「シール」というと貼るものをイメージしますが、本来は「封じる」という意味があります。
オイルシールは、オイルを防ぐパッキンタイプのシールです。オイルが漏れるのを防ぐ役割を持ち、油を必要とする部品や機械では、多くの場所で使われます。
現在の機械部品や工業製品になくてはらない部品とも言えるオイルシールについて、詳しく解説します。
オイルシールって何?
エンジンやモーターなど機械部品には、多くの場合オイルが使われます。これは潤滑油としての役割があり、機械部品同士が摩擦を起こさず、スムーズに稼働するようにします。回転するなどの機構をもつ機械は、金属部品同士が擦(こす)り合い摩擦を起こすので、油がないとやがて高温になり変形し使えなくなります。摩擦が起こるような部品では、多くの場合油が使われ、摩擦を減らす、温度を逃がすなどの役割を果たします。
ただ油をさしただけでは、一時的に部品を油で潤わせますが、機械を使用すると漏れ出ていき、やがて油はなくなってしまいます。それでは、機械部品はやがて油を失い摩擦熱により高温になり、結局変形して使いものにならなくなります。そこで、一度充填した油を漏れ出ないようにするのがオイルシールです。
オイルシールは、通常は金属リングとゴムによって構成され、ベアリングのような形をしています。リングの中にはコイルが入っており、ゴムを外側に押すようになっています。機械部品のシリンダーなど摩擦する部分に油を充填し、その部分にオイルシールを取り付けることにより、油が漏れるのを防ぎながらも、機械部品がスムーズに動くように出来ます。このコイルがゴムを押し出すように働くことで、機械部品にがっちりと取り付き隙間をなくし、油が漏れないように出来ます。
このようにして、油が漏れ出るのを防ぐ役割を果たすのがオイルシールですが、機械によっては、油以外に、水・薬剤・ガスなどが漏れないようにふさぐ目的の部品もあります。またオイルシールは、内部から油が漏れないようにするだけでなく、外部から空気や埃などの異物が入らないように防ぐ役割もあります。ただ使用するオイルは、エンジンオイルなどと同じく、時間と共に劣化するので、いくら漏れないといっても定期的な交換は必要です。
オイルシールの各部位の名称と機能
オイルシールのメイン材料というと金属とゴムですが、Oリング(オーリング・密封に使用される断面が円形(O形)の環型をした機械部品)のような単純な構造ではなく、複雑にいくつか部品が使われています。メインの構造というと、「リップ」「シールリップ」「ダストリップ」「はめあい」です。リング状のオイルシールの内周と金属部品の接着部を「リップ」、外周と金属部品の接着部を「はめあい」と呼びます。
軸と穴という2つの部品を合わせたときの関係を「はめあい」といい、オイルシールの場合は、シールの外周と機械部品の関係です。通常はめるときは、部品と部品の間の隙間を、0.01mmなどわずかに間隔を空けます。これによって部品同士ががっちり食いつき動かなくなるのを防ぎ、わずかな隙間があれば、スムーズに動きます。オイルシールでは、外周部なので油が触れない部分であり、隙間があっても問題ありません。
「リップ」は、オイルシールの内周と部品の接着部分です。内周でも機械部品と接する場所は、リップ先端と呼ばれており、ここは機械部品との隙間をなくします。リップ先端は通常ゴムで作られており、内部にコイルスプリングを組み込むことで、機械部品に押し当て、隙間をなくしています。ゴムなので、多少弾力を持たせており、これによって隙間がなくても、機械部品がスムーズに動きます。ただ機械部品との接触部は、平坦でなくくさび状になっており、接触部を少なくして、ゴム摩擦を減らします。
「シールリップ」は、機械部品が動作することによる、振動や温度上昇、圧力上昇などによる影響を安定させる役割を持ちます。主に安定してリップ先端を密封するような役割を持ちます。さらに補助的な部品としてダストリップがあり、ここは、コイルが組み込まれておらず、主に外部からゴミや埃などの侵入を防ぐ役割があります。
その他に、リップ部分のゴムを固定し安定させる金属リング、オイルシールの正面部分のノーズ、裏側のバックフェイス、リップ部に付けるヘリックスがあり、へリックスは密封性を高め、オイルシールの寿命を高めます。
これらの部位によってオイルシールは構成されます。摩擦を起こすので高熱になりますが、油によって温度が下げられ、オイルシールの変形を防ぎます。また寿命としては一概に何回使用まで、何時間使用までとは言えず、それぞれの使う部位により違います。摩擦回数と温度が高くなるほど、寿命は短くなる傾向にあります。また圧力が高くなるほど寿命は短く、油より薬品を使う方が寿命は短くなりやすいです。
オイルシールが使用されている物
オイルシールはさまざまな部分に使われています。自動車や船のエンジン、サスペンションやショックアブソーバーなどの直動部分に使われます。その他、建設機械や工作機械、プラント、電化製品まで幅広く使われます。オイルシールの種類としては、回転用、圧力用、摺動(しゅうどう)用とあります。回転用は回転部分に使用し、圧力用は油の圧力がかかる部分に使用し、摺動用は直接的な動きの部品に使われます。
例えば車のエンジンであれば、オイルシールは60カ所ほども使われています。回転用や摺動用などと、各部分に適したオイルシールを使用し、油が漏れ出ないように防ぎます。身近なところでは、車やバイクのシャフトなどに使用され、メンテナンス時など、私たち個人でもオイルシールを目にする機会はあります。油の使う部分には通常使用されるので、ほとんどの工業製品に使われています。
オイルシールの交換方法
オイルシールは、ゴミや埃などの異物が大敵であり、交換時はこれらに注意して交換します。まずは新しいオイルシールを用意して、シールにゴミや埃が付いていないか確かめます。もしもオイルシールにゴミなど付いていれば、使用する潤滑油で洗い流します。布などで拭き取るようなことはしません。
古いオイルシールを取り外し、新しいものを、シールリップが密着させる部品の方を向くように向きを合わせて取り付けます。ハウジングへの装着は、組み込み治具を使い取り付けます。組み込むときは滑らかにするために、リップ先端部と取り付ける部品に潤滑油やグリスを薄く塗り、組み込む直前に塗布します。塗りつけたまま放置するとゴム部分が劣化するので止めましょう。重いシャフトなどだと軸を合わせるのが難しいことがあるので、道具を使い固定するといった工夫をします。
しっかりとオイルシールを組み込み取り付けた後は、一度機械の試運転をして、オイルが漏れないか確かめます。古い取り外したオイルシールは、破棄してかまいません。
新しいオイルシールを購入し用意したら、直射日光に晒さない、高温の中に置かないなど、使うまでは保管に気を付けます。これらの環境の悪い中で保管すると、ゴムを劣化させます。また取り付け前には、ゴムが割れていないか確かめます。カッターなどを使い箱から取り出し開封して製品を取り出すと、刃先でゴムを傷つける場合があるので注意します。暖房やヒーターなどのそばにも置かないようにしましょう。
オイルシールは機械に欠かせない重要部品
オイルシールは、潤滑油の漏れを防ぐ役割を果たす部品であり、潤滑油が必要な機械で使われます。金属とゴムで構成されたリング状の部品であり、ゴムによって潤滑油の漏れを防ぐ構造となっており、中にはコイルスプリングが組み込まれています。潤滑油が漏れてなくなれば、機械部品が摩擦熱で変形して使いものにならなくなることもあるため、重要な部品です。車やバイクなどにも使われており、メンテナンスするときに、自分で交換することも出来ます。
制作:工場タイムズ編集部