アジアのタイヤメーカーの台頭で、タイヤ業界が熱気を帯びています。しかし、日本のタイヤも世界シェア№1のブリヂストンをはじめ、その性能は以前から高く評価されています。
近い将来、自動運転車の時代が来ようとも、安全な運転を行うためには、信頼性の高いタイヤの存在が欠かせません。
今回は、タイヤの基礎知識や製造工程、進化を続ける新商品のタイヤについてご紹介します。
上手に付き合うために!知っておきたいタイヤの基礎知識
あまり車に詳しくない人からすると、タイヤの違いは見た目だけではわかりにくいかもしれません。そこで、タイヤの種類や選び方についてお伝えします。
タイヤの部分と役割
タイヤにも部分ごとに役割があり、地面の衝撃から内部を守る「トレッド部」、走行時に出る熱を発散させる「ショルダー部」、側面にあたる部分で遠心力に耐える「サイドウォール部」(メーカー名などが記載されているところ)、車輪状のホイールと組み合わさり、リム(タイヤに接するホイールの部分)とタイヤを固定させる「ビード部」などがあります。
タイヤの種類
タイヤの種類は大きく2種類に分けられます。1つは、乗り心地がよい代わりにグリップ(摩擦)力に劣る「コンフォートタイヤ」。もう1つは、グリップ力が高い代わりに静粛性などが劣る「スポーツタイヤ」です。現在では環境に配慮した「エコタイヤ」も誕生しており、地面との摩擦を少なくして低燃費を実現しています。また、スリップしやすい雪道をはじめ、特殊な道の運転に向いている「スタッドレスタイヤ」もあります。
タイヤの上手な選び方
タイヤを選ぶ際には、サイドウォールに記載されている数字やアルファベットを確認してみましょう。サイドウォールにはメーカー名以外にも、タイヤ幅や偏平率、強度などが記載されています。静かな音で快適なドライブを楽しみたい人はコンフォートタイヤ、ドライビングにこだわりたい人はスポーツタイヤというのが一般的なおすすめですが、タイヤショップの人と話し合いながら好みや目的に応じて選ぶのが良いでしょう。
タイヤは工場でどう作られてるの?
続いてはタイヤ工場で行われているタイヤの製造工程についてお伝えします。
材料の混合
まず、タイヤの原料となる天然ゴムや合成ゴム、硫黄、カーボンブラックなどを専用の混合機で混ぜ合わせ、練って板状にします。
材料の加工
板状になったゴムを使って、それぞれトレッド部、カーカス部、ビード部の3つの部分に加工していきます。
トレッド部
地面に直接触れる部分であるトレッド部は一度冷却し、専用の型で押し出した後、タイヤ1本分の長さに切断します。
カーカス部
タイヤを支える骨格にあたるカーカス部は、練ったゴムをタイヤコード(タイヤの形状を保持する補強材)にかぶせ、タイヤの幅に合わせて切断していきます。
ビード部
ホイールとタイヤを接合させるために必要なビード部は、並べたビードワイヤー(リムの補強に使う高炭素鋼線)をゴムで包んで押出機で押し出した後、ビード成形機でリング状に巻き取ります。
成型
出来上がったそれぞれのパーツを成形機で1つに組み合わせて、「生タイヤ」(グリーンタイヤ)と呼ばれるタイヤの原型を作ります。
加硫
生タイヤを金型に入れて「ブラダー」と呼ばれる専用の圧縮装置を使って加熱と圧力をかける加硫を行います。金型から出すときには、弾力性と耐久性のあるタイヤが完成しています。
検査
出来上がったタイヤに傷や歪みなどがないかを確認するとともに、タイヤに空気圧を充填(じゅうてん)させて耐圧検査などを行い、問題がなければ商品として出荷されます。
技術の進歩が止まらない!最新のタイヤ事情
最後に、最新のタイヤ事情についてお伝えします。車とともにタイヤも進化しています。
疲れにくいタイヤ
ブリヂストンは、2016年に新シリーズのタイヤ「Playz PXシリーズ」を発表しました。Playz PXシリーズは、これまでのタイヤにはなかった「運転手の疲れにくさ」にこだわったタイヤとなっています。道路の凹凸などの影響で走行中の車は左右に動きます。これに対処するため、ドライバーは無意識のうちにハンドル操作を行っているのですが、これが疲れの原因の一つになっています。Playz PXシリーズは、ブリヂストン独自の技術でハンドル操作を少なくすることに成功、疲れにくさを実現しました。
球型タイヤ
アメリカの大手タイヤメーカーのグッドイヤーは、2016年に球型のタイヤである「Eagle-360」を開発しました。現在使われている車輪が回転するタイプのタイヤとは違い、タイヤ自体が球の形になっていて、磁気の力を利用してタイヤを回転させる仕組みになっています。また、組み込まれたセンサーにより、危険を察知して制御システムが作動する機能も搭載されています。実用化される日が待たれます。
ほかにも、レーシングカーの技術を取り入れてダイナミックな運転が楽しめる高性能のスポーツタイヤや、環境に配慮した小型トラック用の低燃費タイヤなど、各メーカーからは新商品や新シリーズが続々誕生しています。
より快適で安全な走りを目指し、進化するタイヤ
運転していても、助手席や後部座席に乗っていても、走りが軽やかで疲れない車があります。それは、車の性能やサイズだけでなく、良いタイヤを使っていることが大きな要素としてあります。今回はタイヤの種類や製造工程についてお伝えしましたが、より快適で安全な走りを実現するために、タイヤメーカー各社の研究が続いています。タイヤの製造工程に興味がある人は、工場見学を受け付けているメーカーがあります。工場見学の中でも人気ジャンルの一つなので、一度出掛けてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部