最近、自動車整備士が慢性的な人手不足であることが新聞で報じられました。自動車整備士の勤務先は小さな整備工場から大手までと多岐にわたるのですが、給料が他業界に比べ高くはないという声もあるようです。実際には自動車整備士の年収はどのようになっているのでしょうか? また給与を上げるにはどうすればいいのか、というポイントもあわせてご紹介します。
自動車整備士の仕事内容
仕事内容
自動車整備士はその名の通り、自動車を整備するのが仕事です。整備工場内でお客様からお預かりした車の修理、解体、分解、組み立てなどをします。メインの仕事は自動車整備ですが、その他にも車両をお客様の元まで運ぶために運転することや、修理部品の発注、ETCのセットアップなど、整備以外の業務もいくつかあり、1日中整備業務だけを行っているとは限りません。
主な就職先
自動車整備士の主な就職先としては、町の自動車整備工場やガソリンスタンド、ディーラーやカーショップなどが挙げられます。また、運送会社やバス会社などでも整備士が勤務しています。また、旅行者の足として欠かすことのできないレンタカーショップや、近年需要が増えつつあるカーシェアリング会社、車の塗装を行うペイントショップなど、活躍の場は多岐にわたります。いずれも自動車の点検・整備が必要不可欠な仕事のため、自動車整備士の需要はとても高いと言えます。
勤務環境
自動車整備士は、男性はもちろん女性の整備士もいます。仕事内容は自動車の整備なので、職場において男女関係なく同じ業務を行うことが多いようです。加入条件を満たしていれば社会保険にも加入できます。整備士の多い会社であれば、ローテーションで休みを取ることもできます。
最近では女性の整備士も増えつつあり、一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会が行った「平成28年度 自動車分解整備業実態調査結果の概要について」によると、自動車整備士全体の人数は334,655人で、前年度より5,344人ほど減少してはいますが、女性整備士は前年度より331人増加しているようです。
これまでは男性の多い職種というイメージが強かったかもしれませんが、少しずつ女性が参入しつつあるため、今後はより一層、女性にとってもよりよい職場環境が整備されていくかもしれません。
自動車整備士になるには
仕事内容によっては特に資格なしでも働けますが、国土交通省認定の「自動車整備士技能検定」という国家資格があるので、自動車整備士になりたいならまずこの資格を取るとよいでしょう。
資格には特殊整備士、三級、二級、一級の4つがあります。受験には、指定の養成施設で学ぶか、一定の実務経験が求められるので、未経験で自動車整備士になるなら、養成学校に入るのが近道でしょう。
養成学校には一種養成施設と二種養成施設の2つがあり、実務経験のない人は一種養成施設に入学します。一種養成施設に入学後、定められた課程を終了することで、二級の受験資格が満たされます。
一級 : 整備全般と、他の整備士の指導が行える
二級 : 整備全般を行える
三級 : 基本整備のみ(大がかりな分解修理は行えない)
特殊 : 整備の詳しい知識を持ったスペシャリスト
ディーラーや整備工場で働くならば、二級の資格を取得しておけば大丈夫です。資格手当が付くなら、一級や特殊の取得を目指すとよいでしょう。
自動車整備士の平均年収
自動車整備の収入
平成29年厚生労働省の調査によると、自動車整備士の月収、賞与、年収は以下の通りです。
月収:29万3,900円
賞与:73万9,700円
推定年収:426万6,500円
352万6,800円(月収 × 12カ月分)+ 73万9,700円
(年齢36.7歳、勤続年数11.4年)
【出典】「平成29年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
資料:「職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
自動車整備士の給与は場所によって幅がある
自動車整備士の収入は、整備工場などで働くよりもディーラーで働くと高い傾向があります。
上記のデータは平均なので、全体を見ると、1ヶ月の給与が15万円未満の方が5%前後、20万円未満の方が20%程度います。給与としては、20万円~25万円の範囲の方の割合が一番多いです。
会社によっては歩合手当が付くので、毎月給与が歩合によって変化するところもあります。また自動車整備士は手当が多く、給与に占める手当の割合が高くなります。資格手当、家族手当、通勤手当、残業手当なども含まれることもあります。30代になればベテランと言われる整備士になり、年収は400万円後半のようです。
自動車整備士の給料を上げるポイント
自動車整備士の年収は300万円~400万円ぐらいと言われています。勤務期間が長くなれば必ず昇給するというわけではなく、入社時と退社時の給与が同じという人もいます。工場長やマネージャーなど責任のある立場になる、あるいは工場全体の管理をするなどであると給与は上がり、月収35万円以上、年収600万円以上もらっている人も中にはいるようです。また輸入車ディーラーで働くと、給与は比較的高くなりやすいようです。
国家資格を取得する
先に述べた自動車整備士の国家試験を取得することで、資格手当がついたり、今まで担当できなかった業務に携わることができるようになります。すると業務評価が上がり、昇給につながるといったことも考えられます。
独立して整備工場を持つ
自動車整備士として収入アップを目指すならば、独立するのが確実です。整備士としてたくさん資格を取っても、長く働いても、それほど大幅な給与アップは見込めません。そこで整備工場を経営すれば、利益から経費を引けばすべてが自分の手取りです。
自動車整備工場経営には、最低でも整備士の有資格者2人が必要であり、経営者のみで運営はできません。また整備するには工場にある程度の広さが必要であり、工場の面積が180.5㎡以上あるのが理想です。
開業にはまず工場としての敷地と建物が必要です。借りるならば毎月10万円ぐらいの賃料を、新築にするなら最低でも3000万円以上の資金が必要です。もちろん経営者としても自動車整備士としての資格は持ち、さらに排ガステスター、コンプレッサーなども用意します。そして従業員を雇い、仕事を確保すれば整備工場としてスタートです。
ただし0からのスタートは厳しいので、まずはどこかの整備工場で整備士として働き、ノウハウや技術、資金を集めていくことになるでしょう。整備工場を営むには仕事を確保しないといけないので、人脈やお客さんの確保も忘れてはなりません。
自動車整備士ならば独立の道も開ける
上でデータを出しましたが、自動車整備士の給与は就職してすぐの時期はそこまで高いとは言えず、また職人的な仕事でもあるため、早期に昇給が見込めるというものでもないようです。もし大幅な収入アップや最初からの高収入を目指したいという方であれば、大手のカーショップやカーディーラーなどに就職、あるいは転職するといった方法があります。
有名な自動車メーカーなどのディーラーであれば給与水準は比較的高く、また福利厚生の面も充実しているケースが多いようです。ですが、責任者など上の立場になる、あるいは役職を持つと、それに合わせて給与が上がります。さらに、大幅な収入アップを目指すというのであれば、自動車整備士として働きながらノウハウや資金を集め、独立して整備工場を経営するのも1つの方法です。
いずれにしても現在、自動車整備士は人手不足のため需要が高く、引く手あまたの業界であることは間違いありません。
制作:工場タイムズ編集部