ものの長さを測る時、一般的には定規やメジャーを使うことが多いですよね。製造業では1mm(ミリ)の1000分の1にあたる「1マイクロメートル」という単位で正確な計測をしなければならないことがあるため、定規やメジャーでは測定精度が十分とはいえません。
こういったことから、製造業をはじめとした、より高い測定精度が求められる現場では「マイクロメータ」という測定工具が使われています。今回はそんなマイクロメータの特徴や使い方、使う際の注意点、保管方法をご紹介します。
長さの測定に便利な「マイクロメータ」とは?
測定物を挟み、微小な長さを計測する機器
マイクロメータとは、「スピンドル」と「アンビル」と呼ばれる部分に測定物を挟むことによって、その長さを測ることができる機器です。
通常、物の長さの計測では「測定精度を高めるには、測定物と測定器具の目盛りを測定方向の同一線上に配置しなければならない」(上図点線部分)という「アッベの原理」を守ることが重要となります。マイクロメータはこのアッべの原理を満たしているため、マイクロメートル単位で正確な長さを測ることができます。
主な種類
マイクロメータには、測定物の特徴に応じたさまざまな種類があります。以下はその主なものです。
a. 外側マイクロメータ
厚みのある円状の測定物の外径(外側の円の直径)を測ることができるマイクロメータを「外側マイクロメータ」と呼びます。筒状の製品を製造している工場などで使われています。
b. 内側マイクロメータ
厚みのある円状の測定物の内径(内側の円の直径)を測ることができるマイクロメータです。このマイクロメータもまた、筒状の製品を製造している工場などで使われています。
c. 3点式内側マイクロメータ
3つの点で円状の測定物の内径を計測できるマイクロメータです。一般的な内側マイクロメータよりも測定精度が高いというメリットがあります。
d. 棒型マイクロメータ
棒の形をしたマイクロメータで、全体を使って円の内径を測ることができます。附属品を継ぎ足すことで大きくできるものもあり、より大きな円の内径を測るのにも適しています。
e. デプス型マイクロメータ
深さを測定することができるマイクロメータです。「デプスマイクロメータ」「ディプスマイクロメータ」と呼ばれることもあります。
マイクロメータの使い方
続いては、マイクロメータの基本的な使い方を見ていきましょう。
測定方法
マイクロメータで測定を行う際には、埃や油をはじめとした汚れが測定物についていると正確な長さを測れなくなってしまうことがあります。そのため、測定を行う前にはウエス(機械類の油や埃を拭き取るためのきれいな布)で測定物をきれいに拭くことを忘れないようにしましょう。
測定物をきれいに拭いたら、マイクロメータのスピンドルとアンビルの間に測定物を置きます。続いてシンブルをつまみ、ラチェットストップを回転させ、空転したところで目盛りを読むようにしてください。
目盛りの読み方
マイクロメータの目盛りは特殊な表示になっているため、正しい目盛りの読み方を覚えておかなければなりません。
目盛を読む際には、最初にスリーブの右端にある線で0.5mm単位までを読み取り、その後、シンブルの中央にある基準線と呼ばれる横になった線に一致する目盛で0.01mm単位を読み取ります。
例えばスリーブの右端の線で13.0mm、シンブルの基準線で0.15mmと読み取れた場合、長さは13.15mmとなります。
マイクロメータを使う際の注意点
マイクロメータを使う際には、以下の点を押さえておかないと正確な測定ができなくなってしまう場合があります。
アンビルの面が常に水平でなければならない
マイクロメータの中には点で計測を行うものもありますが、その先端部分も厳密にいえば面になっており、この部分が常に水平になるようにしないとマイクロメートル単位では正確な測定ができなくなってしまいます。
また、マイクロメータのアンビルの面部分は、使い続けていると徐々にすり減り、水平でなくなってしまうことがあるため、計測前に確認する必要もあります。この際には、ブロックゲージと呼ばれる寸法の基準となる小さなブロックを使い、測定精度の検査をするのがおすすめです。
金属の長さを測る際は「熱膨張」に注意
マイクロメータでは金属の長さを測定することが多いですが、金属には熱が加わることで膨張するという特徴があり、素手で持ったりすると体温の影響を受けて長さが変わってしまうことがあります。このことから、マイクロメータで金属の長さの測定を行う際には、熱が伝わらない専用の手袋を使わなければなりません。
測定精度は狂いやすいため、頻繁な調整が必要
マイクロメートル単位での測定を行うマイクロメータの測定精度は非常に狂いやすく、正しい方法で使っていても短期間で正しい数値の測定ができなくなってしまうことがあります。常に一定の測定精度を保つためには、3ヶ月~1年に1回は測定精度の調整を行う必要があり、あらかじめ調整を行う頻度を決めておくのがおすすめです。
マイクロメータの保管方法
高い測定精度が求められるマイクロメータは、保管方法にも細心の注意を払わなければなりません。中でも以下の点には特に注意するようにしましょう。
スピンドルをゼロの位置に戻さない
測定物を挟むスピンドルはゼロの位置に戻した状態だとラチェットが空回りした状態になり、内部にあるねじは常に圧力がかかった状態になってしまいます。そのため、スピンドルをゼロの位置にしたまま保管してしまうとねじにゆるみが生じ、次に使うときには測定精度に大幅な狂いが生じてしまうことがあります。
このことから、マイクロメータを保管する際には「スピンドルがゼロの位置になっていないこと」を確認するのを忘れないようにしましょう。
熱、湿気にも注意
マイクロメータの測定精度は熱と湿気の影響を受けやすいという特徴もあります。特に保管中はこれらの影響を受けやすいことから、保管場所は慎重に決めなければなりません。
マイクロメータの保管場所としては、「湿気が少なく直射日光の当たらない、高温になりにくい場所」が適しており、長期間にわたって使用せずに保管する場合は、除湿剤を近くにおいておくといった工夫をするのもよいでしょう。
定期的にメンテナンスをする
一定期間マイクロメータを使わないと埃が付着し、測定面の水平が保たれなくなってしまいます。また、長期間にわたって付着していた埃は完全に拭き取るのが難しくなってしまうこともあるため、正しい長さを測るためには、使う予定がなくても定期的にメンテナンスを行い、埃の付着を防ぐことが重要です。
専用のケースに入れて保管する
マイクロメータは棚などの硬い場所に直置きした状態で保管した場合も、測定精度が狂ってしまうことがあります。多くのマイクロメータはこのことを防ぐために、スポンジのような柔らかい素材が中に敷き詰められた専用ケースに入れられた状態で販売されていることが多く、保管をする際にはそのような専用ケースを使うことも忘れないようにしましょう。
また、専用ケースがない場合、購入した際に入っていた箱などでも代用することができるため、捨てずにとっておくのがおすすめです。
マイクロメータは精度が命!
一般的な定規やメジャーでは測ることができないマイクロメートルという単位で物の長さを測ることができるマイクロメータは、測定精度が命といえます。そしてこの測定精度は、使用する人が使用方法や保管方法に気をつけることで維持ができるものです。
より長く有効に使い続けるためにも、今回ご紹介したそれぞれの方法を実践するようにしてみてください。
制作:工場タイムズ編集部