小腹が空いたけど、料理をしている時間がないし、食材もない――
そんなときに重宝するのが缶詰です。ふたを開ければすぐに食べられるので、いざというときのためにいくつか買い置きしている人もいるでしょう。
ところで、この缶詰、どのように製造されているかご存じでしょうか? 今回は、缶詰工場の製造工程や最新の缶詰事情についてご紹介します。
実は缶詰ってメリットがたくさん!?
いろいろな加工食品が出ている中でも、缶詰は理想的な食品といわれています。その理由をお伝えします。
安全性の高さ
缶詰は製造するときに、空気や水、細菌が混入しないように密封されます。中身の食べ物も完全に滅菌・加熱処理がされているので、菌が増殖するリスクはなく、食中毒の心配もありません。
栄養価の高さ
密封をした真空状態で加熱殺菌をするため、いつまでも食べ物の栄養分を損ねません。食品添加物も使われておらず、普通の家庭料理よりもビタミン類などが豊富に含まれているものがあります。
経済的
缶詰は原料の産地で食材をまとめて買い付けて加工するため、原材料費を安く上げることができます。ほかにも、常温で流通させることができるので、生の食品に比べて輸送費用も安く済みます。また、缶詰の中に入っているものは調理をしなくても食べられるので、調理にかかる手間やコストを考えると経済的です。省エネ食品の代表格で、無駄なく味わえるエコな食料品と言えるでしょう。
保存性の高さ
缶詰は中身を完全に密封して加熱殺菌するため、常温で長期間保存しても中身が腐ることはありません。1938年には、イギリスで114年間保存されていた世界最古の缶詰を問題なく食べられたという話もあります。ただ、「保存期間」と缶詰を美味しく食べられる「賞味期限」は別なので、注意したいところです。
缶詰工場の製造工程とは?
工場で缶詰がどうつくられるのか、その製造工程を説明します。
調理と詰め込み
缶詰をつくるためには、まず魚の内臓や野菜の種などの食べられない部分を取り除くことから始まります。機械による切除作業が終わると、1缶ずつ決められた量が缶に詰め込まれていきます。
脱気、密封
缶詰を密封する前に脱気をします。脱気とは、缶の中の空気を取り除くことです。空気が入っていると腐食が進んだり、空気の膨張で缶が変形することがあるため、完全に取り除いた後に密閉します。密閉は「二重巻締」と呼ばれる方法で行われており、巻締機を使って1分当たり60個~2000個もの缶詰の密閉をしていきます。
殺菌、冷却
殺菌機を使って、缶の中の微生物を死滅させ、腐敗するのを防止します。食べ物によって、殺菌の加熱温度と時間が違います。殺菌が終了すると、品質が劣化するのを防ぐために、すぐに水で缶を冷却します。
打検、荷造り
ほとんどの工程が精密な機械のもとに行われていますが、なかには「真空状態になっていない」「食べ物が適量まで入っていない」「缶が凹んでいる」といった不良品が出てきます。かつては打検棒で缶を叩き、その音で選別していました。現在では、機械による検査を採用しているメーカーが大半です。検査で問題がなかったものについてはダンボール箱に詰められて、商品として出荷されます。
こんなものまで!? 最新の缶詰事情
缶詰の多種多様化が進んでいます。その中でもユニークな缶詰をいくつかご紹介します。
高級な缶詰
缶詰というと、「リーズナブルな価格」で、「いざというときの保存食」というイメージがあります。しかし、最近ではやや高級な種類が出てきています。たとえば、「ハンバーグ・デミグラスソース」「四川風・麻婆豆腐」といった500円くらいのものから、1万円以上する「タラバガニ」「あわび」など、バリエーションは豊富です。とても缶詰とは思えないような味わいや食感を堪能できます。
缶詰BAR(バー)の出現
缶詰は一般的に自宅で食べるイメージがありますが、最近では「缶詰バー」といって、外で一杯やりながら、つまみとして缶詰を食べられるお店も出てきました。国内外の珍しい缶詰や、なかにはその店でしか食べられないようなオリジナルの缶詰を提供しているところもあります。
介護と缶詰
缶詰は介護食としても活用されています。筑前煮など高齢者に喜ばれる缶詰もあります。缶詰はふたを開けてすぐに提供できるので、料理の手間を省け、介護の負担を軽減できるのがメリットです。
非常食もバリエーション豊富に
缶詰といえば非常時の保存食としても使われていますが、最近では乾パンではなく、デニッシュやクロワッサンのような本格的なパン、おかゆの缶詰なども販売されています。ただお腹に詰め込むのではなく、味を楽しむこともできるのです。
保存食からグルメ料理まで、種類豊富な缶詰
缶詰はスーパーなどで昔から購入できる食べ物ですが、単なる保存食としてだけではなく、栄養価や経済的な面でもメリットがたくさんあります。最近では、だし巻き卵やパンの缶詰など多種多様なものが出てきました。興味のある人は、いろいろな缶詰を楽しんでみてはいかがですか?
制作:工場タイムズ編集部