「熱交換器」と聞くと馴染みのない人が多いのですが、工業製品で非常に多岐にわたって使われている装置です。工業製品の他に、エアコンや冷蔵庫など私たちの生活の中でも身近なところで使われています。特にエアコンは室内機と室外機が明確に分かれているので、よりわかりやすい事例といえます。ここでは熱交換器を主に製造工程の中で説明していきます。
熱交換器とは?
熱交換器は、温度の異なる流体のエネルギーを効率的に移動させ、交換する装置です。熱は温度の高い流体から低い流体へ移動する性質があるのですが、その性質を利用して流体の加熱や冷却を目指すものです。
高温から低温へ、流体(気体や液体)を移動させる機械
熱交換器は、工業製品として製造現場で非常に多岐にわたって使われている装置です。熱交換器の役割は、熱を伝導させることなのですが、一般的に熱は温度の高いところから、低いところへ流れる性質があります。その性質を熱交換器は利用して、熱を伝導させているのです。
産業用ボイラーや蒸気発生器、冷蔵庫、エアコンなどに活用
熱交換器は産業用のボイラーや蒸気発生器に使われています。しかし、それらは産業用、工業用の機器ですから、身近ではありません。私たちの身近なところで熱交換器が使われているのが、エアコンや冷蔵庫なのです。わかりやすい例としてエアコンを取り上げてみます。エアコンは室内機と室外機で構成されています。この室内機と室外機の間には流体が通っているのです。この流体は温度が上がると気化しやすいものです。
エアコンでは、流体は液体の状態で室内機に入ってきます。そこで室内の熱によって気体となるのです。このときに気化熱が発生するのですが、気化熱は室内の空気の熱を奪います。それによって冷やされた空気が冷風となって室内機から室内に送り出されるのです。この冷気が室内を冷やしてくれるというわけです。
そこで、室外機はどういった働きをするのかというと、気化した流体は室外機に入ってきます。ここで、屋外に熱を放出することで、気体が液体に戻り、その液体が再び室内機に送られるのです。これがエアコン内での熱交換器の働きというわけです。
熱交換器の主な種類
熱交換器は、おおまかにはボイラー、蒸気発生器、復水器、空調機、車両用などさまざまな用途に使われています。ここでは、熱交換器の種類と材質について説明します。
シェル&チューブ型、プレート型、フローティングヘッド型 など
シェル&チューブ型(多管式熱交換器)
シェル(円筒)と多くのチューブ(伝熱管)の中に、それぞれ流体を通します。相互間で熱交換を行うといった構造の熱交換器です。液体と液体の間で行う熱交換器の代表的なものとなります。筒の中には多くの管が並んでいるので。多管式熱交換器と呼ばれることもあります。
プレート型
伝熱板となる凸凹状にプレスされた金属の板を何枚も重ね合わせます。そこに交互に温度差のある流体が流れ、シェル&チューブ型よりも軽量でコンパクトとなっているのが特徴です。シェル&チューブ型の1/5の大きさでほぼ同等の熱伝導力を得られるといった優位性があります。
シェル&チューブ型とプレート型の比較ですが、シェル&チューブ型は上記と水で熱交換を行う場合に適しています。大型化しやすいので、大型プラントなど大きな設備で利用されています。一方のプレート式ですが、水と水で熱交換をする場合に優れています。シェル&チューブ型よりも軽量化しやすいので、コンパクトに使用したい場面で重用されています。
フィンチューブ式熱交換器
チューブ状の伝熱管に伝熱板(フィン)を取り付けた熱交換器です。伝熱面積をより増やしたものをフィンチューブと呼んでいます。フィンチューブ式熱交換器は、伝熱管内と外の熱交換を目的としています。伝熱管には液体があり、その液体の熱と管外の気体の熱交換ですが、身近なところでは、エアコンがこのタイプになります。
スパイラル式熱交換器
2枚の伝熱板をスパイラル形状に巻き取り、2つの細長い流路断面がある熱交換器です。1型と2型の2種類があります。液体と液体の間で行う熱交換が1型、コンデンサーガスクーラーとして使用されるのが2型になります。汚れにくく、コンパクト性に優れ、かつ高性能な熱交換器です。
材質の種類
熱交換器は、主として、フィンと管によって構成されていて、そのフィン材料としては、加工性・耐食性・強度・熱伝導性に優れたものが要求され、現在ほとんどの熱交換器では、アルミニウムが使われています。アルミニウムの材質については、近年加工性の面から、純度の低下した材料が使用されるようになりました。
さらに、ドローレス化・揮発性プレス油使用等の過酷な加工条件に対応するため、アルミニウム以外の元素を積極的に加えた材料が実用化されています。
熱交換器を導入する際に知っておきたい数式
工場の設備の中で、物質の温度を調整する熱交換器という工業機器はとても重要な機器の一つです。工業機器としての熱交換器は身近ではないので説明が難しいのですが、身近にあるものでしたら、私たちの生活の中で、ものを温めるのにコンロやオーブンレンジを使い、冷やすには冷蔵庫を使います。これも熱交換の簡単な原理なのですが、工場のような大きな設備で家庭と同じことをしようとすると、トン単位となるので熱する・冷やすといったことはとても効率が悪くなってしまうのです。
コンロで温めるのは、その分だけ余計に熱を捨てていることになりますし、冷蔵庫で冷やすのも同じように熱を捨てているということになります。熱交換器はその無駄な部分も無駄なく活用することで、効率的に熱エネルギーを移動させているのです。ここでは、熱交換器の導入に必要な数式を説明します。
・熱交換器内の温度分布、平均温度差 など
・熱交換器内の温度分布
温度の低いところから、温度を高めたい流体を「低温流体」、温度の高いところから、温度を下げたい流体を「高温流体」と呼んでします。ここではCを「低温流体」の物理量、「高温流体」の物理量にはHの添え字をつけて数式を表現します。
・低温流体の流量はWC[kg/s]、比熱はCpC[J・kg-1・K-1]
・高温流体の流量はWH[kg/s]、比熱はCpH[J・kg-1・K-1]
以上とします。
熱交換器を正面に見たときに、向かって左側の配管出入口「1」とし、右側の配管出入口を「2」とします。
・地点”1”を出入りする高温流体の温度をTH1、低温流体の温度をTC1
・地点”2”を出入りする高温流体の温度をTH2、低温流体の温度をTC2
とします。
任意の地点の高温流体温度をTH、低温流体の温度をTCと表記します。
さらに、その温度差をΔTとします。
平均温度差
熱交換器での交換熱量Q[W]は、内管と外管間の総括熱伝達係数をU[W・m-2・K-1]、伝熱面積をA[m2]とすると、以下の式で表されます。
Q=UA△T
このときの△Tを対数平均温度差と呼んでいます。
熱交換器の設計に必要な数式は多岐にわたり、内容も複雑です。それでも、熱交換器の熱収支の数式を理解することで、ある地点における高温流体と、低温流体の温度差を求めることができます。
熱交換器は工業製品の製造に欠かせない機器
熱交換器と聞くと馴染みがなく私たちの生活には必要ないものというイメージもあるかもしれません。しかし、生活でも絶対的な必需品となっている冷蔵庫とエアコンには熱交換器がとても重要な働きをしてくれているのです。生活の中で、より快適にすごすために換気設備といったところですが、これが工場内での立ち位置となると大がかりな設備となって、工業製品の製造になくてはならない働きをしてくれるのです。品質管理や工程管理にとても重要な働きをしてくれ、さらにその働きを効率よくするために熱交換器の設計の際には数式も必要になるのです。
製作:工場タイムズ編集部