自動車や航空機、各種家電など、身近にはさまざまな高性能な機器が溢れていますが、それらの内部構造まで詳しく知っている方は多くありません。
特にこれらの機器の部品のなかでも「ベアリング(bearing)」と呼ばれるものを知っている方は少ないでしょう。
ここでは、これらの機器の高い性能を根幹で支えるために開発されたベアリングについて解説していきたいと思います。
ベアリングとは?
まずはベアリングが担っている役割などの基礎知識について解説していきたいと思います。
ベアリングとは簡単にいってしまうと、回転するものの軸を支える機械部品の総称で、日本語では「軸受」と呼ばれることもあります。回転するものとは、具体的には車輪、歯車、タービン、ローターなどのことを指し、ベアリングは製品内でこれらの動きを支える働きをしています。
ベアリングが担っている役割は具体的にいうと、上述した車輪や歯車などの部品が自由に回転をしたときに、回転軸を正しい位置に保持することと、ものを動かすときに発生する摩擦を軽減することです。特に摩擦が大きいと動力損失が増すだけでなく、温度上昇によって障害が生じることもあるため、それらを防ぐという意味でもベアリングの高い技術が担っている役割は非常に大きいことが分かります。
ベアリングの種類
ベアリングは主に「すべり軸受」と「ころがり軸受」の2種類に分類することができます。続いてはこれら2種類のベアリングの特徴を見ていきましょう。
まずはすべり軸受についてです。すべり軸受の機能には、軸と軸受の間に薄い膜を作り、潤滑油などを入れて滑らせながら回転させるという特徴があります。これにより、軸と軸受を広い面で接触させることが可能となるため、大きな荷重にも耐えられるようになります。
一方でころがり軸受は、軸受の内輪と外輪の間に転動体(玉やころ)を入れて回転させるという特徴があり、これによりすべり軸受より軽快に回転するというメリットもあります。また、ころがり軸受の形状は国際的に統一されており、広く製造されている点も大きな特徴です。
ころがり軸受は「玉軸受(ボールベアリング)」と「ころ軸受(ローラーベアリング)」の2種類が存在し、軸受の内輪と外輪の間に玉を入れたものを玉軸受、玉ではなく「ころ」を入れたものをころ軸受と呼びます。また、特に玉軸受のなかでも「深溝玉軸受」は、世界的に広く普及しており、世界中のメーカーが採用・生産しているという特徴もあります。
ベアリングの主な活用例
最後にベアリングが活用されている製品の例と製品内での使用例をいくつかご紹介します。
航空機では航空機の心臓部からエンジン後方のアフターバーナ部、ギアボックスなどのシステムを支える目的でベアリングが使用されています。この箇所ではさらに円筒ころ軸受、深溝玉軸受なども使われています。
一方で自動車の場合は、エンジン、コンプレッサ、油圧装置などさまざまな箇所でベアリングが使用されており、その数は100以上にも上ります。また、その種類も多岐にわたっており、深溝玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受などが使用されています。
また、風力発電機でもベアリングは使用されています。風力発電機のなかでも、ブレードに受けた風による荷重を受け止め、主軸を支える重要な部位には特に高い耐久性が求められるため、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受などのベアリングを採用しています。
これら以外にもベアリングは複写機や印刷機をはじめとした事務用品、冷蔵庫や洗濯機をはじめとした家電製品にも付き、幅広く使用されています。また近年流行した「ハンドスピナー」という高速で回るおもちゃもベアリング部品でできています。
まとめ
このように、単にベアリングといってもその種類は豊富に存在し、それぞれに異なる特徴があります。また、それらの特徴の違いを活かし、ベアリングは身近な製品の多くに使用されており、私たちの生活を陰で支えているといえるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部