「レストア」という言葉を聞いたことがありますか?文字通りの意味は「元の状態に戻す」ことです。
職業としてのレストアは、高級品をはじめ、希少価値や芸術的価値のある車や楽器、道具などを対象に行う修復作業のことをいいます。車の修復というと、自動車整備士が一般的ですが、レストア技術者と自動車整備士では意味合いが少し違います。
では、レストア技術者は具体的にどんな仕事をし、自動車整備士とどこに違いがあるのでしょうか?
今回は車を中心に、レストアという仕事についてご紹介します。
車のレストアとは?
まず、車のレストアを行う「レストア技術者」の仕事についてお伝えします。
古い車を新車のようによみがえらせる仕事
車のレストア技術者とは、ひと言で言うと「故障した車を修復・復元させる」仕事です。つまり、年数が経過したことで起きた劣化や故障によって傷んだ車を本来の姿に戻す作業を行います。車のボディについた傷や凹みといった部分的な修理をはじめ、廃車同然の車をレストアする場合は車両全体が作業の対象となります。内装を修理する場合は交換用のパーツを発注して対応します。ただし、ヴィンテージカー(クラシックカー)のように新しいパーツが手に入りにくい車種の場合は、自分で図面を起こしてパーツを製作することもあります。
レストア技術者と自動車整備士の違い
レストア技術者と自動車整備士の違いは取り扱う車の種類にあります。自動車整備士は基本的に一般車を対象に整備を行います。一方、レストア技術者はクラシックカーやレーシングカーなどの車が対象です。現在では生産されていない希少価値の高い車や、名車と呼ばれる芸術的価値の高い車をレストアすることもあります。
レストア技術者になるには?
次に、レストア技術者になる方法や、レストア技術者に向いているタイプについてお伝えします。
レストア技術者の魅力
クラシックカーをはじめとする希少価値や芸術的価値の高い車を、レストアによって本来の姿へと復活させることがレストア技術者の醍醐味です。オーナーが求める、その車本来の姿へと復元させられるかどうかは、レストア技術者の腕にかかっています。
レストア技術者に向いている人
車が好き、特にクラシックカーなどの名車が好きという人にとって、そうした車と直接向き合えるレストア技術者は天職と言えます。高級車などは、1台の車をレストアするために1年以上の時間がかかることがあります。そのため、細かい作業が得意なだけでなく、修復までの長期計画を立てて実行できる計画性や根気、体力、持久力があると良いでしょう。
持っていたほうがいい資格
レストア技術者になるための資格として定められているものはありません。ただし、車の修復を行う以上、自動車整備士の資格を持っていると、車のオーナーも安心して仕事を依頼できるでしょう。さらに、レストアのクオリティを向上させるために、溶接や塗料、電気関係、旋盤加工に関する技術や知識を持っていると、レストア技術者としての評価が上がりやすくなります。
車以外にはどんなものがレストアされているの?
レストアは車に限らず、楽器や航空機の復元など幅広い分野で行われています。代表例を2つ挙げます。
楽器
バイオリンやチェロなどの楽器の中には、「アンティーク楽器」として高い価値が付けられているものがあります。それは楽器専門の技術者がレストアを行って、単なる骨董品ではなく、きちんと演奏できる状態にしているからです。具体的には、はがれや傷といった表面の修理から、部品の交換、ニスのリタッチング(塗り直し)など幅広く対応します。どんな楽器でもしっかりとメンテナンスされているからこそ、本来の能力を発揮することができます。この際、楽器本来が持っていた姿・機能を損なわないよう、オリジナリティを尊重しながら行うことがポイントです。
航空機
第二次世界大戦中に開発された「ゼロ戦」という航空機をご存じでしょうか?このゼロ戦をレストアして再び大空の飛行を可能にするとともに、重要文化財として未来へ継承しようという「アビエイタープロジェクト」という計画が進行しています。ゼロ戦については映画やアニメ、小説の影響で再び注目が集まっています。
新たな生命を吹き込む、レストア技術者のお仕事
レストア技術者は、現代では生産されていないようなクラシックカーなどをレストアすることで新しい命を吹き込み、復活させるのが仕事です。車が好きな人、機械いじりが好きな人、アンティークものに興味がある人にとっては、魅力的な仕事でしょう。興味がある人は、クラシックカーや名車のイベント、ショーなどに出掛けてみてはいかがですか?車のオーナーからレストアに関する面白い話を聞くことができるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部