ここ数年、アクティビティとしても人気の高い工場見学。いつか取材に行きたいなーと思っていると・・・<br> <br> 6月某日、工場タイムズ編集担当S氏より電話が!
どうやら、S氏の自宅近く = 杉並区で「近々清掃工場の見学会がある」とのこと。
「 “外国人”向けの見学会が近々開催されるんですよ~」「どんな目的なんでしょうね?」というS氏に、さあどうなんで・・・と言いかけると・・・
「留学経験があって、英語を話せる松宮さん(本記事ライター)しかこの取材を頼めないと思って!じゃ、英語でお願いしますね~」と、S氏はサラッとものすごいプレシャーをかけてきます。
英語といっても、渋谷で中国人に「オススメの店はどこか?」と聞かれ、「I recommend Marui.(丸井がオススメです)」と話して以来、1年以上使ってない。
不安いっぱいですが・・・ジェスチャーでなんとかなるだろうと思い直し、行ってみることに!
人気の住宅地にある「杉並清掃工場」へ
見学会当日。「杉並清掃工場」の最寄りである、京王井の頭線「高井戸」駅へ。
“清掃工場”というと、「駅から離れている」というイメージでしたが、徒歩5分ほどで到着。
東京の住みたい街No.1・吉祥寺からも電車で10分ほど。人気の住宅地である高井戸の駅近にこんな巨大な清掃工場があるとは!
調べてみると、杉並区内にある24カ所の候補地から検討を重ね、現在地に決定。1982年に完成しました(すぎなみ学倶楽部HPより)。
老朽化に伴って2017年9月にリニューアルオープンしたというだけあり、とてもきれい。館内にはまだ真新しさが残っています。
まずは、外国人向けの「清掃工場見学会」を主催している「杉並区交流協会」の方に突撃取材!
見学会の主催者を直撃!
同協会は杉並区に住む外国人に向け、日本語教室やイベントを開催しているそうです。
川上さんによると、杉並区に在住している外国人は「17,037人(2018年5月末調べ)」。中国・韓国・ネパール出身がトップ3で、104カ国の人々が同区内に暮らしています。
今回は、交流会で外国人から「ごみの分別がわからない」「清掃工場を見学してみたい」という声が上がったのがきっかけで「見学会を開催することになった」とか。「外国人にも、ごみの分別を促す目的で開催しました」と川上さん。
清掃工場の外国人向け見学会は「今回がはじめて」。今後の開催は「アンケートの結果を見て検討する」そうです。
川上さんにお礼を言い、集合場所へ!
超満員御礼!見学会がスタート
取材当日はあいにくの雨。何人くらい参加するんだろう、と思っていると・・・
中には、青いジャージを着た中学生くらいの団体もいます。
どこかの学校かな? と思い先生らしき日本人の男性に聞いてみると、団体は杉並区にある「Everest International School Japan(エベレスト・インターナショナルスクールジャパン)」。
なぜ杉並区に学校があるのか先生に尋ねると、「近隣にネパール&インド料理レストラン(スタッフはほぼネパール人)が多く、コミュニティのつながりがあるから」だそうです。知らなかった。
ふと周囲を見回すと、いつの間にか60人ほどが集まり、ほぼ満席になっています。
と、ここで壇上に工場長が登場。
「こんにちは」に続いで「Hello,everyone.(みなさんこんにちは)」と英語であいさつし、外国人の心を鷲づかみに。工場長、さすがです。
次に「後ろに集まってください!」と声が掛けられ、立ち上がる一同。
日本人でも難しい?「ごみの分別」に挑戦!
テーブルにはペットボトルや缶、靴などが並んでいます。グループに分かれ、「杉並区のルールに従って分別をしてください!」とグレーの帽子&作業着に身を包んだ杉並清掃事務所の職員の方。
普段の見学では「ごみの分別」は行いませんが、今回は外国人向けなので「スペシャルバージョン」なんだそう。
皆で相談したり、職員の方に質問したりしながら、ワイワイとごみを「不燃・可燃・古紙・ペットボトル・プラスチック」などに分別します。
・・・約10分後。タイムアップ!
解説を聞きながら、答え合わせを行います。
今回、松宮がはじめて知ったのは、“杉並区ルール”で「靴は可燃ごみ」「使い捨てカイロは不燃ごみ」「みかんの網は“プラスチック”ごみ」だということ!
モニターで解説&答え合わせが始まると「おおー!!!」と歓声が。「当たった!」ハズレた!」と一気に盛り上がります。
「ごみは焼却して処分するだけではなく、大切な資源としてさまざまなものにリサイクルされています」と職員の方。
「ペットボトルから(職員の方の)作業着が作られている」「牛乳パック6つでトイレットペーパー1ロールができる」と聞き、リサイクルに関しても知らないことが多いんだな・・・としみじみ。
「少しでも焼却やリサイクルを増やし、埋め立て処分場を長く使えるように分別を行っている」という解説をみんな真剣な顔で聞いています。
人数が多いため、2つのグループに分かれます。会議室から出て、工場の入口へ!
設備がクール!近未来的な「清掃工場」
みんな「これからどんなところに行くんだろう?」と緊張&ワクワクが入り交じった顔で工場職員の方に続き、歩きます。
3Fにある工場の入口に到着。見学ルートの説明を受け、いよいよ中へ!
