工場で働く上で取得しておくと役に立つ資格はいくつもありますが、その一つに「特定化学物質作業主任者」があります。
漢字が並んでいて難しい資格のように見えるかもしれませんが、簡単に言うと、健康を害するおそれのある化学物質から労働者を守ることが仕事です。
しかも、講習を受けるだけで比較的容易に取得できます。
今回は、特定化学物質作業主任者の概要や仕事内容、資格の取り方についてご紹介します。
特定化学物質作業主任者とは?
まず特定化学物質作業主任者の概要をお伝えします。特定化学物質作業主任者は全国の工場で活躍をしています。
国家資格で必置資格
特定化学物質作業主任者とは、ガンなどを発症させるおそれのある特定化学物質から労働者を守るのが仕事で、厚生労働省が認定する国家資格です。現場では作業環境の改善や作業方法の指導を行います。「必置資格」として、特定化学物質を取り扱う現場では必ず特定化学物質作業主任者を設置しなければならないと法律で定められています。そのため、資格取得者は社内で重宝されると同時に就職や転職でも有利になるでしょう。
特定化学物質とは?
労働安全衛生法によって、労働者に健康障害を発生させる可能性が高い物質として定められた化学物質のことです。特定化学物質には第1類から第3類までがあり、なかでも第1類に分類されている物質は特に有害性が高く、厚生労働省の許可がないと製造できないことになっています。
主な特定化学物質は次の通りです。【第1類:特に有害性が高い化学物質】ジクロルベンジジン塩素化ビフェニルジアニシジンベリリウムなど
【第2類:第1類ほどではないが、有害性が高い化学物質】アクリルアミドアルキル水銀化合物エチルベンゼン塩化ビニル塩素カドミウムクロロホルムコバルトコールタールシアン化ナトリウムヒ素マゼンタ硫化水素など
【第3類:大量に漏れると急性中毒を起こす化学物質】アンモニア一酸化炭素塩化水素硝酸二酸化硫黄フェノールホスゲン硫酸
どんなことをするの?お仕事の内容が知りたい!
続いては、特定化学物質作業主任者の仕事内容についてお伝えします。
特定化学物質作業主任者の3つのお仕事
1)特定化学物質を取り扱っている現場で作業員が汚染されてしまわないよう、作業方法の決定や指導をする。
2)作業に使用する安全保護具の使用状況を監視する。
3)作業員を健康障害から守るために使用する「予防装置」を、1カ月を超えない期間ごとに点検する。
予防装置の種類
3番目の仕事内容にある「予防装置」には、次のようなものがあります。
局所排気装置
有害物質の発生源の近くで空気を吸い込み続け、気流をつくることで周囲に拡散しないようにする排気装置
プッシュプル型換気装置
有害物質の発生源を挟む形でフードを向き合うように2カ所に設け、片方のフードから空気を吹き出して(プッシュ)、もう片方のフードで有害物質を吸い込む(プル)換気装置
排ガス処理装置
有害物質を含んだ気体を無臭・無害化するために除塵や分離などを行う処理装置
特定化学物質作業主任者になるには?
最後に、特定化学物質作業主任者の資格を取得する方法についてお伝えします。資格取得は比較的容易です。
資格の取得方法
特定化学物質作業主任者の資格は「特定化学物質及び四アルキル鉛(しあるきるなまり)等作業主任者技能講習」という講習を受けるだけで取得できます。講習を受講するために必要な資格も特にないため、未経験者でも取得しやすい資格となっています。
講習の内容
講習期間は2日間で、講習科目と時間数は次のようになっています。
健康障害及びその予防措置に関する知識(4時間)
保護具に関する知識(2時間)
作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
関係法令(2時間)
修了試験(1時間)
2日目の最後には修了試験があり「各科目の得点が満点中40%以上の得点率」「全科目の合計得点が満点中60%以上の得点率」という2つの条件を満たせば合格となります。講習は「公益社団法人 東京労働基準協会連合会」が実施していますので、Webサイトから申し込んでください。
四アルキル鉛等作業主任者とは?
講習名にある「四アルキル鉛等作業主任者」とは、四アルキル鉛の汚染から労働者を守るのが役目です。四アルキル鉛とは別名「テトラエチル鉛」とも呼ばれている特異臭を放つ特定毒物で、特定化学物質とは別物です。平成18年3月までは「特定化学物質作業主任者」と「四アルキル鉛等作業主任者」はそれぞれ別の講習を受けなければ取得することができなかったのですが、制度が変わり今では一つの講習で両方の資格を取得できるようになりました。
転職に効く!特定化学物質作業主任者の資格
特定化学物質作業主任者は、比較的簡単に取得できる上、就職や転職に有利に働くオススメの資格の一つです。「特定化学物質」というと、まるで猛毒のような印象を受ける人がいるかもしれませんが、実際は今回ご紹介したように、いろいろな工場で一般的に使われているものもたくさんあります。一方で、特定化学物質作業主任者は必置資格のため、求人の応募資格欄に「特定化学物質作業主任者の資格取得者は優遇します」という一文を見つけられることがあるでしょう。特定化学物質を扱う工場で働いている人はもちろん、これから働こうと思っている人も、資格を取得することで仕事に対する理解が深まります。興味のある人は、東京労働基準協会連合会が行っている講習に参加してみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部