私たちの生活の足として身近な存在である電車。通勤・通学や買い物のときに、電車を利用する人は多いでしょう。
電車好きな人は多く、ただ乗るだけではなくて、写真を撮ったり、模型を作ったり、さらにはモーター音の聞き分けを楽しむという人もいます。
毎日安全に動いているのが当たり前のように思える電車ですが、それを支えているのは「鉄道車両整備士」と呼ばれる人たちです。
今回は、鉄道車両整備士のお仕事についてご紹介します。
鉄道車両整備士の仕事って?
鉄道車両整備士とは、電車の車両を定期的に点検して事故を防ぐとともに、故障などの突然のトラブルに対処する仕事です。もし車両に問題があって運行中に立ち往生してしまうと、多くの人たちに迷惑がかかります。それが大都市の通勤時間帯であれば、運行ダイヤの乱れによる被害や損害は莫大なものになります。それを未然に防ぐのが仕事です。「鉄道の安全運航を支えているのは、自分たちだ」という実感が持てる、やりがいのある仕事です。
鉄道車両整備士の魅力
日常的に電車の整備に当たるため、一般の人が入ることができない場所に立ち入り、車両の構造を詳しく知ることができます。さらに、どの路線にどの車両を走らせるかを決める権限もあります、電車が大好きで、鉄道に関わる仕事がしたいという人には、とても魅力的でしょう。
電車は普段どんな検査をしているの?
車両の検査には、大きく4つの種類があります。
列車検査
2~10日に1回、パンタグラフなどの集電装置(車両が電気を得るための装置)、ブレーキ、台車などの検査を行います。機器類の状態や動作に異常が見られないかどうかをチェックし、必要に応じて消耗品の交換を行います。新幹線の車両では48時間ごとに実施されます。
交番検査
列車検査と同様の検査を1カ月から3カ月に1回、より綿密に行うものです。列車検査と同じく車両を分解せず、日常の車両管理が行われている車両基地で実施します。
重要部検査
電車の安全運航に欠かせない動力発生装置、ブレーキなどを取り外して、細かく行う検査です。4年以内、または走行距離が60万kmを超えない期間内で行います。検査には1~2週間程度かかります。新幹線の車両の場合は、18カ月以内、または走行距離が60万kmを超えない期間内で実施されます。
全般検査
約8年ごとにすべての機器を取り外して行う大掛かりな検査です。車両の再塗装も行われます。検査には2週間ほどかかります。
鉄道車両整備士になりたい!
特別な資格がなくても、車両整備の仕事に就くことができます。工業高校の電気科や機械科、専門学校、大学を卒業後、鉄道会社に就職してから、整備の仕事に就く人が一般的です。ひと通りの仕事を覚えるには、3~5年かかります。
ただ、鉄道車両の整備には「鉄道車両製造・整備技能士」という国家資格があり、これを取得して初めて正式に鉄道車両整備士を名乗ることができます。1級と2級に分かれていて、2級は実務経験2年以上、1級は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験があると受験することができます。
試験は1、2級とも学科試験と実技試験に分かれていて、学科試験では鉄道車両全般の知識や材料、製図、品質管理、安全衛生などが出題されます。実技試験では、実際にグラインダーやヤスリなどの機器・工具類を使った車両製造や整備の技術がチェックされます。
どんな人に向いているの?
電車が好きなのは大前提です。毎日電車と向き合って仕事をするわけですから、電車が嫌いでは勤まりません。大好きな電車の整備をするためなら、時間を忘れて集中できるという人なら充実感を感じられるでしょう。また、仕事内容は整備作業ですから、機械いじりが好きな人、手先が器用な人が向いています。
電車が毎日安全に動いているのは当然のように感じられますが、それは鉄道車両整備士の働きがあってこそです。目立たない仕事かもしれませんが、そこにやりがいや充実感を感じられる人が良いでしょう。整備や点検は一人でするわけではなく、ほかの人とチームを編成して作業をします。そのためチームワークを大切にして、最低限のコミュニケーションができることも大切です。
電車好きにはたまらない、充実感のある仕事
電車は日々多くの乗客を乗せて、高速で運行しています。もし整備ミスがあれば、列車の遅延だけでなく、事故や大惨事につながるおそれもあります。そうした事故を未然に防ぐ、とても大切な仕事が鉄道車両整備士です。電車好きの人ならたまらない魅力とやりがいを感じられるだけでなく、日本の鉄道の安全神話を支えることに誇りを持てるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部