高所作業とは
高所作業とは、一般的に2m以上の高さで行う作業のことを指します。これは「労働安全衛生法」で、作業の際に条件がつく高さが決められているからです。
労働安全衛生法とは、工場なども含めたさまざまな仕事での労働者の安全な環境を用意するための法律となっており、厳密には脚立を立てて2m以上の作業をするケースなども含まれます。「簡単な作業ですぐに終わるから」と考えてしまうこともありますが、作業中に事故を発生させないためにも必ず条件を守りましょう。
高所作業で考えられる事故
高所作業で考えられる事故としては下記のケースがあげられます。
高い場所からの転落
屋根などの危険な場所の確認不足による事故
例:工場の屋根の作業で、シートをもちながら後ろ向きに歩いていたところ、採光窓部分に足を踏み入れて転落
フォークリフトなどでの作業で起こる事故
例:高い位置にある部品の交換作業を、フォークリフトに足場を積んでその上で作業したが、不安定な足場のため転倒
準備の不備による事故
例:設備ゴンドラにてマンションの外壁工事をおこなっていたが、ゴンドラの支えが不十分であったためゴンドラが転落
高所作業車やトラックの転倒
高所作業車の転倒による事故
例:高所作業車を停車させて作業していたが、停車場所が不安定な場所であったため高所作業車ごと転倒
車上からの転落による事故
例:トラックの荷台に登って荷下ろし作業をしていたが、足をすべらして荷台から落下
脚立からの転落
バランスを崩して転倒した事故
例:天井付近にある部品交換のために脚立に登る際にバランスを崩して転倒
作業体制の不十分による事故
例:脚立をまたいだ状態から体を反対方向に向けたときに転倒
不安定な接地面による事故
例:砂利の上に脚立を置き、大きな荷物をもっていたため脚立が傾き転倒
高所作業での事故を予防するには?
こうした高所作業の事故の多くは、事故防止のための準備が不十分であったことにより発生しています。危険な状況になる可能性を予測できなかった要因として、現場の責任者や担当者がしっかりと安全対策の研修などを受けていなかったため、というケースも珍しくありません。
事故を予防するためには、作業する人全員が危険な場所を認識し、高所作業が発生する場合には、必ずその方法を作業責任者に報告することを徹底する必要があります。それをしないと高所作業に危険が伴ってしまうからです。
高所作業の脚立やはしごの規定
高所作業で使用する脚立やはしごはそれぞれ規格があり、以下のとおりでないと使用することができません。
脚立の規定
- 丈夫な構造である
- 脚立の素材が著しい損傷や腐食などで劣化していない
- 脚と水平面との角度が75度以下である
- 折りたたみ式の場合には、脚と水平面との角度を確実に保つための金具がある
- 踏む面は安全に作業するために必要な面積がある
移動はしごの規定
- 丈夫な構造である
- 移動はしごの素材が著しい損傷や腐食などで劣化していない
- 幅は30cm以上である
- すべり止め装置やその他転落防止の必要な措置がある
高所作業時に必要な安全対策
高所作業をおこなう際、労働安全衛生法で決められたルールを守って作業しなければいけません。高所作業とされるのは2mですが、1.5mを超える高さ、もしくは深さのある場所で作業をするときも、安全に昇降ができるような設備が必要です。移動式も含めた階段などが該当し、作業者は必ずその設備を利用しなければいけないのです。
高所作業となる2m以上の高さを超える場所は、作業床を設置しなければいけません。よく建設現場などで鉄の板を組んでいるのを見かけることがあると思いますが、あの鉄の足場が作業床に該当します。
マンションの外壁修理や窓ふきなどでゴンドラ利用など作業床を設置することが難しい場合には、上昇や下降のできる器具を用意し、ロープ等を装着しなければいけません。こうした作業場所を労働安全衛生法ではロープ高所作業としており、安全帯やメインのロープの他にもう一本ライフラインと呼ぶロープも必要となります。
必要なものを揃えなければ作業はできません。さらに事前に調査や計画を立てて作業指揮者を設定する必要があります。
必要な装置
- メインロープ:命綱ともよばれる落下防止のロープ
- 身体保持器具:メインロープと体をつなぐ器具
- ライフライン:メインロープとは別の補助用ロープで、昇降できる器具でも可
- 安全帯:ライフラインと体をつなぐ器具
- 安全帽:落下物から頭を防ぐなどのヘルメット
調査項目
- 作業場所とその下側
- メインロープとライフラインをつなげる場所の位置や状態とその周囲、また作業場所までの通路
- メインロープやライフラインが切断されてしまう可能性があるか、あれば場所や状態
仮に作業者が墜落してしまった場合、上から落下物が発生しないかなどをふまえて、これらを調査し結果を記録として残しておく必要があります。
作業計画
調査した内容を元に作業計画を立てて関係者に連絡し、そのとおりに作業してもらわなければいけません。計画に必要な項目は下記です。
- 作業方法と手順
- 作業をする人数
- メインロープとライフラインをつなぐ場所とその位置
- メインロープとライフラインの種類と強度
- メインロープとライフラインのそれぞれの長さ
- メインロープとライフラインが切断される可能性のある場所と防止方法
- メインロープとライフラインを支える場所とつなぐ作業員の墜落防止措置
- 作業中に上から落下するものがあればそれを防止する対策方法
- 万が一事故が発生した場合の応急方法
作業指揮者
作業計画にそった作業を行うことを指示し、必要な措置がされているかどうか確認をする責任者となるのが作業指揮者です。
作業条件
作業時には下記の条件がそろっていないといけません。
- メインロープとライフラインはそれぞれ別の部分に固く確実に結ばれている
- メインロープとライフラインは作業をしている人が安全に昇降できる充分な長さがある
- 建物の角部分などにあたりメインロープやライフラインが切断される可能性がある場合は、カバーをかけるなどの措置が必要
- 作業者の体を守る保持器具はメインロープに適したものをしっかりと装着する
作業前点検
作業を開始する前には、かならずメインロープとライフライン、安全帯やヘルメットなどの点検をおこなって、問題があったらすぐに補修や交換をしなければいけません。
高所作業の仕事に役立つ講習
ロープ高所作業を行うにあたる場合、資格は必要ありませんが、事前に決められた特別教育を受ける必要があります。この教育の講師にも資格が不要ですが、それぞれの内容をしっかりと熟知していて、ロープ高所作業の経験をもつ人が講師をしなければいけません。
ロープ高所作業の特別教育は主に学科と実技にわかれており、内容により時間が決められています。以前に受けた内容に関しては受ける必要がありません。
学科
- ロープ高所作業をする方法(1時間)
- メインロープの種類、構造、強度、取扱、点検、整備の知識(1時間)
- 労働事故防止に必要な措置、安全帯と保護帽の使用方法や点検方法(1時間)
- 労働安全衛生法で高所作業に関連する条項(1時間)
実技
- ロープ高所作業実技や防止措置、ヘルメットや器具などの扱い(2時間)
- メインロープやライフラインの点検と整備方法(1時間)
まとめ:高所作業は必要な対策をとらないと作業してはいけない
高所作業は、安全対策をとっていないと非常に危険を伴う作業です。そのため法律で決められたルールをしっかり守り、事故がおきないよう対策をとっておく必要があります。
高所作業で事故が発生するのは、安全対策が充分にとられていないことが要因となっているケースが多いです。原則として、2m以上の高さでの作業は作業床を準備して行うことが前提と認識しましょう。どうしても作業床が用意できないときには、ロープ高所作業として必要な調査や準備をした上で作業するようにしましょう。
制作:工場タイムズ編集部