金型工はモノの形を決める役割を担います。
自動車からパソコン、ジュースの缶など大量生産される工業製品のほとんどが金型でつくられています。
今回はそんな金型をつくる仕事の資格「金型製作技能士」についてご紹介します。
金型製作技能士とは
そもそも金型とは製品を形成するための型のことです。プラスチック製品や電機・自動車部品、医療機器などをつくるとき、製品のデザインや性能を左右する重要なモノです。金型製作技能士とは、そんな金型を製作するための技能と知識を持つことを証明する国家資格です。
金型製作は、同じ形のモノを速く形成できるので、大量生産のモノづくりに欠かせない技術です。金型の技術によって、製品の見た目や質は変わります。金型製作技能士の資格を持っていれば、金型製作の技術力が高いことを証明できます。
また、金型製作技能士の資格があると、ほかにもメリットがあります。職業訓練指導員(機械科)になるための実技試験が免除されます。職業訓練指導員とは国が設置する施設において、仕事を持つための支援を担当する教員です。
試験の内容を知っておこう
金型製作技能士は、特級・1級・2級が存在します。ここでは、級ごとの対象者と試験の出題範囲などを見てみましょう。
1級および2級の対象者
1級の取得には「7年以上の実務経験または2級合格後2年以上の実務経験が必要です。また、2級の取得には「金型の実務経験が2年以上」の人が対象になります。
試験には、筆記テストを行う学科試験と選択式の実技試験があります。100点満点のうち、学科試験では65点以上、実技試験では60点以上取得すると合格になります。
1級および2級の学科試験
学科試験は◯×問題、および4つの記述から正しいモノ、または誤りのあるモノを1つ選ぶ問題が50問出題されます。試験時間は1時間40分です。
金型に関する知識として、「金型一般」「金型製作法一般」「金型用材料」という分野が出題されます。
「金型一般」では、金型の種類や構造、用途についての基本的な知識。「金型製作法一般」は、金型加工用機械や切削工具、手工具の種類、構造、機能、用途についての詳細な知識が出題されます。「金型用材料」は金型用材料の種類や成分、性質、用途に関する問題です。
また、金型を製作するときに関わる必要な知識も出題されます。
ネジやモーターなどの機械の細かい部品に関する「機械要素」、力や重さを加えたときの変形の仕方を予測する「材料力学」、電気設備の用語を問う「電気」、設計図を書く方法を問う「製図」、安全に作業するための「安全衛生」などが挙げられます。
その他、選択科目として「プレス金型製作作業」「プラスチック成形用金型製作作業」いずれかの特殊な作業技術に関する問題が出題されます。
1級および2級の実技試験
プレス金型製作作業またはプラスチック成型用金型製作を選び、実践します。
チェックされるポイントとして、・金型部品を切り、削る加工ができること・複雑な金型の組立・調整ができること・金型の製品や外観の検査ができること・作業時間の見積もりができることが挙げられます。
プレス金型製作作業はこのほかに、・金型を試しに使用し、調整ができること・材料の硬さを調べられることが含まれます。
特級の対象者
特級の取得には、「1級合格後5年以上の実務経験」が必要です。
これは、特級が指導者向けの資格であるためです。初心者や未経験の人は、まずは製造現場で実務経験をとおして基礎を理解し、2級の取得を目指すことをオススメします。
特級の学科試験
学科試験は、試験時間3時間5つの記述から正しいモノ、または誤りのあるモノを1つ選ぶ問題が50問出題されます。1・2級が根本的な金型工の知識や技術についてだったのに対し、特級は責任者としての知識や技術が試験されます。
具体的には、生産の流れから日程、役割、在庫管理などの知識を問う「工程管理」や安全衛生に関する知識を問う「安全衛生管理および環境の保全」などです。
実技試験でも、学科試験と同じように責任者としての実技が試されます。例えば、詳細な日程計画がたてられるかどうかという「工程管理」や、教育訓練の計画がたてられるかという「作業指導」、設備点検の対策がたてられるかという「設備管理」などです。
受験の申請時に注意すべきポイント
金型製作技能士を受験するときの申請から資格取得までの流れを見てみましょう。
受験申込方法
JAVADA(都道府県職業能力開発協会)から受験申請書を取り寄せたあと、必要事項を記入して直接または郵送で申請をします。
受験手数料
平均的な金額は、学科試験には3,100円、実技試験には17,900円です。ただし、都道府県ごとに料金が異なるので、各都道府県の職業能力開発協会HPで確認をしましょう。
願書受付期間
試験を受ける機会は年に二回あります。前期が、4月上旬から4月中旬に受け付け、後期は10月上旬から10月中旬に受け付けます。自分のスケジュールに合わせて、受験期間を選択しましょう。
試験日程と合格発表
試験日程は、前期日程の場合、実技試験が6月上旬から9月中旬の間に、学科試験が7月下旬から9月上旬の間に行われます。合格発表は10月上旬になるので、申し込みから取得までに約半年掛かります。後期日程の場合も同様に、申し込みから資格取得までに約半年掛かります。具体的には、実技試験が12月上旬から2月下旬の間に、学科試験が1月下旬から2月上旬の間に行われ、合格発表は3月中旬になります。
製品の形を決める金型
金型はモノづくりの形を決めます。世の中に出回る製品の形が自分の設計によるモノだとうれしいですよね。初心者の人は、2級の取得からチャレンジを目指すと良いです。資格によって技術があることを証明できれば、周囲からの評価が高くなります。そうすれば仕事は増え、技術者としての腕をより磨くことができるでしょう。もしくは、特級を取得すれば、指導者を目指すこともできます。
制作:工場タイムズ編集部