工場に行くと大きな機械や設備がたくさんあります。
製造過程で機械が動かない、設備の不具合で作業ができない事態が起きると、企業にとっては大きなダメージです。
そのため日々の製造業務に影響が出ないように、機械の修理やメンテナンスを専門に行う仕事があります。そのひとつが保守点検です。保守点検といっても、いろいろな職種や資格があります。
今回は、保守点検に関する職種や資格について見てみましょう。
保守点検といっても種類がある?
保守点検とは、工場の機械が正常に動いているかを定期的に点検し、問題があればメンテナンスを行うことです。保守点検には施設や設備によっていろいろな種類があります。ここではその種類についていくつか説明します。
機械系
生産設備などの機械の保守点検を行い、生産ラインの稼働を調整して製造物の不良を防ぎます。
電気設備系
発電、送電、変電、配電設備などの保守点検を行い、それらの設備の整備不良を原因とする事故やトラブルなどを防ぎます。
ガス設備系
ガス製造設備、利用設備の保守点検を行って、ガスによる事故や供給に対するトラブルを防ぎます。
給水・排水設備系
商業ビルやマンションなどの給排水設備に水漏れや詰まりなどがないか点検し、給排水関連のトラブルを防ぎます。
消防設備系
消火設備や避難設備などを対象にして、火災が発生した際に正常に作動するかを確認し、実際の火災に備えます。
機械を見守る機械保全技能士とは?
機械の「守り人」である保守点検のお仕事。その仕事に直接関係する資格に「機械保全技能士」があります。機械保全技能士とは、機械を個々に点検するのではなく、製造ライン全体の故障や不備を点検によって予防し、正常にラインが稼働するようにする仕事です。学科と実技の試験に合格すると資格が取得できます。ここでは平成27年現在の機械保全技能士の資格取得について見てみます。
概要
資格を取得するためには、機械保全技能検定試験を受験します。検定は「機械系保全作業」「電気系保全作業」「設備診断作業」の3つの作業分野に分かれます。それぞれ学科試験と実技試験によって選考され、特級と1級、2級、3級までの4段階に分けられます。なお、学科試験はいくつかの選択肢の中から正解ひとつを選ぶ「多肢択一式」か、真偽式(○×式)で構成されます。実技試験は、特級が工程管理や品質管理などに関するペーパーテスト。1~3級は機械の異常発生時の原因特定や対処の仕方が判定されます。
受験資格
各級の受験資格は、実務の経験がどれくらいあるかで分かれます。
特級:1級に合格後、5年以上の実務の経験がある人1級:機械保全に関する実務の経験が7年以上の人2級:機械保全に関する実務の経験が2年以上の人3級:実務の経験は問わず、これから機械保全に関する業務に従事しようとしている人
初心者の人は3級の取得から考えてみましょう。
試験方法
特級
学科試験は5択問題が50問出題されます。試験時間は120分です。実技試験は与えられた課題をもとに、工場を運営するための工程管理や作業管理について表や図面を使って計画立てるという内容です。
1級、2級受験者
機械系保全作業、電気系保全作業、設備診断作業の3つの作業分野に関してそれぞれ学科と実技試験があります。学科試験は真偽式25問と、4択問題が25問出題されます。試験時間は100分。実技試験は、機械系保全作業であれば、機械の欠陥の原因特定や対応措置などが出題されます。電気系保全作業の場合は電気回路の点検や不良箇所の修復、設備診断作業では設備の診断結果に基づく保全方法が問われます。
3級受験者
「機械系保全作業」と「電気系保全作業」の二つの作業分野での試験です。学科では、真偽式が30問出題されます。試験時間は60分。実技試験は「機械系保全作業」の場合は工具や測定器に関する問題が出題され、「電気系保全作業」の場合は指示された仕様書どおりに電気回路を点検し修復する作業が出題されます。
合格基準、勉強方法
学科試験65点以上、実技試験60点以上あれば合格できます。学科、実技試験どちらかだけが合格だった場合は、次回以降は不合格だったほうだけを受験すれば大丈夫です。ただし特級に限っては、その有効期限が5年間と限定されています。
勉強方法は、学科についてはテキストや過去の試験問題を勉強すれば大丈夫でしょう。一方、実技に関しては先輩やセミナーなどでアドバイスを受けながら、自分なりにポイントをまとめておくことが対策になります。
申し込み方法など
インターネットと郵送による申し込みのどちらも可能です。受験料は、学科と実技の両方を受験する際は19,400円、学科のみの受験は4,000円、実技試験のみの受験は15,400円です。
機械保全技能士の注目ポイントはココ!
保守点検の仕事に就くには、機械保全技能士の資格を取ることがキャリアアップへの近道です。そもそもこうした技能検定では時間をかけて習得してきた技術が経験値として評価されます。さらに、取得級を上げていくことで、会社が給与や役職面を考慮する際に有利に働くこともあります。
また、取得級によっては特典があります。機械保全技能士2級の取得時点で作業環境測定士試験の受験資格を得ることができ、1級を取得すると労働安全コンサルタント試験の受験資格が得られます。
メリットたくさん!機械保全技能士
機械の保守点検に関する代表的な資格が機械保全技能士です。経験年数に見合った等級があり、その等級は会社での評価を上げる際の目安にもなります。またこれから実務経験を積んでいく初心者の人にも受験できる3級があり、キャリアアップしていきたい人にも挑戦しがいのある資格といえます。
制作:工場タイムズ編集部