「鉄は熱いうちに打て」ということわざがあります。このことわざが生まれる元となった仕事が「鍛造」です。
昔からオノやクワなどの農作道具、鉄砲や刀など日常生活を支える製品をつくるのに使われた「鍛造」は日本の伝統的な製造技法です。
そんな現代に続く鍛造の仕事内容と資格制度をご紹介します。
鍛造の仕事って何をしているの?
鍛造とは、専用の機械を使って金属の強度を高める技術です。かまどの前で鉄を叩く作業を見たことはありませんか?現代に引き継がれたこの技術が鍛造です。鍛造の工程を通して強度を高めた金属は、自動車部品・建設機械・鉄道車両などに使われます。仕事内容を分類すると、大きく三つに分けられます。
鍛造工
鍛造工とは、高温に加熱した金属材料をハンマーやプレスなど圧力を加える機械で製品の形に変形させる仕事です。鍛造工場や鉄工所と呼ばれる場所でこの工程が行われます。
鍛造によって行う変形には、手作業で行う「自由鍛造」と金型を使う「型鍛造」の二つの種類があります。
「自由鍛造」は手動でハンマーを使って叩き形をつくります。一方、「型鍛造」は型を使って変形させる技術で、ハンマー鍛造とプレス鍛造に分かれます。ハンマーを使って型にはめる鍛造を「ハンマー鍛造」、プレス機を使って型にはめる鍛造を「プレス鍛造」と言います。未経験の人は型鍛造から始めることが多いです。慣れてきたら自由鍛造を目指してみると良いでしょう。
鍛造工と関連する仕事に「金属プレス工」と「圧延工」があります。
金属プレス工
金属プレス工は、部品の元になる材料を圧縮する「プレス機械」を使って製品をつくります。製品は、小さな金具から自動車のボディまでいろいろあります。貨幣やメダルに模様を刻印する作業もこの金属プレスに含まれます。強くて硬い製品をつくるとともに、設計書に指定された通りの形にすることができます。
圧延工(あつえんこう)
圧延工は、鉄鋼製品をつくるために機械を使って金属を引き伸ばします。圧延工がつくった材料は、電化製品・高層ビル・船舶などに利用されます。製品の材料をつくるという意味で、製品を陰から支える存在と言えるでしょう。
鍛造技能士の資格とは?
鍛造に役立つ資格に「鍛造技能士」があります。これは鍛造の技術力を測る資格です。自由鍛造作業・ハンマー型鍛造作業・プレス型鍛造作業の三分野があります。試験の難易度によって特級・1級・2級・随時3級・基礎1級・基礎2級に分かれています。
特級
現場の責任者となるために必要な技術や知識を身につけます。
1級・2級
鍛造の仕事を経験して挑戦する資格です。働く中でどれほどの技術力が身に付いたかがわかります。資格という客観的な物差しで測ることで、作業の正確さや技術力の証明になります。
基礎1級・基礎2級・随時3級
外国人技能実習生が受験する試験です。加工技術の基礎知識を習得できたことを証明します。材料の特徴や安全管理などに関する知識が問われます。日本の技術を学びたい外国の人が、職人を目指すときに取る資格です。
鍛造技能士試験について
では、具体的にどのような試験なのでしょうか?受験資格と試験内容をふまえた上で取得計画を立てましょう。
受験資格
実務経験があれば受験資格を取得することができます。実務経験半年以上で3級、実務経験2年以上で2級が取得できます。実務経験7年以上積むか、2級取得後実務経験2年以上あれば1級が受験できます。1級取得後5年以上実務経験があれば特級が受験できます。
試験内容
それぞれのレベルに合わせて、学科試験と実技試験を行います。学科試験では、鍛造の基礎・材料・製図に関する知識が問われます。材料を検査する方法や材料の加熱・加工方法、できあがった製品の品質チェックなどを問われます。また安全管理や関連する法律など、作業上の注意点も知っておきましょう。実技試験では定められた時間内に実際に製品をつくります。
受験方法
都道府県にある職業能力開発協会に申し込みます。申請書を取り寄せ記入し、郵送で提出します。受験手数料は都道府県により異なりますが、実技17900円・学科3100円が標準的な価格です。
製造業を支える技術
日本の鍛工品は、世界的に高い技術を誇る工芸品です。鍛造の技術でつくられるものはたくさんあります。タイヤのホイール、エンジン部品など自動車や飛行機、船で使われる重要な部品です。鍛造の技術は伝統的な手作業に加え、機械を活用し製造業で広く使われています。発展した技術で工業製品だけでなくインテリアをつくる職人もいるので、興味が湧いたらWebサイトでそういった作品を検索してみても良いでしょう。
制作:工場タイムズ編集部