自分の好みやセンスを活かして楽しめるのがファッションの面白さです。お店には季節ごとに新しいアイテムが並びますし、年によって流行のファッションが変わったりします。そうした要素を自分なりに組み合わせて着こなすのも楽しいですよね。
では、私たちが買っている服は、どのように作られているのでしょうか?
今回は、服を作るアパレル工場や、実際に服作りに携わっている「縫製工」の仕事をご紹介します。
服はどうやって作られる?
普段当たり前のように着ている服ですが、実はたくさんの工程を経て私たちの手元に届けられています。一つずつ説明していきます。
アパレル会社から工場へ
服を製造している縫製工場は、アパレル会社からアイテム別に注文を受けています。工場にはそれぞれ専門や得意な分野があります。そのため、あるブランドの商品をすべて一つの縫製工場で作っているわけではなく、複数の工場が関わって一つの服を作るのが一般的です。
受注後には素材のチェック
メーカーから注文を受けた後、縫製工場には生地が納品されます。生地は畳んだり、巻かれた状態で送られてきますが、そのまま使用するのではなく、「延反(えんたん)」という作業を行います。これは、汚れや傷などがないかをチェックし、生地を広げて本来の状態に戻す作業です。
服の設計図「型紙」
生地を確認したあと、服の型紙を作ります。一着の洋服をパーツごとに分け、それぞれに型紙を作るのです。コンピューターに型紙のデータを入力して、袖、襟、身頃など、それぞれのパーツを服の形に配列していきます。生地を無駄にしないため、なるべく製造する服の大きさに合わせて裁断できるようにするのがポイントです。
最近では、短い時間かつ低コストで作業を行えるというメリットから、型紙から裁断までの作業を「アパレルCAD」と呼ばれるコンピューターで行うのが主流となっています。型紙のデータは「CAM」と呼ばれる自動裁断機に送られ、正確で素早い裁断が行われます。
カットされた生地を縫い合わせる
裁断後はパーツをそれぞれ分けて、襟や袖、ボタンなどの縫製を行います。たとえばシャツの襟に張りを持たせるため、中に芯を貼って縫い合わせたり、カフスは左右対称になるよう調節するなど、さまざまな工夫をしながら縫い合わせていきます。
完成後は検品して出荷へ
縫製が終わると、検査が行われます。注文の内容と照らし合わせながら、寸法が合っているか、縫い目にズレがないか、服に縫い針が残ったままになっていないかなどのチェックを行います。出荷前には、服に一枚ずつ業務用アイロンをかけ、シワを伸ばしてきれいに整えます。こうして仕上がった服はそれぞれブランドの包装がされて出荷されます。
アパレル工場で働く「縫製工」の仕事って?
アパレル工場にはいくつかの仕事がありますが、その一つに「縫製工」があります。縫製工は、裁断されたパーツを縫い合わせて服を完成させる仕事です。縫製には手縫いで行う工程もありますが、基本的にはミシンを使用することが多く、縫い方に応じて専用のミシンを複数使い分けることもあります。
入社後は縫製工としての基本的な技術を習得するため、期間を設けて訓練を行う工場が一般的です。縫製の内容などによって、訓練の期間は違います。初めからいきなり専門的な仕事を任されるというのではなく、簡単な直線縫いから担当するなど、段階を踏んで技術を習得していくため、未経験者でも仕事に応募することができます。
目安としては、長くても5年ほどですべての工程を習得できると言われています。すべての工程を習得した縫製工は「熟練工」とも呼ばれ、監督や指導を行うようになるなどステップアップしていきます。
縫製工に向いている人とは?
縫製工は、表から見えない部分も工夫して縫うなど「ただ布を縫うだけの単純作業」ではありません。センスやクリエイティブな発想があれば、より繊細な製品を生み出すことができます。
資格がなくても、縫製工になることができます。パタンナーやデザイナーなどの場合は通常、専門学校などで学びますが、縫製工の技術は、仕事を通じて訓練することで身につけることができます。
大切なのは、「ファッションが好き」「裁縫などの細かい作業が得意」という思いやこだわりです。細かい作業が多いため、作業に没頭できる集中力があり、どちらかと言うと手先が器用な人のほうが向いています。また、縫製工の仕事はチームで行うこともあるので、協調性があれば作業を進めやすくなるでしょう。
華やかなファッション業界を支えるアパレル工場
良い服を完成させるにはデザインだけが関係するのではなく、アパレル工場で行われる裁縫の質が大切です。一着の服が作り上げられるまでの工程に関われるアパレル工場は、ファッション好きの人にとっては、製作現場が体験できる魅力的な職場と言えるでしょう。もし近所で縫製工場の見学を受け付けているところがあったら、一度出掛けてみませんか?「ファッションを楽しむだけでなく、作るところから参加したい!」と思うようになるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部