「産業革命」という言葉を聞いたことがありますか?これは社会に大きな影響を与える技術革新のことです。
1700年代後半のイギリスで機械と蒸気を使い始めたのを「第1次産業革命」といい、これまでに「第3次産業革命」まで計3回ありました。
しかし、最近「第4次産業革命」という言葉が登場しています。ドイツが国家戦略として提唱しているもので、「インダストリー4.0」という名前がつけられています。具体的にはどんな革命、どんな技術革新なのでしょうか? また、日本にはどんな影響があるのでしょうか?
今回は、「インダストリー4.0」についてご紹介します。
そもそも産業革命って何?
まず、過去3回の産業革命がどんなものだったかについてお伝えします。
第1次産業革命
工場に関して言うと、第1次産業革命は紡績機の発明です。1700年代にイギリスで発明され、1800年代初めにかけて工場へ紡績機が導入されました。これにより、それまで手作業だった仕事は工場の機械が担うようになり、賃金を払う代わりに大勢の労働力を雇うという資本主義の原型が生まれました。さらに、石炭で動く蒸気機関の出現と合わせて第1次産業革命と呼ばれます。
第2次産業革命
第2次産業革命とは、1800年代の終わりにアメリカやドイツを中心として起こった「電気」「石油」「化学」「鉄鋼」などの分野における技術革新のことです。エンジンを動かすエネルギーが石油に変わり、電力が普及したことで大量生産が可能になりました。その結果、工場は大規模になり、軽工業から重工業へと変わっていきました。また、資金は銀行が「融資」という形で提供するようになりました。これにより「大量消費時代」が幕を開けました。
第3次産業革命
1970年代から工場などにコンピュータが導入され始めました。その結果、生産の「自動化」が進みます。これを「第3次産業革命」と呼んでいます。日本は、第3次産業革命をきっかけに「1億総中流化」へ進んだと考えられています。
「インダストリー4.0」って何ですか?
次に、4度目の産業革命と言われる「インダストリー4.0」について説明します。
インダストリー4.0とは?
インダストリー4.0とはドイツ政府が推進している、製造業の高度化を目指す国家プロジェクトのことです。具体的には、インターネットを通じてあらゆるモノやサービスを連携させることで、新しいビジネスモデルや価値をつくり出すことを目的としています。インダストリー4.0には「スマートファクトリー」「IoT」「CPS」という3つのキーワードがあります。
インダストリー4.0のコンセプトは「スマートファクトリー」(考える工場)です。これは、工場内のすべての機器類をインターネットに接続して一括で管理しようというものです。これを「IoT」(Internet of Things)といい、日本では「モノのインターネット」と訳されています。そうすることで、製品の品質、稼働状況、機械の状態などいろいろな情報が見える化できるというメリットがあります。IoTによって得られた情報を蓄積・加工・分析して指示を出したり、データ提供を行うのが「CPS」(Cyber Physical Systems)です。CPSが進化すれば、「IoT」によって得られた情報を作業ロボットが瞬時に判断し、工場内外のシステムと連携しながら生産性を高めるための指示を出すことが可能になります。その結果、在庫が減り、原材料の調達から販売までにかかるコストを削減でき、収益を効率的に増加させることができると期待されています。
日本でも第4次産業革命って起きてるの?
日本にもインダストリー4.0は起きているのでしょうか?最後は「日本版インダストリー4.0」についてお伝えします。
日本版インダストリー4.0とは?
ドイツで「インダストリー4.0」が発表されたことを皮切りに、IoTを活用して製造業を強化しようという動きが世界中で広まっています。アメリカの「IIC」(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)という組織もその一例です。そんな中、日本はやや出遅れる形となっていましたが、2015年に製造業同士の工場の連携を目指す「IVI」(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ)が設立されました。IVIは「モノづくりとITが融合した新しい社会をデザインすること」を目的に、日本版インダストリー4.0を狙った団体です。経済産業省が主導して、国内の大手企業や中小企業など30社以上が参加しました。各企業がオープンにできるデータ部分の共有などを進めて、国内の工場がまるで1つの工場のように連携する「つながる工場」の実現を目指し、メリットを追求していきます。
並行して進む「ロボット改革」
ロボットを活用して工場の生産効率を上げようという取り組みも進んでいます。政府も「ロボット新戦略」を打ち出し、日本をロボット大国にする動きを進めています。「インダストリー4.0」のCPSのように、工場内で作業ロボットがITと融合し、ビッグデータや人工知能を自分で使いこなせるようになれば、生産効率が大幅にアップすると考えられています。
産業革命はいつも工場から
3度の産業革命を経て、製造業は大きく進歩してきました。「第4次産業革命」は始まったばかりですが、過去3度の産業革命の時代とは、技術革新のスピードが違います。国内の工場の連携がどこまで進むか、本当に「つながる工場」が現実のものとなるかはまだわかりませんが、実現すれば、日本のモノづくりの現場がさらに活気づくのは間違いないでしょう。
制作:工場タイムズ編集部