大海原を泳ぎ回る船。そんな大きな船をつくる仕事って夢がありますよね。
船はすべて同じような形に見えますが、実はそれぞれ綿密な設計に基づいてつくられています。
今回は船舶の設計の仕事についてご紹介します。
船の設計って一人でやるの?
大きな船舶をつくり上げるためには、どれだけの人材と労力が必要なのでしょうか?順番に見てみましょう。
船の設計とは?
船を設計するには、大きく分けて2つの段階があります。最初は、どのような船舶をつくるのかを考える「基本設計」です。その後、基本設計で決まった仕様書をもとに具体的な形を決めていく「詳細設計」に移ります。
使用目的や用途によって船の大きさや形はさまざまです。そのため船主と何度も打ち合わせを行い、CAD(パソコン上で図面を描くソフト)システムなどを使って設計を行います。パソコンの画面上で、いかに安全で単価を抑えた船の設計ができるのか、そこが設計者の腕の見せどころです。
設計の仕事とは?
船を設計するチーム構成は、「船殻(せんこく)」と「工作設計」に分かれています。
船殻チーム
それぞれの船台(造船所内にある船をつくるための場所)で使う基本図面と詳細図面を作成しています。
工作設計チーム
船殻チームから上がってきたライン図(線図)をもとに船全体の詳細な図面を作成します。それらの図面から個々の部材の採寸などを行います。
基本設計について
船舶設計において、全体像を生み出すもとになるのが基本設計です。
主な仕事内容
基本設計では、主に4つの仕事を行っています。「船型の設計」、「仕様書の作成」、「図面(一般配置図・中央断面図など)の作成」、「船価見積書の作成」です。どんな船にしたいのかを考えると同時に、どんな船がつくれるのか、船主らと相談して進めます。
構造を決める
船型の決定を行います。船型は積載量や速度、燃費、安全面などすべてに影響を与える重要な部分です。船主の望む形をできるだけ尊重しつつ設計を行います。
性能を決める
使用目的に合わせて、船に搭載するエンジンの配置を決定します。運送する積荷の種類や、就航する航路などを考慮のうえ、目標速力や燃費など船の要となる設計を行います。
詳細設計について
船体のパーツや形、加工方法を設計する詳細設計について見てみます。
主な仕事内容
詳細設計は、基本設計で作成されたプランをもとに現場作業を行えるよう図面を作成する工程です。この詳細設計は「船体関係」と「艤装関係」に分けられます。
「船体関係」
ブロック分割図…最も大きな図面で、全体を「船首」「船尾」「貨物部」などに分けたもの。船殻工作図…船殻とは船体の外皮という意味。外板や甲板、船底やこれらを連結する柱などを示したもの。一品データ…それぞれの部材の加工方法を一部品ごとに示したもの。
「艤装(ぎそう)関係」
艤装工作図…艤装というのは、船室など船体以外の付属品のこと。そうした付属品を船体に取り付ける工程を示したもの。
図面の作成
詳細設計で大きなポイントになるのは、仕様書を具体的な設計図面に落とし込むことです。
「機装設計」
機関室の配置や配管系統図の設計を行います。船を動かすための主機関やプロペラ、ボイラ、冷却機、ヒーターなどの機器類を船に合わせてどう選ぶかが重要です。配管の配置が複雑になるときは、配管同士が悪影響を与えないように配慮することが大切です。
「電装設計」
モーターや発電機などの動力装置や、レーダーなどの航海装置といった電装関係の設計を行います。衛星通信装置、船内における通信装置、自動監視装置などあらゆる電装関係が含まれます。
機装設計と電装設計、どちらについても仕事の流れは、船主との打ち合わせから始まります。そこから計画を立て、注文書を作成し、図面の確認、海上運転における装備の性能確認へと進みます。
多くの人の知恵が集まる船舶設計の面白さ
大きな船をつくるには、多くの人材の知恵と努力を伴います。船主の考えを、船という形として誕生させるべく、設計者は日々奮闘しています。「どのような船にするのか」を考える基本設計。それを「どう具体化させるのか」という方向性を決める詳細設計。たくさんの旅行客や貨物を支える船だからこそ、小さな業務の積み重ねが安全で大きな船の完成へとつながっていきます。
制作:工場タイムズ編集部