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船をつくる職人! 船大工の仕事と木造船の製造

2016/01/01公開 / 2023/06/05更新

船をつくる職人として知られる船大工。金属などの材料がなかった時代につくられた木造船には、驚くような技術が秘められており、それが現代にも生かされています。

また、日本には世界最大級の木造船があります。

今回は、船大工の歴史や使用される道具といった基礎知識をはじめ、船大工の技術が現代にどのように応用されているかについてご紹介します。

船大工って?

船大工とは、「大工」という名が示す通り、修理などのメンテナンスだけを行うのではなく、設計から建造までを担う職人のことです。現在では、あまり馴染みのない職業かもしれませんが、太古からの歴史を持つ伝統と格式のある仕事です。

船大工が使用する道具は、博物館に飾られているモノから現在も使用されているモノまで、バラエティ豊富です。戦後に洋式の造船技術が取り入れられた影響で、一部で洋式の道具が取り入れられています。

船大工が使用する道具

鋸(のこぎり)だけでも種類は豊富です。たとえば船材の接合面をすり合わせ、密着させるのに使う「トオシ鋸」。材料を切断したり木材を縦にひき切るのに使う「ガンガリ鋸」や「バラメ鋸」。曲線を切断するのに使う「ホソバラメ鋸」や「引きまわし鋸」。繊維の方向に沿って切断するだけでなく、繊維の方向と直角に切断するときにも使える「両刃鋸」。ほかには、木材の表面をえぐり削るときに使う「チョウナ」。大きな木材から形を削り出すときに使う「マサカリ」。板材に釘を通すために穴をあけるときに使う「両ツバノミ」「片ツバノミ」などがあります。

世界最大級の木造船!

注目すべきは木造船のつくり方です。洋船と和船の基本構造を比較すると、肋骨に板を張り詰めているのが洋船です。それに対して肋骨がなく、大きな厚い板を大釘で留めている和船は、スギの良材に恵まれる日本ならではの構造といえます。

また、船大工ならではの驚くべき技術が二つあります。一つは長さ6m程度の船であれば、使用するスギ板の厚さは3㎝ほど。それを平行に縫い合わせて船を組み立てるのは難易度が高く、船大工の腕の見せどころです。その際は、船釘と呼ばれる長さ12㎝ほどの特殊な釘を使います。二つめは、その板を曲げる技術です。使うのは火と蒸気。少しの油断でも板が割れてしまうという、こちらも難易度の高い作業を船大工はこなします。

やえやま掃海艇

日本の優れた木造船のなかでも、世界最大級の木造船として知られるのが「やえやま型掃海艦」です。掃海艦とは、海中に設置された機雷を探して排除する軍艦のことです。

「やえやま型掃海艦」は海上自衛隊の掃海艦として、従来の掃海艦では対処できなかった、深海に設置された機雷を除去します。主要寸法は全長67m×全幅11.8m×深さ5.2m。船体は4層の外壁によって覆われていて、木造船としては世界最上級の大きさです。

乗員は60人、最大速力は14ノット(時速26km)。GPS衛星が利用できる精密航法装置や、船を横方向に動かすための動力装置も備えています。

船だけじゃない!船大工の仕事

研ぎ澄まされた技術から、船大工は船以外のモノも手掛けています。昔ながらの船大工の技術が現代に応用され、新たな形として生かされているものもあります。

宿根木(しゅくねぎ)

まずは新潟・佐渡島南端部に位置する宿根木集落です。この地域には、100棟以上にも及ぶ船大工が建てた板張りの家屋がひしめき合っています。船大工ならではのユニークな感性と高い技術が、ヨーロッパの古い街並みを連想させます。なかでもシンボルとなっているのが約150年前に建てられた「三角家」です。名前の通り三角形の土地に立つ、三角形の住宅です。土地の形に合わせて、ぴったりとはめ込まれた家が、当時の船大工の圧倒的な技術力を物語っています。

精霊船(しょうろうぶね)

和船づくりの優れた技術は、プレジャーボートにも活かされています。木から生まれるヨットやボートは、部品の一つ一つが工芸品としての風格を漂わせます。和船づくりで蓄積された技術を活かし、船の揺れや多方向からの圧力にも対抗できる組まれ方をされており、現代の外洋客船とは違う優雅さを感じられます。

木製自転車

船大工の技術が現代と融合している典型例です。軽くて丈夫なだけでなく、木ならではの柔軟性を武器に、フレームのやわらかさを実現しました。足への負担が少ない上、「おしゃれでカッコいい」と評判になっています。

環境と技術に恵まれた日本ならではのノウハウ

スギの良材に恵まれた日本は、洋船にはない独自の船大工のノウハウを蓄積させました。そして技術の進歩が著しい現代においても、今なお船大工の優れた技術が、大きな影響を残しています。和船ならではの技法と最新技術が融合し、木製の自転車まで登場しています。気になる方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

制作:工場タイムズ編集部

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