和菓子は、食べておいしく、目で見て楽しい、お菓子の芸術と言われます。
和菓子職人は、小豆やお米、砂糖など古くから日本で親しまれてきた食材を使って、ガラス細工と見間違えるような作品をつくり出します。
今回は、日本独自の食文化として海外からも注目を集める和菓子づくりのお仕事についてご紹介します。
和菓子製造ってどんな仕事?
和菓子には長い歴史と伝統があります。和菓子製造にかかわる人は、単につくり方を覚えれば良いというわけではなく、和菓子の歴史を学んだり、食材の知識を身につけます。
和菓子の歴史と種類
和菓子の起源は、大昔にあった木の実などの加工品です。江戸時代に大きく花開き、明治時代以降は西洋菓子の材料や製法をうまく取り入れながら、さらに発展を遂げてきました。
和菓子には、いわゆるルールがありません。全国各地で、独自のモノがつくられてきたため、饅頭(まんじゅう)一つをとってもたくさんの種類があり、正確に分類するとかなり複雑な構図になります。ひとつひとつの和菓子に、職人の個性や地域の特色がにじみ出るのです。また和菓子には、茶道に用いられる「主題」や「季節感」といった精神が息づいていて、美しい見た目にも意味が込められています。
製造方法
職人の数だけレシピがある世界ですから、その製造方法もそれぞれ違います。和菓子専門店の中には、昔ながらの手作業にこだわるところもあれば、一部を機械化しているところもあります。工場で大量生産をしているところは、生地を「練る」「焼く」といったほぼすべての工程が自動化されています。
どんな人が向いている?
和菓子づくりを志す人には、大きく分けて二つの選択肢があります。一つは、和菓子専門店の門を叩き、そこへ弟子入りして職人を目指す選択。もう一つは、大手和菓子メーカーの工場で働く選択です。
大量生産の工場で働く場合
スーパーやコンビニでは、手ごろな価格で和菓子が売られていますよね。一般にそのような和菓子は、工場で生産されたモノです。和菓子職人を目指すほどではないけれど、身近で売られている和菓子の製造にかかわってみたいという人にはぴったりの職場です。
和菓子の種類にもよりますが、小麦粉などの材料を機械へ投入したり、出来上がった製品を箱詰めしたりするのが、工場での主な仕事です。手先の器用さが生かせるので、女性も活躍できます。
和菓子専門店で働く場合
一から和菓子づくりにかかわりたいという人は、和菓子職人さんのもとに弟子入りして腕を磨くことになります。現場では、早朝から仕込み作業が始まることがあるので、朝に強い人には有利な環境です。また、お茶席や冠婚葬祭などで大量の注文が入ると、一日で大量のお菓子をつくることになるので、体力に自信がある人に向いています。もちろん手先が器用で細かな作業が得意な人には、男女問わず適正があると言えるでしょう。
和菓子職人にとっては、その店の伝統を受け継ぐことはもちろん、新しい和菓子を生み出すことも大切な仕事です。そのため、和菓子づくりにとどまらず、俳句や茶道といった日本文化を学ぶことが好きな人は自然と新しいアイデアが生まれてきて、和菓子づくりに楽しみをより一層見いだせるでしょう。
和菓子製造の資格があった!?
和菓子職人になるのに、特別な資格や免許は必要ありません。しかし、和菓子職人として、ぜひ持っておきたい資格は存在します。
製菓衛生師
食品を扱うので、衛生面や安全面にはほかの職業よりも配慮されます。製菓衛生師の資格を取得すると、より安全なお菓子をつくる力を国から保証してもらえます。
製菓製造技能士
和菓子職人やパティシエとして、確かな知識と技能を持つことを証明できる国家資格です。1級と2級があります。2級の場合は2年以上の実務経験、1級の場合は7年以上の実務経験もしくは2級取得後5年の実務経験があれば受験することができます。
選・和菓子職
全国和菓子協会が主催し、優れた技術を持つ和菓子職人を選出する制度です。和菓子職人にとって、「優秀和菓子職」に選出されることは大変な名誉で、自分の技術や製品に箔(はく)がつきます。
奥深き和菓子の世界
和菓子職人という仕事を、昔から変わらないモノづくりの仕事と考えるのは誤解です。その仕事は、まさに「温故知新」そのもの。和菓子職人は、昔から伝わる製法や味を守りつつ、常に新しい和菓子を探求するパイオニアでもあるのです。日本の文化を支えている誇りと、新しい和菓子を生み出す喜びが、和菓子職人の醍醐味と言えるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部