10人が横一列に並んで入ることができそうな巨大な扉の前に立っていると・・・
真新しく、グレーを基調とした塵ひとつない廊下は「近未来感」を醸し出しています。
第一の見学スポット「プラットホーム」に到着。
ここは「収集車が可燃ごみをごみバンカ(ごみをためておく場所)に投入するところ」なんだそうです。
1日に来る収集車の数はなんと、550台で700トンものごみを収集して来るんだとか!これは、平均的なごみの体積である1トンあたり約3.33㎥を基準に計算すると、「25m×12m×1mプールの 7.77杯分」もの量。
ちなみに、1台約1.5トンのごみを収集できるそうです。ゲートは1~9まで。「空いている場所」をコンピューターで管理し、電光掲示板でドライバーに知らせているとのこと。
収集車はプラットホームから進入し、ごみをバンカに入れます。が、そこにはストッパーはあるものの、「バックし過ぎると、バンカに落下してしまう」そうです。恐い・・・。
ごみの中に収集車がバンカに気づかず落ちてしまうという事故は「今までにない」とのこと。しかし、落ちてしまったら「有毒ガスが発生しているので、非常に危険」なんだそう。想像するだけで一気に体温が下がります。
ごみのにおいが充満し、体にもついて取れないため「ドライバーはお風呂に入ってから帰宅するんですよ」と説明する職員の方。
しかしこちらはガラスで区切られているため、まったくにおいがしません。
思わぬ知識を得たところで、「ごみバンカ」へ!
動く巨大クレーンに大興奮!
一同、「ごみバンカ」に到着。
職員の方によると、「ごみバンカは底から(深さ)約25mあり、最大7,400トンものごみが貯留できる」そう。
貯留されたごみは超巨大クレーンでかき混ぜ、均一化した後に燃やされます。
すると、一様に「おおお~!!!」と歓声が。
やはり人間は「動きのあるもの」に引かれるのは、本能なのかもしれません。
「次に行きますよ~!」と職員の方。みんなごみクレーンを見ながらも、ぞろぞろと歩いていきます。
大・大・大人気の「焼却炉」
800℃以上の高温で24時間「ごみを燃やし続けている」という焼却炉。燃焼ガスを2秒以上滞留することで、ダイオキシン類などの発生を抑えているそうです。
と、ここで「焼却炉が開いているのは1分だけなので、急いでください!」(by職員の方)と緊急アナウンスが!
急いで焼却炉の方へ行くと・・・
メラメラと燃え上がる炎に大興奮!
・・・やはり人間は、クレーンのような“動くもの”と“迫力あるもの”にも引かれるのかもしれない・・・という結論に至りました。
「見たら後ろの人と交代してくださーい!」という声に促され、みんな名残惜しそうに「焼却体験ゾーン」へ。
クレーンからごみが投入され・・・
人間のプリミティブ(原始的)な本能に訴えかける炎をずっと見ていたい・・・と思いつつも、次の場所へ。
宇宙とつながる?「中央制御室」
・・・ここ「中央制御室」は、スタイリッシュ&近未来的な雰囲気。
昼と夜の2交代制。人の目で24時間監視しているそうです。ちなみに昼は8時間、夜は16時間の勤務なんだとか!
これは、一般家庭の「約6万世帯の電力使用量に相当する」そうです。
排ガスは「ろ過式集じん器」で水銀やダイオキシン類などを除去。「触媒反応塔」で窒素酸化物などを分解します。
外国人が見た「杉並清掃工場」
・・・1時間ほどで見学会は終了。
さまざまな工程を経て、ごみが処理されているんだな、と実感することができました。
続いて、参加した外国人は「日本の清掃工場をどう思ったのか」インタビューを敢行!
日本語でどうだった? と聞いてみると、「クレーンがすごかった!」「Fire(焼却炉)がおもしろかった!」という感想。
次に見学中は熱心に本格的な機材で動画を撮影し、質問をしている姿が印象的だった男性に声をかけることに。
そういえば、見学中は通訳の方と一緒だったな・・・と思い出し、意を決して「H,Hello(こ、こんにちは)」と話かけます。
現在は、「杉並区交流協会」にある日本語教室で日本語を勉強しているそうです。
「もともと環境問題に興味があった」というスペイン人のフランシスコさん。
今回は、「日本語教室で見学会を知って参加した」そうです。「日本の清掃工場はとてもきれいだし、システムが整っていて興味深かった」とのこと。
なんとかインタビューを終え、続いて女性にインタビュー。
日本語がとても流暢なのに、「わずか3年前に来日した」と聞き、びっくり!
チェさんは「(協会からの)メールで見学会を知り、1人で参加した」そうです。「外国人なので、ごみの分別方法がわからない。でも私は主婦だから、知りたいと思って参加したんです」とのこと。
韓国でも(チェさんのお住まいの地域では)きちんとごみの分別を行っているのだそうで、なかなか知る機会もない韓国のごみ事情を聞くことができました。
見学会の感想をうかがうと、「清掃工場なのにイメージしていたのと違い、とてもきれいで驚きました!印象に残ったのは、クレーンと焼却炉です」とチェさん。
ごみの山を目の当たりにし、初めて“その量”を実感できた今回の取材。ごみの処理に多くの人々が関わり、さまざまなプロセスを経ているのだなと考えさせられました。日本人向けにも工場見学が開催されているので、ぜひチェックを!
東京二十三区清掃一部事務組合:工場見学&イベントスケジュール
http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/cgi-bin/event_cal/cal_month.cgi
杉並区交流協会
http://suginami-kouryu.org/
取材・文:松宮史佳/写真:工場タイムズ編集部
写真提供(一部):杉並区交流協会