金属は強度が高いというメリットがあることから強い衝撃が加わりやすい製品の製造になくてはならないものですが、一方、金属には加工しづらいいというデメリットもあります。
強い衝撃が加わるため強度が必要な航空機や自動車などの部品は、金属で作られていることが多いです。部品に十分な強度を与えるためには寸法がきちんと設計通りになっていなければならず、加工しづらい金属では決して簡単ではありません。
そのため金属の加工では、表面の微小な突起など不要な部分を確実に取り除き、形を整えることが重要となります。今回はその手段として、ものづくり現場にて幅広く行われている、研磨加工をはじめとした金属除去加工についてご紹介します。
研磨加工とは?
まずは金属除去加工のひとつ、研磨加工について解説します。
研磨加工は金属だけではなく石や木などを対象にも行われ、その主な目的としては表面を滑らかにして光沢のある状態に仕上げることにあります。そのため、墓石や木製の工芸品などにおける研磨加工は、機能面というより装飾面の方を目的として行われています。
特に、強い強度が要求される金属製品など、正確なサイズを厳守しなければならない商品の製造においても、研磨加工の技術は幅広く活用されています。
これは研磨加工をすることによって材料の表面を滑らかな状態にできるためだけではなく、ミリ単位でのサイズ調整が可能となるためでもあり、このことからも金属の加工において研磨加工の技術はなくてはならない存在であるといえます。
そのため、研磨加工は近代産業の発展に大きく貢献した技術の一つということもでき、今日では光学素子や半導体素子、磁気デバイス素子など、高機能部品の製造において研磨加工の技術はなくてはならない存在となっています。
研磨加工はもともと金属や石などに対して行う作業でしたが、今ではわずかな衝撃が故障や品質悪化の原因となる光学部品や電子部品の製造にもその技術が活かされており、衝撃を加えることなく研磨加工を施す技術もまた向上していることが分かります。
金属除去加工の分類
金属除去加工の方法としてはこれまでご紹介してきた研磨加工が有名ですが、それ以外にもいくつか方法が存在します。続いては、その中から特に幅広く行われている4種類を挙げ、その詳細についてご説明します。
切削加工
強度の高い刃やドリルなどで金属を削りながら、決められた形に金属を加工する方法を切削加工と呼びます。この方法は効率よく精度の高い金属製品の製造が行えることから、小さな機械部品などの製造では、この方法で金属を削って形を整えるという手順を踏むのが一般的です。
また、切削加工は金属を回転させて加工を行う「旋削加工」、フライスと呼ばれる切削工具を使用して加工を行う「フライス加工」、ドリル式の刃を使用して穴をあける「穴あけ加工」などに分類することができます。
研削加工
研削加工とは、砥石車と呼ばれる円状の大きな工具を高速回転させ、その表面を加工するものに当てることにより、その表面を滑らかな状態に整える作業のことを指します。この砥石車の表面には大きめの砥粒が無数につけられており、これによって対象物の表面の微小突起などを削ることができるため、仕上げに近い段階で施されることが多い加工方法となっています。
また、この加工方法には切削加工が行えない材料の加工も行えるというメリットもあり、より多くの種類の素材に対して施すことが可能です。
砥粒研磨加工
鋳鉄製のラップ板の上に砥粒とラップ液をたらし、加工するものを擦りつけながら徐々に形を整えていく加工方法を砥粒研磨加工と呼びます。この方法には、研削加工以上に精度の高い、滑らかな状態に対象物の表面を仕上げることができるという点でメリットがあり、研削加工よりもさらに仕上げに近い段階で行われます。
また、砥粒研磨加工には、ラップ液を使用する湿式とラップ液を使用しない乾式の2種類あり、それぞれで対象物の表面が異なった状態に仕上げることができます。
放電加工
水や石油内で向かい合った2つの金属の間に電気を流し、火花を発生させることで金属を加工していく方法を放電加工と呼びます。火花を断続的に発生させることにより、金属を効率的に加工することができます。放電加工の優れた点は複雑な形状の加工にも向いているので、デザイン性の優れた金属製品の大量生産などに応用されることも多くなっています。
研磨加工の基本の手順
研磨加工とは、加工を行う対象物の表面を少しずつ削りながら、表面を滑らかにしたりサイズを調整したりする作業のことを指します。そのため、「研磨加工」というカテゴリーにはさまざまな加工方法が含まれ、研削加工や砥粒研磨加工も研磨加工の一種といえます。
研磨加工の基本的な手順は、加工を施す対象物にタップ液などをたらして水気を帯びた状態にし、砥粒を当てながら表面を少しずつ削っていきます。ここで使われる砥粒は、砥石車のような円状のものやラップ板のような板状のものなどさまざまで、その種類によって加工方法の名称も異なります。
また、研磨加工において使用される砥粒はその粒度によって効果が異なり、粒度が大きいものほど削り方も大きくなります。そのため、対象物の広範囲に対して研磨加工を施す場合、最初は粒度の大きい砥粒で全体をおおまかに削り、徐々に粒度が小さいものに変えていくことで細部を整えることも可能です。
また、研磨加工において重要となる砥粒には、天然のものと人工のものがあり、かつてはダイヤモンドやコランダム、エメリーなどの天然石を砥粒として使うことも珍しくありませんでした。しかし、今日では天然石よりも砥粒として適した「人造砥粒」が数多く登場しており、研磨加工においても幅広く利用されるようになりました。なお、天然石の中でも特に強度が高いダイヤモンドは、依然として砥粒と使われており、研磨加工でなかなか対象物が削れないという場合には、ダイヤモンドが埋め込まれた砥石車を使ってみると効率的に加工が行えることがあります。
多様化が進む研磨加工技術
今回は、金属除去加工の方法の一つである研磨加工についてご紹介し、その具体例として切削加工、研削加工、砥粒研磨加工、放電加工の4種類を挙げて、その詳細について解説いたしました。
金属除去加工の方法は、歯車加工、ブローチ加工、平面研削、円筒研削、バレル加工、型彫り放電加工など、多種多様なものに細分化することも可能です。そのため、現在における研磨加工技術の多様化が進んでいます。それが日本のものづくりの発展を支えているといっても、過言ではありません。
また、研磨加工技術は金属だけでなく、石や木、さらには電子部品などの製造においても活用できます。研磨加工技術の活用シーンは金属加工のみではなく、今後もさらに拡大していくことでしょう。
制作:工場タイムズ編集部