食料品や薬、家電など、商品の裏に書いてある「お客様センター」という企業への問い合わせ先を見たことはあるでしょうか。
これは商品を買ってくれた人に満足してもらうために行う企業活動の一つです。商品への意見やクレームを受けつけて、品質の改善に役立てています。
企業内でそれらの役割を行うのが「品質保証」「品質管理」です。この二つは具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。一見すると似ている二つには違いがあります。
今回は品質保証と品質管理の違いを含めて、仕事内容をご紹介します。
品質保証とは?
品質保証とは、出荷される製品や部品が「決められた品質」であるかどうかを確かめる仕事です。
品質保証の仕事は、出荷してよい品質かどうか確かめた結果を、お客さんにお知らせしたり文章として保存したりします。不良品が出てしまったときは、再び不良品を出さないように対策します。完成したモノをより良くするため常に改善する仕事です。
また、お客さんが不良品を購入してしまったときのクレーム対応も仕事です。お客さんのもとへ出向いたり電話したりして、商品に対する意見や要望を聞き企業へ報告します。
品質管理とは?
品質管理は、商品をつくるときに「どうすれば不良品をつくらないか」などを考える仕事です。そして「どのように業務を改善するのか」という具体的な計画を決め従業員に指示します。例えば、不良品が出る確率を50 PPM以下にしようという目標をたてます。PPMとは不良品の確率を表す単位でParts Per Millionの略です。50 PPMであれば、100万個つくって不良品は50個以下にしようという目標です。
その目標に対して、
●現状の作業ではいくつの不良品が出ているのか
●目標を超えているのであればどの作業を改善する必要があるのか
●改善していくために従業員の教育や作業の手順、モノの管理はどうするのか
ということを考えます。
このような品質管理を行うときに「QC7」という分析の方法を使います。多くの企業ではQC7の七つの基準を使って不良品ができる原因を発見し、製造工程の改善をします。今回はお皿の製造を例に、それぞれについて説明します。
パレート図
パレート図とは、製造したお皿の中に割れや欠け、汚れなど、どんな「不良」の種類が多いのかを調べた図です。製造したお皿の中でどの「不良」が多いのか順位を付け、先に解決する「不良」を選びます。例えば、一番多く発生する「割れ」が全体の「不良」の50%を占めているとします。この場合は「割れ」を集中的に改善すれば50%の不良品が減り、製品全体の質が良くなります。
チェックシート
チェックシートは、製品の仕上がりの最終チェックをするときに使うシートです。従業員はお皿が割れていないか欠けていないかなどを確認し、結果をシートに記入します。この確認を行うとき、チェックシートがあれば確認するのを忘れないよう防ぐことができます。従業員記入したチェックシートをもとに、品質管理が結果をまとめて原因を発見します。
ヒストグラム
ヒストグラムは、データを一目見てわかるようにできるグラフです。例えば、お皿の場合完成品の大きさに多少のばらつきが出てしまうことがあります。完成したお皿の大きさを測りグラフを作成することによって、どんな大きさの皿が一番多いのかがわかります。またそのグラフの形を見て、「安定に製造できているのか」や「不良品が発生しやすい環境なのか」が判断できます。
そのほかに、重さと強度など二つのデータの関係性を見る「散布図」。不良の原因が機械なのか人なのかの判断に用いる「管理図」。不良の原因を整理する「特性要因図」。不良の原因を種類に分ける「層別」があります。
品質保証と品質管理の違いとは?
ここまで見てきた通り、「品質保証」と「品質管理」のどちらも、お客さんにより良い品質の製品を届けるための仕事です。しかし、これらの仕事にはちゃんとした違いがあります。
関わるタイミング
品質保証と品質管理の大きな違いは、製品に関わるタイミングです。品質保証は製品の企画段階から、製品が完成し、販売後のクレーム対応なども行います。品質管理の場合は、製品が完成する前の段階で関わります。製品が完成するまでに、不良品がなぜできたのかという原因を生産作業の中から研究し、原因の発見と業務の改善を行うのが仕事です。
そのため品質保証は、品質管理よりも長く製品に関わる仕事だといえます。
責任の所在
品質保証と品質管理では、責任の所在も異なります。品質保証は、製品を販売後の返品やクレームなどの対応が主な業務のため、顧客に対して責任を負います。一方、品質管理は品質基準が責任の対象です。品質管理の場合は、製品が正しく作られているか、不良品が含まれていないかなど、品質の高い製品を作るための業務がメインとなるからです。
業務の範囲
品質保証と品質管理は、業務の範囲にも違いがあります。品質保証の業務範囲は、製品の企画や生産、出荷、アフターフォローなど多岐にわたります。一方、品質管理の業務範囲は、製造過程で製品が完成するまでです。
品質管理責任者と品質保証責任者の違いは?
品質管理と品質保証の業務内容が違うように、品質管理責任者と品質保証責任者にも違いがあります。両者の役割には、どのような違いがあるのでしょうか。
品質管理責任者の役割
品質管理責任者が最優先に考えるのは「顧客満足」です。そのため、品質管理責任者は、顧客が満足できる製品の提供を続けるために、内部からさまざまなアプローチを行います。つまり、顧客が満足できない製品=不良品が出ないように、内部から改善することが、品質管理責任者の最大の役割だといえるでしょう。
また、各製品は、会社全体で品質管理に対する意識向上や、消費者への安全性のアピールに役立てるために、JIS認証取得を行います。認証されたJISマーク製品の信頼性を維持するためには、品質管理責任者の役割が大きいのです。
しかし、その役割を果たすには知識や情報収集などが必要なため、JIS認証を受けた会社では、JIS品質管理責任者セミナーの受講が必要になる可能性があります。
品質保証責任者の役割
品質保証責任者の役割は、いくつかあります。たとえば、品質管理業務の統括で、業務が適正・円滑に行われているかを確認することです。ほかには、製造や出荷の管理をしたり、品質管理の確保をしたりなどの役割もあります。
品質保証は、販売後に製品に問題が発覚した際のクレーム対応や製品回収、取引先への謝罪などの対応も行います。そのため、品質保証責任者は、状況を判断し、これらの対応を指示する役割もあるといえるでしょう。
品質保証の資格に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
https://04510.jp/times/technology/article189/
向いている人の特徴は?
品質保証や品質管理に向いている人はどんな人でしょうか。どちらも製品の質を守るという点で共通している特徴があります。
追求し答えを考え出すことが好きな人
いろんなことに興味を持ち、好奇心の強い人はじっくりと原因を調査することができるのでこの仕事に向いています。また、あらゆる角度から問題を見ることで、これまでは思いつかなかった新しい解決策が生まれるかもしれません。
冷静にものごとを判断できる人
論理的にものごとの状況を整理できる人は、冷静に筋道を立て生産工程に起こる問題を解決できるでしょう。パズルやゲームなど問題を解くのが好きな人は向いています。
細かな作業が好きな人
検査やデータ集めはコツコツと収集と分析を繰り返し続けることが大切です。細やかな視点で結果を分析することができれば、工場内の作業をより改善することができるでしょう。
製品の質を守る役割
どこの企業もより品質の高い製品をつくろうと努力しています。しかし、ときには不良品が発生することもあるでしょう。大量生産している企業や工場ならなおさらです。もし不良品が発生してしまっても、出荷される前に工場内で発見できれば被害は小さくなります。また、製品が購入してくれたお客さんに対するアフターケアーを徹底することは、品質の改善や企業への信頼に繫がるでしょう。
制作:工場タイムズ編集部