試験評価とは、主にものづくりの現場である工場内で行われる業務です。もっとも、完成品に対してのみの試験評価であれば必ずしも工場内で行う必要はなく、開発現場で試験評価を行う企業も少なくありません。
一般的に、試験評価は工場で製造された製品に対しその動作や品質を確認するもので、大きくは品質管理のなかの一部、あるいは品質管理そのものといってもいいでしょう。
工場で作られた製品が、あらかじめ設定した試験評価の基準を満たしているのかを入念にチェックし、さらには期待される性能を発揮することができるかといった点を評価します。そしてその評価を製品開発者にフィードバックし、今後の製品づくりに役立てていきます。開発者本人が試験評価を行う場合もあれば、独立した部署である「試験評価グループ」が評価を行う場合もあります。
試験評価というと完成品のテストのことを考える人が多いですが、製造工程の途中でも試験評価は行われます。製造工程における試験評価では、製造の際に決められたサイズや規定などが守られているか、また危険なところはないかといったことを特に重視してチェックが行われます。
完成品の試験評価では、特にユーザーの視点が重視されます。「このような使い方をしたらどうなるだろう」「子どもや高齢者には使いにくいのでは?」「直感的に使うことができたほうがいい」などといったものに加え、仕様について気になったことなども含まれます。試験評価で得られたデータからよりよい製品づくりのために開発サイドへ意見することも少なくありません。
例をあげると、自動車工場であればエンジンの作動具合(音や振動など)をチェックしたり、車体の剛性については細やかな基準があるので、こうした基準もすべてクリアしているかを確認します。また完成品であれば操縦の安定性は最重要課題としてチェックされます。
どの工程においても多くのチェック項目があり、それらすべてをクリアしなければ世に出ることはありません。試験評価はそれほど重要な作業であり、品質管理を担う重要な業務と言えるのです。
試験評価が必要とされる主な現場
製造業界
製造業での品質チェックは各工程において細かく行われています。さらに、完成品についてはユーザー目線での試験評価が行われています。製造工程で試験評価が行われる工場としては、自動車製造、家電製造、食品製造などの業種があげられます。
自動車製造における試験評価
自動車製造において自動車の部品はおよそ3万点にのぼるとされています。そのため自動車産業に関わるすそ野は広く、ひとつの自動車メーカー(大企業)に数百数千社の下請け企業が関連しているのです。
また自動車製造では、各部品を作る下請け会社での試験評価を経た製品がメーカーの工場に送られてきます。そしてそれらをひとつひとつ組立てるのです。すなわち、部品が3万点あれば3万回の試験評価が行われ、さらに組立てる工程でもさまざまな試験評価が行われるのです。
家電製造における試験評価
家電製造も自動車製造と同じ仕組みだといえます。家電にも電装品が数多く備わっているので、自動車製造と同じように部品の組立て工程に加え各電装品の電通テストなど、さまざまな工程で試験評価が行われます。
食品製造における試験評価
食品製造の現場でも試験評価は行われており、衛生面のチェックや成分チェックなどは欠かせません。機械でのテストも行いますが、味覚や風味、さらには健康被害が起きないかという点のチェックは最終的に人が直接感覚で確認しなければいけないところもあるようです。そのため、味見や風味なども試験評価・品質チェックの項目に入っています。
自動車や家電製品の製造については、部品メーカーからあがってくる部品の試験評価、工場での組立て時の試験評価など、各工程において試験評価や品質チェックが行われ、不備がないかを確認しています。
IT業界、ゲーム業界
製造業界のほかには、IT業界やゲーム業界でも試験評価は不可欠な業務です。IT業界やゲーム業界で行われる試験評価では、開発されたプログラムやシステムにエラーや問題点がないかなど、ソフトウェアが正しく動作するかをユーザー視点で実際に使用しながら評価します。
ひとつのソフトウェアには多くのソフトウェア(プログラム)が組合わさってできているため、それぞれのプログラム開発が終わり、システム開発がそれらソフトウェアをすべて組合せた段階で、試験評価として最終的な動作確認が行われます。ソフトウェアを部品に置き換えて考えるとわかりやすいかもしれません。
ゲームにおいては、テストゲーマー(試験評価としてゲームをする人)が完成品のチェックを行います。これは「デバッグ」と呼ばれ、実際に製品をプレイして動作チェックを行い、バグや不具合が出ればすぐにプログラマーにフィードバックされるのです。
試験評価に向いている人
試験評価に向いている人とはどんな人でしょうか? 以下にあげる3つの性格のいずれかに該当する人がふさわしいのですが、それぞれに共通しているのは「成果物(製品)を作るためのさまざまな部分に精通していること」でしょう。これにより的確にフィードバックができ、迅速な製品化に向けて大きな貢献ができるのです。
几帳面な人
試験評価というのは地道な作業が必要になります。そのため、地道な作業においても手抜きせず、すみずみまで慎重に確認できる几帳面な人は試験評価の業務に向いていると言えるでしょう。
几帳面な人は自分に対してはもちろん、他者に対しても高いレベルの完成度を求める傾向が強いようです。そのため製品の細かなミスを見逃さず、そのミスをしっかり開発側にフィードバックできるのです。
几帳面な性格の試験評価員は製造・開発の現場にとって非常に重宝されます。加えて、計画性もしっかりしている人であれば、チーム作業の多い製造やITの現場において欠かせない人材であることは間違いないでしょう。
ものづくりに情熱がある人
試験評価は神経を使う地道な作業なだけに、完成品をユーザーに送り届けること、活用してもらうことにやりがいを見いだせる「ものづくりに情熱がある人」が特に向いています。
さまざまな職業がある中で、品質管理というのはものづくりの中で最も重要な工程といっていいでしょう。ものづくりそのものをするわけではありませんが、ユーザーの視点から安全で使いやすい製品であるかを確認してから世に送り出す仕事なので、ものづくりチームの一員として情熱のある人が求められるのです。
情報収集が得意な人
試験評価は試作機などの動作確認を常に行いながら、気になる部分があればそれがどのような条件下や動作で起こるのか、何が原因なのかを探る必要があります。そのため、的確に情報収集ができ、何がおかしいのかの不具合を突き止め、さまざまな比較検討を行いながら試験評価を行うことができる性格が向いているのです。
経験に裏打ちされたスキルが活かせる
試験評価を行う人は、経験に裏打ちされたプロフェッショナルといっていいでしょう。試験評価をクリアしたら製品として世に出すことができるのですから、企業にとっては開発と並んで最重要な業務であり、試験評価を通ったら大丈夫という安心感を持たせるところでなくてはいけません。
そのため、日々スキルアップの研鑽が必要ですし、社内においても適切な報告ができるよう、コミュニケーション力を磨く必要があるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部