いろんなモノが値上がりするニュースを見たり、値上げを肌で感じている人は多いと思います。
原因はいろいろありますが、その一つに原材料費や輸送費が高くなったことがあります。
今回は、モノの値上げに深く関係する原材料費や輸送費について、その内容や高騰の背景をわかりやすくご紹介します。
原材料の輸送方法
まず、原材料の輸送方法について説明します。輸送方法は主に4つあります。
海上輸送
重い原材料を、一度の輸送で大量に運ぶことができます。輸送費が安いというメリットがありますが、輸送に時間がかかったり、離発着が港のある場所に限られてしまうという不便な面があります。主に利用されるのは、燃料の輸送です。使用済み燃料やプルトニウム、高レベル放射性廃棄物についても、法令を満たしている場合には専用の輸送船で運びます。
航空輸送
遠距離でも速く輸送することができます。しかし輸送費が高いことや、海上輸送と同じように離発着が空港のある場所に限られてしまいます。IC(半導体集積回路)などの小型で高価なものを輸送する際は航空輸送が一般的です。逆に航空法で輸送が禁止されているのは、「火薬」「高圧ガス」「引火性液体」「毒物」「放射性物質」などです。
鉄道輸送
重いものでも内陸部まで運ぶことができます。時間通りに正確に運べるというメリットがあるものの、輸送地が線路のある地域に限られてしまいます。しかし鉄道輸送の場合には、陸上輸送のトラックと比較をすると、二酸化炭素の排気量が約9分の1で済むというエコな一面もあります。主に食料工業品や紙パルプ、宅配便や農産物などの輸送に用いられています。
陸上輸送
道路さえあればどこへでも運ぶことができます。積み替えなしで運べるものの、渋滞や事故によって、遅れてしまうデメリットはあります。高速道路の整備が進んでいるので、自動車による輸送は今後も増えていくでしょう。海上輸送で運んだものを港から目的地まで運ぶ役割も担っています。危険物から重たいモノ、液体から日用品まで幅広い輸送に用いられます。
なぜ原材料費や輸送費が上がるの?
原材料費や輸送費が高騰している原因はどこにあるのでしょうか?現在の日本では、まず円安の影響が大きいと言えます。円安になると、輸入する原材料や商品の値段だけではなく、海外の工場などで働く人の給料や燃料の価格も上がってしまいます。
輸送燃料である石油価格については現在、長期低迷中ですが、中東情勢が不安定になるとすぐに跳ね上がります。それがガソリン価格の上昇に直結するだけでなく、電気料金やプラスチック製品の価格高騰につながります。
陸上輸送を担うトラックドライバーの人手不足も深刻です。ネット通販が増えたことで、ドライバーの需要は非常に大きくなっています。しかし、特に長距離ドライバーのなり手が少なく、それが人件費の高騰、さらには輸送費の値上がりへと結びついています。
また、日本の飼料用トウモロコシの輸入先であるアメリカでここ数年、干ばつが深刻化しています。トウモロコシの価格が上がると、それが肉や卵、乳製品に大きな影響を与えます。それがモノの値段の上昇につながるのです。
値上げはこれからも続く?
原材料費や輸送費の高騰にはどう対処すればいいのでしょうか?これらの価格高騰は製造業に大きな影響を与えています。たとえ新しい商品やサービスの開発が見込める場合でも、原材料費や輸送費の上昇によって開発に遅れが生じるところも出てきています。
そこで考えられているのが、価格高騰分を製品価値に上乗せするという対応策です。製品価値が高まれば、価格に転嫁しても納得されやすいからです。
さらに、生産性を上げるという企業努力によって、原材料や輸送費の高騰に対抗する方法を取る会社もあります。しかし、これ以上の企業努力は難しいという声も一部で聞こえます。
また、工場などの生産拠点を日本国内に戻すという方法もあります。こうすると輸送費を抑えられるだけでなく、円安の影響を避けることができます。「製造業の国内回帰」と言われるのは、これが一つの理由です。
しばらく続きそうな値上げ。今後のニュースを要チェック
モノの値段が値上がりする原因はいろいろあります。円安や天災、人手不足もそうですし、原材料費や輸送費の高騰も大きな原因です。さらに2017年4月には消費増税が予定されています。政府が「デフレからの脱却」という物価を無理に引き上げる政策を打ち出している以上、今後もモノの値段が上がっていくのは既定路線と考えていいでしょう。しばらくは値上げのニュースに敏感になったほうが良さそうです。
制作:工場タイムズ編集部