自動車やパソコンなど工場で生産される製品は、金属やプラスチックの部品でできています。そんな部品をつくるために必要なのが「金型」です。
製品や部品の完成形に合わせてつくった金属の型で、プラスチックやゴム、金属などの素材を使ってつくります。そして、その金型を設計するのが「金型設計」の仕事です。
今回は、工業製品をつくるのに欠かせない仕事の一つである「金型設計」の仕事をご紹介します。
金型設計の仕事内容
金型のほとんどがオーダーメイドでつくられます。そのため金型設計の仕事はまず依頼を受けるところからスタートします。
自社で販売している製品や部品なら社内の制作部や企画部の人たちの要望を受けて、まずは完成品の図を作成します。その後、金型の設計を行います。
他社から製品や部品を注文された場合も、基本的には同じ流れです。自社の営業や依頼主の担当者と話をして、どんな製品・部品をつくるのかを決めます。この段階で、依頼主の「したいこと」と生産で「できること」の区別を付けて、製品や部品を現実的な形にしていきます。ときには、実際に機械を操作して金型をつくる技術者を含めて意見を交換します。そうして機能性や信頼性が高くて、価格が安い製品や部品をつくります。
つくりたい製品・部品が決定すれば、いよいよ金型の設計です。金型設計でも建築などと同じように、金型の設計図を書きます。最近はコンピュータで設計する「CAD(キャド)」を使う場合がほとんどです。こうしてつくられた設計図をもとに、金型が完成します。
金型設計でつくられるもの
金型を使ってつくられているモノはたくさんあります。金型の種類ごとに、主な商品を紹介します。
プラスチック金型
世の中にはプラスチックでできた製品がたくさんあります。例えば、テレビやパソコンの外枠や、自動車のインパネル、飲料を入れるペットボトルなどが、プラスチック用金型を使って生産されています。
ゴム金型
自動車や家電製品をつくるのに欠かせないのがゴムの部品。これも金型をつくって生産する部品の一つです。タイヤなどのゴム製品もゴム金型で生産されています。
ガラス用金型
ガラス製のコップや皿を大量に生産するときも、金型をつくってそこへガラスの材料を流し込んでつくります。プラスチックやゴムに比べると工業製品の部品となることは少ないですが、雑貨や飲食店用の食器として使われています。ウィスキーのボトルやビールビンもガラス用金型を使って大量に生産されています。
そのほかにも、プレス用・鍛造(たんぞう)用・鋳造(ちゅうぞう)用・ダイカスト用金型といった、金属製の製品や部品も金型でつくられることがあります。
金型設計に向いている人
では、金型設計の仕事はどんな人に向いているのでしょうか。
臨機応変に対応でき、新しい提案ができる人
金型設計の仕事で一番大切なポイントは、どんな金型をつくるか決めるところにあります。ときには設計の途中で依頼主から新しい要望をもらったり、設計上どうしてもできない点などが出てきます。そんなときに、自分の経験を含めて周囲の人や依頼主に相談し、新しい方向性を見つけられる人が金型設計の仕事に向いていると言えます。
発想力がある人
金型設計をしていると、製品をつくりたい人や会社から「あんな商品がつくりたい」「こんな機能を盛り込みたい」といろんな要望を受けます。それが今までの経験や技術で簡単にできるときもあれば、新しい発想や技術が必要なときもあります。その点で言えば金型設計の仕事は発想力があれば、そのような要望にも応えられるでしょう。
自分の設計した金型で製品ができあがることに喜びを感じられる人
自分が協力した製品が世の中で使われているのを見るのは、「モノづくり」関わる人が感じる喜びです。もちろん、金型設計の仕事も「モノづくり」の一員として製品を使う人の姿に喜びを感じられます。さらに、生産の現場で金型を使って次々と製品や部品が生み出されているのを見たときに、一番喜びを感じられるのは金型設計と言えます。
アイデアで製品の新しい形を
金型の仕上がりは製品の品質に影響します。金型設計で新しい発想が生まれれば、それがスタートとなって改良された製品が誕生することがあるでしょう。金型設計を仕事にするには、設計に関する基礎知識やCADの技術を学びます。企業によっては未経験で入社した場合は研修や現場での実作業を通して知識や技術を得られるところもあります。
制作:工場タイムズ編集部