工場で働いていれば「稼働率」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
稼働率を左右するのは、機械の動き方だけではなく、人の働き方も含まれます。工場における従業員の働きがどう影響し、稼働率が上がるとどんなメリットがあるのでしょうか。
今回は工場の稼働率についてご紹介します。
工場の稼働率はなにで決まるの?
「稼働率」は、どの程度効率的に製品がつくられているのかを表す指標です。工場によって稼働率の考え方は変わりますが、同じ時間内でよりたくさんのモノを生産する工場は、稼働率が高いと考えることができます。
例えば、製造ラインがストップしてしまった場合、ラインで働いている従業員は働くことができません。機械が故障すれば、人が働けない時間分の給料や、動かない機械の維持費や修理費などのコストを会社は負担する必要があります。一定の時間内に、人がどれだけ生産作業に従事できたか、製品をつくるために機械がどれだけ正常に動いたかという指標は工場の生産能力を把握する上で大切なのです。
人に払う給料や機械にかかる費用は、製品をつくるために掛かったコストとして原価に含まれます。限られた時間の中でつくった製品の数が多ければ多いほど、製品1個当たりのコストの負担が小さくなるので、原価を低くすることができます。
稼働率と可動率の違い
「稼働率」とよく似た言葉に「可動率」があります。「稼働率」が実際に製品をつくるために人や機械が働いた指標であるのに対して、「可動率」とは生産機能つまり機械を稼働することが可能であった時間を指標化したものです。
工場の機械が故障をすると、修理が済むまでに人も機械も生産活動に従事できない時間(ロスタイム)が発生します。そのため、故障がなく常に機械が生産し続けられるように、工場では日頃から機械設備の保守点検が行われています。このように、保有している機械のメンテナンスも万全で、故障なくいつでも生産できる状態にあった指標を示すのが「可動率」です。
稼働率の計算方法
では、稼働率はどのように計算をしているのでしょうか。食品工場の具体例をもとに説明をします。
例えば、ある食品工場 のかまぼこ製造ラインでは1日で3万個のかまぼこが生産されます。1時間当たりの平均的な生産能力が製品4000個とします。1日の労働時間が8時間とすると、1日当たりの標準生産能力は3万2000個です。ある日の生産個数が3万個だった場合、その日の稼働率は、3万個÷3万2000個=93%となります。このように一般的に、稼働率は、「実際に生産した個数を生産能力(本来生産できる個数)で割る」ことで計算できます。これを生産基準といいます。
また、ほかにも時間基準という、「実際に稼働した時間を稼働すべき時間で割る」といった稼働率の計算方法もあります。例えば、1日の機械が稼働すべき労働時間を8時間としたときに、実際に機械が稼働した時間が7時間だった場合、7時間÷8時間=87.5%が稼働率となります。このように、生産基準と時間基準の両方を算出し比較することで、より詳細にムダな箇所を知ることが出来ます。
稼働率はどうやって改善するの?
さきほどの 稼働率の計算方法のかまぼこ工場では、本来1日3万2000個生産できるはずなのに、3万個しかつくれませんでした。何らかの理由でムダが発生し、本来であればあと2000個生産できるはずです。
例えば受注生産の会社で、3万個分の注文しかないことが原因であれば、営業に力を入れて受注数を増やすことで、工場の生産能力を最大限に活用することができるでしょう。しかし、原因が工場にある場合には、稼働率を改善することが大切になります。例えば、作業員が製造に携わっていない間の手待ち時間や、直接には生産に関係しない間接作業の時間を減らすことも大切です。
手持ち時間をつくらないためには、・部品の欠品によるラインストップを起こさないよう材料の数量や在庫の管理を徹底する。・機械の停止・故障をなくすために、機械設備の整備、清掃をする。・余計な段取り時間が発生しないよう効率化するなどといった対策があげられます。
間接作業を改善するためには、・作業とは直接には関係のない従業員の動き、例えば、従業員同士の連絡や部門での会議、資料の整理などのムダをなくす。・不良品や手直し品の数を減らし、その不良品の生産に費やした時間を節約する。このような努力も間接作業の改善の一つになるのです。会議をするとしても、時間を意識することで稼働率の改善につながります。
稼働率の向上によるメリット
稼働率を向上させることで、結果的に、従業員の所得向上に繋がるかもしれません。生産に掛かるコストを低下させることにより、原価を低く抑えることができるからです。稼働率改善のためには現場における活動の一つ一つが重要な意味を持っているのです。働いている中で効率化できる箇所はないかどうか探ってみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部