自動車検査員とは?
まずは自動車検査員とは、どのような人のことを指すのか確認しておきましょう。
自動車を車検に出す際に利用する施設のことを一般的には車検場と呼びますが、正式には指定整備工場(民間車検場)といいます。指定整備工場では、法令で義務付けられている車検だけでなく、車に不具合が発生した際の検査や修理も行っていることから、それらの作業ができる人が常に在籍していなければなりません。
自動車検査員とは、指定整備工場で行われているこれらの業務のうち、検査を担当する人のことを指します。指定整備工場では自動車検査員を配置することが義務付けられているため、自動車検査員に対する社会的ニーズは非常に多くなっています。
また、自動車検査員の仕事は国が行うこととなっているため、その作業は公務員が行うのが本来の状態です。しかし、実際には公務員ではなくても国家資格である自動車検査員の資格を持っていれば、同様の作業を行えるようになっているのです。
そのため、自動車検査員は「みなし公務員」という位置付けがされており、刑罰に関しては公務員と同等の処遇を受けることになっています。よって、例えば公務員に課される守秘義務が守られなかった場合にはそれ相応の罰則が科されますし、逆に職務中にそれを妨害された場合には相手に対して公務執行妨害罪を適用することもできます。
自動車検査員の仕事内容
自動車検査員の主な仕事は自動車の検査ですが、それに関係する業務も行います。自動車検査員の詳細な仕事内容としては、以下の通りです。
完成検査
自動車検査員が行う自動車の検査業務のことを、「完成検査」と呼びます。その主な内容は、整備士によって整備がされた状態の自動車を点検すること。
この業務は、その自動車が検査基準をクリアし、道路を走ってよい状態にあるのかを判断することが最終的な目的のため、正確な判断基準を覚えることもまた自動車検査員には求められます。
業務指導、監督
ある程度実績を重ねた自動車検査員は、他の自動車検査員をまとめ、検査方法について指導・監督することも仕事のひとつ。また、自動車の持ち主に事故防止のための指導をすることや、検査結果について説明することも自動車検査員の仕事です。
書類の作成や保管
自動車の検査を行ったら、その結果を書類にまとめ自動車の保有者に見てもらいます。そのため、このような書類の作成も自動車検査員の仕事のひとつとなっています。また、作成した書類の中には整備工場側で管理するものもあるため、それらが流出したり紛失してしまわないよう厳重に保管することも自動車検査員の仕事です。
検査設備の管理
自動車の検査を行う際にはさまざまな検査設備を使いますが、それらに故障が生じてしまうと正確な検査結果が出ないことがあります。このことから、常に正確な検査ができるよう検査設備の管理を徹底し、故障が生じた場合はすぐに修理や買い替えを行うこともまた自動車検査員の仕事のひとつです。
法令や通達などの情報の把握
自動車検査では、法令の改正や国からの通達によってその基準が変更されることがあります。そのため、それらの最新情報を常に把握し、検査に反映させていくこともまた自動車検査員には求められます。
自動車検査員と整備士の違い
自動車検査員と整備士は共に車検場で働いているというイメージが強いことから、その仕事内容を混同している方も多いことでしょう。しかし、自動車検査士と整備士にははっきりとした違いがあります。
まず、整備士の仕事とは主に自動車の修理、改造といった自動車に直接触れる作業であり、その対象ははっきりとした故障箇所のある自動車となります。また、その故障箇所を見つけるための点検を整備士が行うこともあり、整備士には故障箇所を直すための十分な知識や技術が必要です。
それに対して自動車検査員は、整備士によって修理がされた自動車が正常な状態にあり、問題なく走行できるのをチェックすることが主な仕事です。そのため、故障箇所を修理するための知識・技術は必要なく、正しい検査方法とその基準を覚えなければなりません。
以上のように整備士と自動車検査員は、その仕事内容においてはっきりとした違いがありますが、自動車検査員の資格を取得するためには整備士の資格を取得しなければなりません。そのため、自動車検査員は整備士としての仕事も行えるようになっていることから、多くの職場では自動車検査員が整備士を兼任しているという事実もあります。
そのため、整備士としての就職を希望されている方は、自動車検査員の資格を取得したほうがより就職がしやすくなり、場合によっては自動車検査員の資格保有者を対象とした手当をもらうこともできます。
自動車検査員になるには?
自動車検査員になるためにはいくつかのステップを踏む必要があります。続いてはそれらを順にご紹介します。
整備士の資格を取得する
自動車検査員の資格取得のための条件としては、2級整備士もしくは1級整備士の資格を所有していることが決められています。そのため、自動車検査員になるためには、最初に1級もしくは2級の整備士資格を取得しなければなりません。
また、整備士の資格を取得する方法としては、国が指定する自動車整備の専門学校を卒業する方法や、国の指定を受けた認証工場などで階級ごとに決められた実務経験を積む方法があります。
自動車検査員の資格を取得する
階級にもよりますが、整備士の資格を取得するためには1年以上の期間を要する場合もあるため、自動車検査員になるために整備士の資格取得から始める方の場合、すぐに自動車検査員になることはできません。
また、自動車検査員になるためには指定自動車整備業の指定を受けている事業所での整備主任者としての1年以上の実務経験も必要となることから、整備士になればすぐに自動車検査員になれるということもありません。よって、自動車検査員になるためには整備士になったあと、まずは整備主任者になることを目指しましょう。
整備主任者として1年以上の実務経験を積んだら、いよいよ自動車検査員の資格取得試験を受けることとなります。この試験は50~70%以上が合格ラインといわれており、しっかりと勉強をしていれば難しくはないでしょう。また、受験に際しては自動車検査員教習を受け、その修了試験に合格する必要もあります。
地方運輸局に届出をする
試験に合格し、自動車検査員の資格を取得したら、地方運輸局に届け出を行いましょう。これが受理されると、晴れて自動車検査員として働くことができるようになります。
自動車検査員は、車の整備の最終責任者
自動車検査員は整備士の資格取得から始めることを考えると、十分な勉強と実務経験が必要となることから、年単位での膨大な時間がかかってしまうこともあります。しかし、これは自動車検査員が自動車の整備の最終責任者という重要な立場に置かれるためでもあり、資格取得のためには十分な忍耐力も必要なのです。
制作:工場タイムズ編集部