広く浸透しているにもかかわらず、好き嫌いの分かれる食べ物のひとつに納豆があります。
納豆が大好きで「食卓に欠かせない」という人がいる一方で、「あの特徴的な粘りとにおいがどうしてもダメ」という人もいます。「畑の肉」と言われる大豆を発酵させた食べ物として、栄養価の高さはよく知られています。
一方、これほど有名な食べ物なのに、納豆の作り方まで知っている人は、意外に少ないのではないでしょうか?
今回は、納豆が工場でどのように作られているか、納豆の製造方法をご紹介します。
日本人に昔から愛されている「納豆」にはこんな魅力が!
納豆はいつ頃から日本で食べられるようになったのでしょうか?まずは、納豆誕生の謎と、栄養面についてお伝えします。
納豆の歴史
日本の文献で初めて「納豆」という言葉が現れたのは、平安時代に藤原明衝(あきひら)が記した『新猿楽記』という本です。そのため、この頃にはすでに納豆が存在していたことがわかっています。しかし、納豆の起源については諸説入り乱れています。弥生時代に収穫後の稲わらを使って納豆が作られたのではないかというのが、よく知られている説の一つです。また、歴史上の人物が納豆を発見したという説もいくつかあります。その歴史上の人物も源義家や加藤清正、聖徳太子と、時代も含めて諸説バラバラです。
納豆に含まれる栄養素と効果
納豆に含まれる酵素の「ナットウキナーゼ」には、血液をサラサラにして脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぐ効果があると言われています。またビタミンK2やイソフラボン、レシチンなども豊富に含まれており、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や更年期障害、認知症などの予防効果が指摘されています。さらに近年では、代謝を高めるビタミンB2のダイエット効果、植物性タンパク質による美肌効果、細胞の再生や増殖に関わるポリアミンという成分によるアンチエイジング効果など、美容面でも注目されています。
納豆は工場でこう作られる!
たっぷりと時間を掛けて作られる糸引き納豆。あのネバネバと独特のにおいは、納豆の製造工程に理由がありました。納豆が工場でどう作られているのか、製造工程をお伝えします。
浸漬(しんせき)
まず洗浄した大豆を水に浸します。大豆の種類や季節によって変わりますが、3〜20時間程度を掛けて大豆を元の2倍くらいの大きさまで膨らませます。
烝煮(じょうしゃ)
膨らんだ大豆を、蒸気で約2時間蒸します。
納豆菌噴霧
培養した納豆菌を、烝煮の終わった大豆に噴霧して付着させます。工場によっては納豆菌を噴霧するのではなく、納豆菌の液に大豆を漬け込むところもあります。
充填(じゅうてん)
蒸したての大豆が熱いうちにパックに詰めます。発酵前なので、この時点ではまだ納豆特有のネバネバはありません。
発酵
パック詰めした大豆を16~24時間ほど寝かせて発酵させます。発酵時間については天候や季節によって変わります。
熟成
納豆が発酵したら半日~1日掛けて冷蔵し、納豆菌がこれ以上増殖しないよう休眠させます。この工程は5度以下の温度で行う必要があり、納豆がかつて冬の食べ物とされたのはこのためです。
単純に時間を計算すると全行程を終えるのに3日程度かかりますが、発酵時間や熟成時間の違いで、メーカーによってはさらに1~2日掛けているところもあります。
納豆が海外で人気になってるってホント?
最近では日本国内だけでなく、海外でも納豆が人気となっています。どんな納豆が人気になっているのか、いくつか例を挙げてご紹介します。
豆乃香(まめのか)
外国人で普通の納豆を食べられる人はなかなかいないようです。しかし近年の納豆業界には、納豆の代名詞とも言える粘りやにおいをなくした商品が誕生しています。たとえば、水戸納豆で有名な茨城県で海外向けブランドの納豆として開発・製造された「豆乃香」(まめのか)は、フランスで大好評となっています。粘り成分を普通の納豆の4分の1まで減少させているため、かき混ぜても糸を引かず、においも控えめ。煮豆のような見た目をしていて、ワインに合うおつまみとして人気を集めました。またフランス料理のシェフなどには、ヘルシーでベジタリアン向けにも使いやすい食材として注目されています。
チョコ納豆
乾燥させた納豆にチョコレートをコーティングした「チョコ納豆」という商品もあります。日本人にとっては考えられないような組み合わせかもしれませんが、納豆の柔らかい食感にチョコの甘さと香りがマッチして、海外のセレクトショップで人気になっています。
DC-15菌納豆
「DC−15菌」という納豆菌を使った納豆が注目されています。DC−15菌には「α-グルコシダーゼ」という酵素の働きで血糖値を上昇しにくくする効果があると言われています。このDC−15菌納豆もにおいが抑えられているので、「健康のために納豆を食べたいけど、においが気になる」という人に嬉しい商品となっています。
みんなに食べてほしい! 工場で続けられる、納豆の美味しい変革
中国伝来の品格ある食品として受け入れられていた麹菌(こうじきん)納豆に対し、糸引き納豆は長い間、山村農村の貧しい人向けの食べ物、あるいはゲテモノのように扱われていたようです。しかしそんな偏見もなんのその、美味しさのためか健康面のメリットを感じてか、庶民の間ではやがて広く親しまれるようになり、江戸時代の町の早朝風景には納豆売りの姿が欠かせないものとなりました。人々は納豆という食品に、粘りもにおいも乗り越えて「食べよう」「食べてもらおう」と工夫したくなる魅力を感じていたのでしょう。現代では食卓の納豆を工場が支えています。さらにおいしく、そして海外で受け入れられる食品として改良の努力が続いています。スーパーへ行けば、いろいろなタイプの納豆が売られています。納豆好きな人はもちろん、食わず嫌いをしていた人も、どんな納豆が売られているか、食品売り場で手に取ってチェックしてみてはどうでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部