「合成樹脂」という言葉を聞いたことはありますか?
合成樹脂とは、簡単に言うと、プラスチックのことです。ペットボトルやポリ袋、弁当箱、フィルムなど、世の中には合成樹脂を原料にして作られた製品がたくさんあります。
では、そうした合成樹脂製品(プラスチック製品)は、工場でどのように製造されているのでしょうか?
今回は、合成樹脂の加工方法や合成樹脂を製造する仕事についてご紹介します。
合成樹脂って何?
ひと口に「合成樹脂」といっても、いろいろな種類があります。まずは合成樹脂の基礎知識についてお伝えします。
合成樹脂の原料
合成樹脂の主な原料となるのは、石油(原油)から採れる「ナフサ」です。製油所で石油を約350℃まで加熱して蒸留すると、沸点の違いから「石油ガス」「ガソリン」「ナフサ」「灯油」「重油」「アスファルト」といった物質を取り出すことができます。このナフサを水蒸気と一緒に800℃くらいまで加熱して分解すると、合成樹脂の原料となるエチレンやプロピレンを取り出すことができます。
天然樹脂との違い
人工的に製造した合成樹脂に対し、樹木などから採れる樹脂のことを「天然樹脂」といいます。天然樹脂は塗料や充填(じゅうてん)材として利用されますが、プラスチック製品は合成樹脂からしか作ることができません。
合成樹脂の種類
合成樹脂には、大きく「熱硬化性樹脂」と「熱可塑性樹脂」の2種類があります。
熱硬化性樹脂
熱を加えると液体から固体になり、一度固まると液体の状態には戻らない合成樹脂です。その特性を活かして、コンセントやブレーカーなどの素材に使われています。
熱可塑性樹脂
加熱すると溶けて液体になり、冷却をすると固まって固体になる合成樹脂です。雨どいや窓のサッシなどの建築資材、クッションやフィルムといった梱包(こんぽう)資材などに使われています。
合成樹脂は工場でどう加工されてるの?
合成樹脂は工場で加工・成形されることでプラスチック製品へと生まれ変わります。次に、合成樹脂の成形方法を種類別にお伝えします。
合成樹脂の主な成形方法
合成樹脂を加工するためには「可塑化」(溶かす)、「成形」(形にする)、「固化」(固める)の3つの工程があります。なかでも2番目の「成形」には、次のような方法があります。
圧縮成形
熱硬化性樹脂における代表的な成形方法で、金型の中に樹脂を流し込み、加熱と同時に圧縮することで成形をしていきます。たい焼き機と全く同じ原理なので、生地を合成樹脂に変えてイメージすればわかりやすいでしょう。
主な成形品:ペットボトルのキャップ、食器類など
射出成形
熱可塑性樹脂の成形時に使われる方法で、シリンダーに成形品1つ分の樹脂を溜め、金型の中に注入して成形します。こうすることで金型通りの形のものが出来上がるため、複雑な形状をした製品をつくることが可能です。
主な成形品:バケツ、コンテナ、携帯電話など
インフレーション成形
押出機から出てきた溶解樹脂を空気で膨らませることで、薄くて広いフィルムを作る成形方法です。別名「風船式」とも呼ばれています。
主な成形品:ポリ袋、ラップフィルムなど
合成樹脂の加工工場で働こう!
最後に、工場で合成樹脂を製造・加工する「合成樹脂製造技術者」の仕事についてご紹介します。
合成樹脂製造技術者の仕事内容
プラスチックメーカーや樹脂メーカーの工場で合成樹脂製品を作るのが、合成樹脂製造技術者の仕事です。具体的には、合成樹脂を成形機に投入したり、合成樹脂製品の検査、梱包作業などを行います。ほとんどの会社で未経験から働きはじめることができます。
プラスチック成形技能士の資格を取ろう
合成樹脂の加工に関わる資格に、「プラスチック成形技能士」があります。プラスチック成形技能士とは、別名「射出成形技能士」とも呼ばれ、プラスチックの成形技能を持つ人に与えられる資格です。合成樹脂製造技術者として働くために必須の資格ではありませんが、厚生労働省が認定する国家資格であるため、取得しておくと有利です。等級には3級・2級・1級・特級があり、3級は実務経験がなくても受験することができます。
用途は無限!生活を支える合成樹脂の魅力
生活用品から医療分野、最先端産業まで合成樹脂から作られた製品は世の中にたくさんあります。用途は無限にあると言え、現代人の生活に合成樹脂は欠かせません。それだけに、合成樹脂の製造・加工に関する求人は全国にたくさんあります。合成樹脂の製造・加工に興味のある人は、工場見学を受け付けているメーカーがありますので、まずはそこに参加してみたり、ネット上で公開されている「バーチャル工場見学」をチェックしてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部