家の掃除をするときには換気をしますよね。換気をすることで気分がすっきりします。それと同様に、企業や工場でも換気をすることで生産性を高めています。
実はオフィスビルや工場などの建物では、1日に必要な空気の入れ替えの回数が決まっています。
今回は工場の換気についてご紹介します。
建築基準法ってどんな法律?
工場での換気の回数は「建築基準法」という法律で決められています。建築基準法は、「建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図る」ことを目的とする法律です。つまり、建物内で活動を行う際、人の健康を維持するためにルールが取り決められています。
その規則によると、換気扇だけで換気を行う場合は、「1人が活動するのに必要なスペース」と「人の呼吸量」から必要な換気量を計算します。このような、部屋に必要な新鮮な空気の量は「必要換気量」と呼ばれます。必要換気量を部屋の広さで割れば、必要換気回数がわかります。
例えば、一般家庭での必要な換気量は、居間、廊下で5回、トイレで10回、台所で15回となっています。自動車修理工場で8~12回、熱処理・鋳造・鉛造の工場で10~30回、メッキ工場で15~30回以上が目安の換気回数となっています。
シックハウス症候群とは?
シックハウス症候群という言葉を聞いたことがありますか?新築の家に入居したときに、新しく貼った壁紙等から発生するトルエンやキシレンといった物質に過敏に反応して、頭痛、吐き気等いろいろな症状が出てしまうというものです。
一般的な住宅だけでなく、商業ビルやオフィスビルでも同じような症状が見られます。建築材料が原因となるほかに、設計時には予想されていなかった用途で部屋が使用されることが原因になります。予想以上の湿度や熱気が発生すると、換気が上手くされずカビなどが発生し、シックハウス症候群の要因となるのです。
症状が軽度の場合は、新鮮な空気がある場所に避難することで改善されます。新築の家に住む場合は換気扇をつけ十分な換気を行うことが大切です。
空気はこうやって入れ替えよう
換気の基本的な考え方は、有害とされる汚染物質を拡散させないことです。人体に悪影響のあるガスが生産工程の中で発生する可能性があります。このようなガスを従業員が吸わないために、そのガスの特性を活かした換気方法が行われます。
例えば、メッキ工場で発生するガスは空気より軽いので、一気にガスを吸い込む箇所を設ける局所換気で除去します。排気口から吸引しガスを水で洗い流すことで、ガスが水に溶け有害物も溶けてしまいます。そしてそれを処理設備で水と有害物を分け、害なく廃棄をします。
これ以外にも、プッシュプル換気、置換換気、希釈換気(全体換気)の四つがあります。
プッシュプル換気
生産構造の関係で局所換気を設置できない場合は、空気の吸い込みではなく空気の吹き出しを利用します。ガスの流れを変えて、吸い込める場所に移動させてから換気する方式です。
置換換気
工場内に電気炉のような熱を発する設備がある場合に使う換気方法です。熱と共に有害物質が発生するので、それを除去します。空気を外へ出す排気だけでなく、新鮮な空気を意図的に入れて空気の流れを起こし、有害な空気を溜めずに送り出す手法です。
希釈換気(全体換気)
工場内に広がった汚れた空気を、新鮮な空気を用いて薄める方法です。
このように、方法はいくつかありますが、それぞれに適した産業用のファン(送風機)がつくられています。工場内の状況に応じて、それらを適切に使用することが大切です。
仕事場や日常生活でも
工場の中だけでなく、家の中でもストーブやファンヒーターなど使えば換気が必要になります。そうした製品には、警告表示として、「換気必要:1時間に1~2回」とあるように、適切な換気の時間が明記されています。換気扇を回したり、窓を開けたりしても空気の流れが改善されない場合は、工場の方法を応用し、扇風機などで空気を押し出すといった方法も有効です。
制作:工場タイムズ編集部