旅行などで飛行機に乗る時に、どんなメニューが食べられるのかつい期待してしまう「機内食」。
温かくておいしい機内食は、長旅の疲れも癒してくれますよね。最近ではバリエーションも増え、素材にこだわるなどのレベルの高い機内食も増えています。
今回は、機内食の製造方法やこだわり、機内食製造工のお仕事についてご紹介します。
おいしい機内食を提供するためのこだわり
機内で作られているわけではないのに、おいしい機内食が食べられることを不思議に思う人もいるかもしれません。まず、機内食の基礎知識についてお伝えします。
機内食の提供にも決まりがある?
同じ飛行機に搭乗する場合でも、機内食が出る場合と出ない場合があります。基本的に機内食は「飛行時間の長い国際線」と「国内線のスーパーシート」(一部例外あり)でのみ提供されるものなので、飛行時間の短い一部の国際線や、国内線のエコノミークラスでは出てきません。国際線については、一定時間以上の飛行の場合は機内食を提供しなければならないと「国際航空運送協会」で決められています。海外旅行では機内食が出るのに国内旅行だと機内食が出ないのは、そのためです。
機内食をおいしく食べてもらうためのこだわり
フライト中の上空では、湿度や気圧などの影響で食感や味覚が地上にいるときと変わることがあります。そんな状況でもおいしく食べてもらえるよう、機内食は工場でこだわりを持って製造されています。飲食店の料理と違って、機内食は作ってから乗客が食べるまでに時間が空くため、衛生面については厳しく管理されています。基本的にどこの航空会社も機内食を作り置きすることはなく、なかには食品添加物を一切使用しないところや、調理から24時間以内に乗客に提供すると自主的に決めているところもあります。また、アレルギーや宗教上の理由で特定の食品が食べられない乗客にも対応しているところが多く、事前に申し込みをすれば、アレルギー対応食やベジタリアンミールなどのメニューを提供してもらうことができます。
機内食の製造方法について知りたい!
機内食を製造している工場とはどのようなところなのでしょうか?機内食ならではの製造方法を紹介します。
機内食の製造方法について
空港内にある機内食工場では、肉や魚を準備する部屋や盛り付けを行う部屋、イスラム教の人々が食べるハラールフードを調理する部屋など、作業工程や役割ごとに部屋が分けられています。また機内で提供するドリンクを保管する部屋や、おしぼりや紙ナプキンなどの備品を管理する部屋もあります。
機内食の調理方法自体は普通の料理とそれほど変わらず、機内食製造工(下記参照)の手によって調理されています。ただし、衛生面や安全面には細心の注意が払われています。調理室に入る人間は必ず白衣、帽子、マスクを装備し、入る前には徹底的にホコリの除去や消毒が行われます。工場内で製造された機内食は専用のカートに乗せられて、飛行機へと運ばれます。機内で使用された食器類は再び工場に戻され、清潔に洗浄を行った上で再利用されます。
クック・アンド・チル方式
機内食は安全かつおいしく食べられるように、調理後に一度冷却し、機内で再加熱して提供するという「クック・アンド・チル方式」が採用されています。冷却温度や冷却時間については「調理から4時間以内に10度以下で急冷する」など、いくつかの決まりが定められています。そのような厳しい条件で製造されているからこそ、機内食はおいしく食べられるのです。
機内食製造工の仕事内容とは?
航空業界には機内食の製造を専門とした「機内食製造工」という職業があります。最後に、機内食製造工の仕事内容をご紹介します。
機内食製造工とは
機内食製造工とは、航空機内で提供する機内食を製造・提供する仕事で、航空機内食会社(エアラインケータリング会社)の製造部門で働いている人のことを指します。航空機内食会社は空港の中や空港周辺に置かれているため、機内食製造工の勤務先は限定されています。一部の調理専門学校などでは「エアラインケータリング科」を設置しているところもありますが、特別な資格や免許は必要ないため、未経験者でも機内食製造工として働くことが可能です。機内食工場は24時間365日体制で稼働しているところがほとんどのため、多くの機内食製造工は交代制で働いています。
機内食製造工の2つの職種
機内食製造工の職種には、大きく調理職とロジティクス職の2種類があります。
調理職
機内食の調理や盛り付けなどを行います。製造する料理は軽食からビジネスクラス向けのフルコースまでと幅広く、調理後に冷却するなどの違いはありますが、調理方法自体は普通の料理とほぼ同じです。機械で調理されている工場もたくさんあります。会社ごとにマニュアルが用意されているため、調理師免許のない人や調理経験がない人でもすぐに働ける仕事があります。
ロジスティクス職
ロジスティクス職は「完成した機内食の航空機への輸送」や「使用済みの食器の回収」「機内で提供する酒類や機内で販売する免税品の在庫管理や補充」といったロジスティクス(後方支援)業務を行います。調理職と同じく特別な資格がなくても働けますが、機内食を運ぶために空港車両を運転する場合もあるため、大型自動車免許を持っていると転職や就職に有利です。また、業務指示文書などが英文で書かれていることがあるため、簡単な英語の読解力があるとさらに有利になります。
おいしい機内食は、機内食製造工の努力によって作られる
最近では有名シェフやレストランとコラボレーションした機内食も登場するなど、機内食はただ空腹を満たすだけでなく、乗客を満足させるための本格的な料理へと進化しつつあります。そのため機内食製造工の仕事も、よりおいしさを追求するためのシェフの仕事に近づいていくかもしれません。今度、海外旅行などのときに機内食を食べられる機会があったら、空の上でおいしく食べるためにどんな工夫がされているのか、コンビニ弁当とどちらがおいしいかなどを考えてみると、より興味が湧いてくるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部