金属部品のひとつである「バルブ」。意外にもその歴史は古く、なんと紀元前1000年ごろの古代エジプトの遺跡からもその原型が発見されるほど、昔から生活で活用されていたとか。
現在では、バルブは水道の蛇口に使われていることがよく知られていますが、必ずしも水に関連するものだけではなく幅広い活用範囲も魅力。今回は、このバルブの持つ役割や種類、用途などについてご紹介したいと思います。
バルブってどこの部品?
配管工事などの仕事をされている方にとってバルブはおなじみの存在ですが、一般的にはバルブが活躍する場とその活用範囲の広さは知られていないのではないでしょうか。
バルブが水道の蛇口に使われていることはよく知られていますが、実は水に関わる設備のみに使用される部品ではありません。水のような液体だけでなく、気体に対しても使用することができる部品なんです。
バルブの持つ主な機能として、水をはじめとした液体、または気体の流れを調整することがあります。たとえば水道の蛇口では、水道管内に設置されたバルブの働きによって蛇口から出てくる水の量が調整されています。また、バルブの持つこのような調整機能をガスや蒸気などにも作動させることができるため、ガス栓やボイラーなどにもバルブは使われています。
このバルブは用途に応じて「弁」や「栓」などと呼ばれることもあります。具体的な例としては、バルブ自体の用途や形式、種類などが名称についた「玉型弁(たまがたべん)」や「二方弁(にほうべん)」、気体と液体の総称である流体の量を制御する「給水栓」や「ガス栓」、「消火栓」などがあります。
バルブの役割と用途
このようにバルブは、さまざまな製品や設備において利用されています。バルブが使われている製品や設備の具体例をいくつか挙げ、バルブがそこで果たしている役割や用途がどのようなものかみていきましょう。
水道
水道の蛇口は最も身近なバルブを使用した設備のひとつといえますが、その内部の構造はどのようになっているか知っていますか?
家庭の水道では主に「単水栓」と呼ばれるバルブが使われていますが、最近では壁面に取りつけができる「横水栓(よこすいせん)」やお湯を混ぜることによって水温調整が可能となる「湯水(ゆみず)混合水栓」なども家庭の水道では多く使用されるようになっています。これらのバルブは内部を通過する水の量を調整できる構造になっていて、水道の持つ機能のとても重要なもののひとつです。
また、水道を利用するには蛇口だけでなく上下水道や水道メーターも重要な設備ですが、これらの設備にも「逆止弁(ぎゃくしべん)」や「調整弁」などのバルブが使われています。このことから水道を問題なく使用する上で、バルブは不可欠な存在といえるでしょう。
空調
液体だけでなく気体の制御にも活用することができるバルブは、エアコンをはじめとした空調にも幅広く利用されています。特に、室内の温度調整で使用される冷房や暖房、あるいは工場などに設置されている大型の冷蔵庫内での温度管理には「逆止弁」などのバルブの働きが重要です。場合によって特殊な形の継手と合わせて使い、その効果を高めていることもあります。
機械類
バルブの中でも特に油圧式のものは、エンジンにも使われています。そのため、車をはじめとしたエンジン可動式の機械類には、ほぼ例外なくバルブが利用されていると考えて問題はありません。また、工場でのさまざまな製品の製造に使う機械類にも、油圧式のバルブが多く使われています。そのため、バルブは工場の稼働には欠かせない存在といえるでしょう。
このほか、バルブの中には蒸気の放出量を調整できるものなども存在することから、多くの機械類の稼働ではバルブの働きが応用されています。
バルブの主な種類
バルブは水道、空調、機械類など、実に多くの設備や製品で使われているので、さまざまな機能を持つ種類が存在します。そのうちの10種類を挙げ、使われている場所や機能などを詳しくご説明します。
グローブ弁
ニードル弁、アングル弁などの名称で呼ばれることもある「グローブ弁」は、弁箱の部分が玉形になっていて弁内の入口と出口の中心が一直線上にあるため、内部での流体の流れがS字状になるという特徴があります。そのため、グローブ弁は締め切り性能が特に優れており、また流量調整がしやすくなっています。
バタフライ弁
円筒状の弁箱の中に軸を中心にした蝶の羽のような形状の弁がついたバルブを、「バタフライ弁」といいます。この弁には漏洩形や低漏洩形、無漏洩形の3種類が存在し、それぞれが持つ機能による汎用性の高さは大きな特徴です。
逆止弁
流体の圧力がかかることによって、その逆流を防ぐために使われるバルブが逆止弁です。このタイプのバルブには、「バタフライ逆止弁」や「デュアルプレート逆止弁」などの種類が存在します。
ボール弁
穴が開いた球形の弁体が、弁箱の内部に設置されているバルブを「ボール弁」と呼びます。このタイプのバルブは流路が一直線になっているため、バルブを全開にした際に流体の抵抗が大きくなりすぎないというメリットがあります。
ゲート弁
弁が流体の通路を仕切る形になっているバルブを、ゲート弁、もしくは仕切弁と呼び、「パラレルスライド弁」、「ウェッジ仕切弁」、「ダブルディスク仕切弁」、「ベンチュリポート仕切弁」などがこのタイプに該当します。シンプルな構造が特徴的なゲート弁は、流体抵抗が小さいというメリットがあります。しかし、弁を半分しか開けないと弁体振動が発生するため、全開もしくは全閉して使われます。
ダイヤフラム弁
内部のダイヤフラムと呼ばれる箇所と弁箱で流路が作られており、ダイヤフラムを弁箱に押しつけたり離したりして流量を調整するバルブを「ダイヤフラム弁」と呼びます。そのためダイヤフラム部分にある程度の柔軟性が求められることから、高温・高圧に弱いというデメリットがあります。
安全弁
蒸気やガスを使用する機器において、安全性を確保するために使われるのが「安全弁」です。このバルブは、入り口側の圧力が高まると自動的に蒸気やガスを放出する仕組みになっています。
調整弁
圧力や流量、温度などを調整するバルブを「調整弁」と呼びます。このタイプのバルブには直動式とパイロット作動式の2種類あり、内部に玉形の弁があるものが一般的です。
単水栓
日常でよく使われているバルブのひとつである水道の蛇口の中でも、最も一般的で簡易的なものを「単水栓」と呼びます。このタイプは簡易的なものであることから、お湯と水を混ぜて水温調節を行うといった少し複雑なことはできないというデメリットがあります。
湯水混合水栓
給水管と給湯管に接続し、お湯と水を混ぜて水温調整ができるバルブを、「湯水混合水栓」と呼びます。このタイプには2ハンドル式やシングルレバー式、ミキシング式、サーモスタット式などの種類があり、今では多くの家庭で使われています。
バルブは工場の稼働を支える重要な部品のひとつ
今回は気体や液体を問わず、その流量を調整する上で欠かせない、バルブについてご紹介しました。
バルブは水道に使われていることから、一般家庭の中でもほぼ例外なく使われている部品といえます。一方、工場では水道だけでなくエンジン式の機器の稼働や蒸気、ガスを使用した機器の安全確保などにおいても幅広くバルブが使われていることから、その重要性は一般家庭とは比べ物ならないほどです。そのためバルブは、工場の稼働を陰で支えている重要な部品のひとつであるといえるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部