建築現場や自動車整備、ライフラインの配管など、生活の基礎となる製品は、細かい部品をたくさん組み合わせることによってできています。
そのような細かい部品の調整に欠かせない作業が「研磨」です。
そんな研磨にも技術を証明する資格があります。資格を取得するための方法や、資格を取得した後はどのような仕事ができるようになるのかご紹介します。
研磨加工に使う道具には何があるの?
研削加工は、大きく分けて「自由研削」と「機械研削」の2種類があります。
自由研削
自由研削は、「グラインダー」と言われる、円盤型の砥石(といし)を高速で回転させる電動工具を使い、部品を削ります。溶接の時に金属が盛り上がってしまった部分をきれいにする「ビート取り」、部品や工具の出っ張りなどをきれいにする「バリ取り」をします。使用する機械には、携帯用グラインダー、卓上グラインダー、切断機、スインググラインダー、ワゴングラインダーなどがあります。
機械研削
機械研削は、研磨に工作機械の一種を使い、部品や工具の仕上げ加工をする作業です。円筒や設計通りの曲面に加工するなど手に持って加工することが難しい部品は、こうした機械研削用のコンピューター制御された機械で作業することがあります。使用する機械には、円筒研削盤・平面研削盤・専用研削盤などがあります。
未経験でもOK!研磨加工の資格「研削といし取替試運転作業者」って何?
研削加工の資格には、講習を受けるだけで取得することができる「研削といし取替試運転作業者」があります。
研削といし取替試運転作業者とは何か?
主に研削砥石の取り替えや、取り替え時の試運転の業務を行うことができます。グラインダーや機械研削盤などの電動工具は、比較的操作しやすいので幅広い工場で使用されます。高速で回転する砥石を正しく扱うことで、接触によるケガなどを未然に防ぐことができます。
受講資格
特に基準はなく、18歳以上であれば実務の経験がなくても取得することができます。
申し込み方法、受講料
企業などの事業者や、各都道府県の労働局長登録教習機関、職業訓練センターなどで受講することができます。身近な開催機関に申し込みましょう。受講資格については受講料に関しては自由研削なら教材費込みで1万円前後ですが、機械研削は1万5千円前後かかります。
基本的には一日あれば取得することができます。受講する企業や団体によっては自由研削と機械研削を同時に開講している場合があり、その場合は二日まとめて受講できることがあります。
講習科目
自由研削や機械研削は、どちらも学科試験と実技試験に分かれています。扱う機械は違いますが、学科試験では研削機械に関する基礎知識や研削砥石の取り付け方法、関係する法律の問題が出題されます。また、取り付けた後の試運転の方法についての問題も同時に出題されます。
その後の実技試験では、自由研削、機械研削どちらの講習でも、実際に砥石を取り付け、試運転を行う工程を実践します。
こんな資格も!「切削工具研削技能士」とは?
研磨に関する代表的な資格の一つに、「切削工具研削技能士」があります。国家資格である技能検定の一つですが、実務の経験さえあれば比較的簡単に取得することができます。
切削工具研削技能士とは?
穴をあけるためのボーリングカッターや丸ノコなどの切削工具をつくる技術を持つ人です。切削工具とは、素材や製品を「切断」したり、「研削」したりする時に使う道具のことを指します。切削工具研削技能士とはモノの切れ味を決める仕事と言えるでしょう。
資格の概要
資格には1級と2級があり、どちらも実務の経験があれば受験できます。1級は7年以上の実務の経験、または2級合格後2年以上の実務の経験があることが条件です。2級は実務の経験が2年以上とされていますが、「研削といし取替試運転作業者」の資格を持っている人や、特別教育と同等の知識及び技術があれば受けることができます。
初心者や未経験で研削機械を扱う業務に関わる人は、「研削といし取替試運転作業者」を受講し、興味を持てば切削工具をつくる「切削工具研削技能士」を目指すと良いでしょう。
試験内容
学科試験で出題される問題はいくつかの項目に分かれます。
・研削一般…研削砥石や研削材の種類や品質管理などについて・材料…金属素材と非金属素材の種類や成分、性質と用途などに関係する基礎的な知識・材料力学…重さや応力に関する一般的な知識・製図…部品の見取図を作成する知識・電気…電流や電圧などの電気用語や電気機械器具の使用方法・安全衛生…切削工具の研削作業に伴う安全衛生に関する知識
また選択式の問題も出題されます。「工作機械用切削工具研削法」では比較的一般的な切削工具を扱い、「超硬刃物研磨法」では超硬刃物を扱います。「超硬刃物」とは炭化タングステンとコバルトという素材を焼き固めてつくった刃物のことです。ダイヤモンドやセラミックなどと同様にとても硬い材質になります。
実技試験では、「工作機械用切削工具研削作業」「超硬刃物研磨作業」どちらも、研削砥石や超硬刃物の形直し、バランスの調整を実践します。また研削中に不具合が発生すれば、その原因を突き止められるかを判断されます。
キャリアアップにもなる一石二鳥の資格!
「研削といし取替試運転作業者」の資格は、作業の安全を守る最初の一歩です。未経験の人でも取得できる資格なので、まずは「研削といし取替試運転作業者」を取得してから実績を積みましょう。実務の経験を含めて最短で4~5年あれば「切削工具研削技能士」の1級の資格を取得することが可能です。
制作:工場タイムズ編集部